"スーパーヒーロー映画"というジャンルが正しくないワケ

現在では当たり前のように聞こえる"スーパーヒーロー映画"というジャンルだが、このジャンルが確立されたのは2008年公開の『アイアンマン』からと言ってもいいだろう。以降、アメコミを原作とする映画が数多く製作されてきた。しかし、それらすべての作品を"スーパーヒーロー"というジャンルで一つにしてしまうことには違和感があると英Digital Spyが伝えている。

スーパーヒーロー映画は、文字通り、特殊能力or鍛え上げた戦闘力を持つアメコミのキャラクターを主人公にし、彼らが愛する人、そして世界中の人々を救うために奮闘する姿を描いている。しかし、このジャンルが飽和状態となっている現在では、単なるスーパーヒーローというジャンルにはしたくないと考える監督も少なくないという。そして、この言葉で括るには違和感を持つアメコミ原作の映画が公開された。それは、DCを代表するヴィランを主人公にした『ジョーカー』だ。

映画『ジョーカー』は、「どんな時も笑顔で」そして「人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、都会の片隅で大道芸人として生きていたアーサー・フレックという男が、バットマンの最大のライバルと言われるほどの巨大な悪へと変貌していく姿を描く物語。

『ジョーカー』でメガホンを執ったトッド・フィリップスは、ジョーカーというキャラクターを研究し、創り上げることにこだわりたかったため、「コミックスからは何も参考にしなかった」といい、「それが私にとって興味深かったところ。ジョーカーになる物語なのに、私たちは"ジョーカー"をやったわけではないんだ」と説明した。

そもそも、スーパーヒーローではないジョーカーを主人公にして映画が作られたのは、DCの世界のキャラクターを広めるという目的のため。しかし、コミックスから距離を置いた『ジョーカー』に対し、映画・TVでプロデューサーや監督として活躍するケヴィン・スミス(『SUPERGIRL/スーパーガール』)は、自身のTwitterに「DCコミックスが存在しなくても、『ジョーカー』はいい作品になっている」と皮肉を述べている。

また、スーパーヒーロー映画というジャンルに括られないように努めているのは『ジョーカー』だけではない。『スーサイド・スクワッド』に登場したハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)が主人公となる『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(2020年公開予定)が「本当に面白くて、少しワイルドで、完全にユニークな作品」になると話したのは、ハントレス役のメアリー・エリザベス・ウィンステッド。彼女は「私たちが現場にいた毎日は、本当に不思議で面白いことばかりで、このジャンルで今まで見た他の作品とは何か違うものがあると思ったの」とその魅力を語った。

スーパーヒーロー映画は"コミックス"という素材をもとにした作品でグループ化されているが、小説が原作の映画はこのように一括りにされることはなく、相互に批評されることもない。小説をもとにしていてもコメディ、悲劇、SFなど、作風によってきちんとジャンル分けされている。

じっとりとシリアスな『ジョーカー』と、楽しくユニークな作品になっているという『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』を同じジャンルにしてしまうことは、個々の作品が持つ魅力を消してしまうことにもなるだろう。アメコミ原作の映画も、独自性をもって評価されるに値するはずなのだ。(海外ドラマNAVI)

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『ジョーカー』(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics/『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(C)2019 WBEI and c&TM DC Comics