時代は今こそ海外ドラマ! 大物映画監督プロデュース作品が続々登場!

 

ここ数年で映画界の大物が続々と参入しているTV界。特に昨今では『ダメージ』のグレン・クローズ、『セービング・グレイス』のホリー・ハンター、『ライ・トゥ・ミー』のティム・ロスなど、映画界で確固たる地位を確立していた俳優たちのドラマ出演が目立っていた。映画監督においては更に以前からTVシリーズを手掛けている人物が多い。日本でも大人気だった『プリズン・ブレイク』の製作は『ラッシュアワー』のブレット・ラトナー監督、『Dr.House』を製作しているのは『ユージュアル・サスペクツ』や『X-メン』の監督ブライアン・シンガー、『SUPERNATURAL』や『Chuck』を製作し、最新シリーズ『NIKITA』も現在全米で好評オンエア中のマックGは映画『チャーリーズ・エンジェル』の監督だ。
さらに『レジェンド・オブ・ザ・シーカー』を製作している『スパイダーマン』シリーズのサム・ライミ監督や、『NUMB3RS』や『グッド・ワイフ』のプロデューサーとして活躍しているリドリー&トニー・スコット監督など、ざっと挙げただけでもこれだけの監督たちがTVシリーズを製作している。今年のエミー賞ではスティーブン・スピルバーク&トム・ハンクス製作の『ザ・パシフィック』が最多ノミネートを獲得、アル・パチーノが主演男優賞を受賞した『死を処方する男 ジャック・ケボーキアンの真実』を製作・監督したのは『レインマン』でオスカーを受賞したバリー・レビンソン監督だったことは記憶に新しい。

彼らはいずれもメジャー級の映画監督たちだが、2010年はこれまでになく超大物監督が続々TVシリーズの製作に乗り出してきたことが大きな特徴だ。そんな中、いち早く日本上陸を果たしたのは『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』の監督フランク・ダラボンが企画・製作総指揮を務める『ウォーキング・デッド』だ。この11月に全米でスタートしたばかりの本作は、オンエア開始直後から大きな話題を呼び、ベーシック・ケーブル局としては驚異的な視聴率を記録。放送局AMC最大のヒットとなり、早くもシーズン2の製作が決定している。ダラボン自ら監督した第一話はゾンビが街を闊歩する薄ら寒い空気感を絶妙に描き出し、これから先に待ち受けているゾンビとの尽きせぬ戦いと忍び寄る恐怖、そしてわずかに生き残った人間たちの追い込まれていく心理を予兆させるには十分すぎるほどのオープニングに仕上がっている。オスカーこそ無冠ながら映画史に残る感動作『ショーシャンクの空に』を生み出した監督らしい、確かな演出力と優れたストーリーテリングが見て取れる傑作シリーズだ。

そして早くも来年の上陸が噂されているのがマーティン・スコセッシ監督初のTVシリーズ作品となる『Boardwalk Empire』だ。『ディパーテッド』で悲願のオスカー受賞を果たしたこの名監督がTVシリーズを製作するというニュースが流れた時は、さすがに世界中が驚いた。物語の舞台は20年代、禁酒法が施行されたばかりのアトランティック・シティ。政治家としての顔とフィクサーとしての裏の顔を使い分ける主人公、ナッキー・トンプソンを中心としたマフィア・ドラマ。史上最高額の製作費となったスコセッシ演出のパイロットのスケール感ときたら、上質な映画に匹敵するクオリティで、さすがの演出力を発揮。しかも『ザ・ソプラノズ』の脚本家テレンス・ウィンターが脚本を担当、実在の人物エノック・ジョンソンをモデルにした主人公ナッキーを演じるのはスティーブ・ブシェミとなれば、映画ファン、海外ドラマファンどちらも必見の超大作だ。ちなみにこのドラマ、スコセッシの陰に隠れてまったく話題にならないけれど、マーク・ウォールバーグも製作に名前を連ねていたりする。これも『ディパーテッド』の縁?

2011年の大型作品として全米で注目されているのは、HBOでのオンエアが決定しているマイケル・マン監督製作の『LUCK』だ。しかも主演はダスティン・ホフマンという超ド級のタッグ! 競馬の世界を描いたアンサンブル・ドラマでホフマンは刑務所帰りのインテリ主人公を演じるとか。マイケル・マン監督はそもそも人気TVシリーズ『マイアミ・バイス』のプロデュースで名を挙げた人物。映画界では『インサイダー』や『Ali』、『パブリック・エネミーズ』など、濃密なドラマを描くことで定評があるだけに、じっくりとキャラクターを掘り下げて描けるTVシリーズは彼にとって最適なメディアと言える。しかもそれを演じるのが名優ダスティン・ホフマンとなれば、名シリーズ誕生も夢じゃない。

ここにきてこれだけの大物監督プロデュースが続出しているのも、映画界の不況が大きな一因となっているのだろうが、裏を返せばTV界にとっては大きなチャンス。一流のスタッフ、キャストが集結したドラマを毎週楽しめるなんて、ものすごく贅沢な話! 時代は今、確実に海外ドラマに流れてるのだ。

Photo:マックG :Ima Kuroda / www.HollywoodNewsWire.net フランク ・ ダラボン:Kazumi Nakamoto / www.HollywoodNewsWire.net マーティン ・ スコセッシ :Richard Buxo / www.HollywoodNewsWire.net マイケル ・ マン :Ima Kuroda / www.HollywoodNewsWire.net