【お先見!海外ドラマ日記】荒唐無稽さのなかにリアリティが光る『30 Rock/サーティー・ロック』(from NY)

アメリカでは通常、9~10月に始まったドラマの多くが、翌年4月下旬~5月にシーズン・フィナーレを迎える。学校も同じサイクルで、5~6月に学年末となり、卒業生は進学・就職などで散り散りに、在校生は長い夏休みに突入して、また9月に新学期が始まる。1シーズンが終わり、秋にまた再開すると思っていたドラマが、打ち切りになってしまうことも少なくない。これは「また新学期に」と挨拶し合ったクラスメイトが、いつの間にかどこかに引っ越ししていなくなってしまったかのようで、さみしい。新緑の美しいこの5月は、こちらでは別れの季節でもあるのだ。

次のシーズンまでの3ヶ月強の間に、終わったばかりのシーズンを再放送する番組もあり、見逃してしまったエピソードを見られたり、これまでまったく見ていなかったシリーズをキャッチアップできたりして有り難い。このあたり、大概1クール3ヶ月で終わってしまい、忘れた頃にひょっこり再放送される日本のドラマと大きく違うところ。

さて、NBCの人気シットコム『30 Rock/サーティー・ロック』も5月5日にシーズン5の最終話が放映された。今シーズンは、初のライブ放送を行うなど新しい試みもあったし、つい最近放映された1時間枠の100話目には、トム・ハンクスもゲスト出演して番組を盛り上げた。

トム・ハンクス

このシーズン・フィナーレでは、ティナ・フェイ扮するリズ・レモンが、3ヶ月(!)ある夏の休暇をハンプトンの別荘で優雅に過ごそうとするも、よりによって彼女の番組に出演しているタレントのトレイシー・ジョーダン(トレイシー・モーガン『サタデー・ナイト・ライブ』)が隣の別荘を購入、隣人になってちょっかいを出してくるので、おちおちくつろぐこともできない。このプロット自体はかなりベタだが、いくら放送作家のヘッドでも、ワガママな看板タレントに頭が上がらないという力関係が妙にリアルでおかしい。

ティナ・フェイ& アレック・ボールドウィン

今回は、リズが休暇で職場から離れたため、幸いアレック・ボールドウィン演じるワンマン上司のジャック・ドナギーに振り回されることはないのだが、代わりに標的になってしまったのは、雑用係のケネス君(ジャック・マクブレイヤー『ブル~ス一家は大暴走!』)。フィアンセに去られて落ち込んでいるジャックを慰めようとしたのが仇となって、ドツボに・・・。このシットコム、基本的に何でもあり。荒唐無稽なシチュエーションになることもしばしばで、笑いのために時々やりすぎてしまうのが玉にキズ

ティナ・フェイが『サタデー・ナイト・ライブ』でヘッド・ライターをしていた時の経験が活かされているだけあって、リズと上司ジャックの関係、またリズの同僚や部下たちとの関係性は、コメディ番組の製作現場ってこんななのかなと思わせるリアリティがあって笑える。きっと実際のNBC局の上層部にもジャックみたいな鬱陶しい人がいて、ティナ・フェイも苦労しているのじゃないか。

アレック・ボールドウィンは来シーズンいっぱいで降板するとのことだが、ジャックはこれ以上ないハマリ役。ますますあのワンマンボスのキャラに磨きをかけて、リズや他のスタッフたちをかき回して笑かして欲しい。

4月の発売されたティナ・フェイのエッセイ集『Bossypants』はニューヨーク・タイムズのノン・フィクションのハードカバー部門でベストセラーになっている。幼少期の頃の話から、『サタデー・ナイト・ライブ』のシナリオの抜粋や『30 Rock』の製作裏話、美の秘訣など、写真も随所にある盛りだくさんの内容だと評判も上々。普段、英語の本を読むとすぐに眠くなる私だが、これなら大丈夫かも!? 今夏の課題図書にしよう。