【お先見】マギー・Q、『ニキータ』成功、これだけの理由。(from LA)

今回も、少しミーハーな目線で、新作ドラマを語ってみたい。

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今やアメリカの業界で、映画だけでなくテレビファンも獲得したマギー・Q。アジア系スター達の動向を常に注目している僕は、マギー・Qの存在を香港時代からなんとなく知っていた。しかしあくまで"なんとなく"。

NIKITA1_21.jpg米国で活躍を始めるまでの彼女は「モデル上がり」で、アクションも濡れ場も体当たりで演じるセクシー系女優でしかなかった。彼女を世界市場にセンセーショナルに登場させたのは、なんといってもJ・J・エイブラムスが映画監督デビューを果たした『ミッション・インポッシブル3』だろう。黄色いランボルギーニから、綺麗な脚線を見せながら、大胆に肌を露出した真っ赤なドレスで登場した彼女に、僕の眼は釘付けになった。

今思えば、まるでトム・クルーズが誇る人気アクション大作に、女性スパイ"ニキータ"がゲストで登場していたかのようにさえ感じられる。あのインパクトの瞬間から、米国での将来は約束されていたのかもしれない。

2010年、秋の新シーズンを前に、赤と黒を基調にした宣伝ポスターが、ハリウッドの街の通りを席巻した。赤のドレスと黒のボディスーツから、惜しげもなく美脚を見せつける鮮烈なデザイン。僕は走らせる車の中から、その強気のプロモーション手法に、またも眼が釘付けになった。しかし当時、僕はまだこの企画に懐疑的であった。アジア系俳優/女優が単独で主役としてリードするテレビシリーズというのは、ハリウッドではまず記憶にないからだ。この番組をエグゼクティヴ・プロデューサー兼ライターとして展開させたクレイグ・シルバーステインは、マギーの起用について理由を次のように挙げている。

NIKITA1_08.jpg第1に、アクションが出来、そして美貌の持ち主であること。番組の見どころであるアクションは、98%彼女が演じているとマギー自身が語っている(さすがジャッキー・チェンのスタントチーム仕込み!)。

第2に、過去に何度も映像化されている『ニキータ』に新しい切り口を持ち込みたかったこと。アジア人女優に番組の命運を託すのは、大きな賭けだったに違いない。しかしシーズン1を見る限り、これらの狙いは成功したといっていい。ダブル主役的に、白人の新鋭リンジー・フォンセカ(アレックス役)をマギーの脇に配してバランスをとっていることも功を奏している。

 

NIKITA1_06.jpgマギーを見ていて、いつもあっぱれだと思うのは、ベジタリアンである彼女は痩せ身で必ずしも世の男性を悩殺する体型ではないことだ。米国の基準としては明らかに細すぎ。それなのに臆することなく、セクシーさを前面に出し、錯覚させてしまうその気迫。米国では、男優も女優も色気があることが成功の必須条件。マギーは、ハンディのあるアジア人の体格であるにも関わらず、そのを越えたのだ。ポーランドとアイルランド系の父とベトナム人の母から受け継いだルックスもエキゾチックだとされている。時代も彼女を味方している。80年代や90年代なら、この大胆な主役抜擢は起きなかったはずだ。

そして彼女のもう1つの大切な武器は、"ルックス"でも""でもない。言葉だ。ハワイ育ちの彼女は英語が母国語である。主役として耳障りでない、流れるようなセリフ回しで魅せる彼女は、視聴者に知性も感じさせることが出来る。このことは大きい。

チャン・ツィイーやコン・リーのようなアジアの大女優らができないことが、マギーには可能なのだ。トーク番組などでの彼女の喋りは会場を沸かせるほど楽しい。『ニキータ』の評価は上々で、すでに"シーズン2"の製作も決定している。

《アジア系の新たな時代》を担っているマギー・Qを、男性ファンも女性ファンも是非応援して欲しい。