気になる秋の新ドラマ。近代時代劇ブーム到来なるか!?

ここ数年、TVの賞レースで圧倒的な強さを誇る『マッドメン』。60年代のニューヨークを舞台に広告業界で働く人間たちの欲と野心を赤裸々に、かつじっくりと描き出すそのストーリー性もさることながら、徹底的に60年代の空気を再現した手腕も大きく評価されているのは海外ドラマファンならご存知の通り。

そんな『マッドメン』の影響で注目を集めているのが近代時代劇だ。10月9日(日)よりWOWOWでオンエアされる『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』は、『マッドメン』からさらに遡ること40年。禁酒法時代のアトランティック・シティを舞台にし、製作総指揮はあのマーティン・スコセッシという超大型ドラマ。どちらのドラマもその時代の空気感を見事なまでにクリエイトし、また現代とは違った価値観が描かれる点に新鮮さを覚える秀作だ。ケーブル局が製作したこの2作が高く評価されたことで、ネットワーク局でもこの秋スタートした新ドラマに60年代を舞台にした作品が2つも入っている。

そのひとつ、『PAN AM』(ABC)はかつて世界をリードした航空会社、パンアメリカン航空を舞台にした人間ドラマ。この時代、女性の社会進出はまだまだ難しいものだったのは『マッドメン』を見ても分かる通り。そんな中、女性たちがこぞって憧れたのがパンナムのスチュワーデスだった。(あえてフライト・アテンダントとは言いません)世界中を飛び回り、雑誌の表紙を飾る彼女たちは今で言うセレブのような存在でもあり、パンナムのスチュワーデスはまさに選ばれた女性しかなれない狭き門。そんな難関くぐり抜け見事スチュワーデスとなった女性たちの仕事と恋と野心をたっぷり描いた1作。スチュワーデスの一人、マギー役をクリスティーナ・リッチが演じるのも注目されている。

もうひとつはNBCでスタートした『THE PLAYBOY CLUB』。こちらは『サードウォッチ』や『CSI:マイアミ』のエディ・シブリアン主演で、その名の通り60年代に誕生したシカゴの『プレイボーイ・クラブ』を舞台にしたドラマ。あのバニーガール発祥のクラブですね。こちらもこのクラブ内での愛と欲望渦巻く人間模様を濃密に描き出し、さらに殺人事件が絡んでくるがっつり肉食系のストーリー展開。ということで、どちらの作品も『マッドメン』の成功に影響を受けているのは火を見るより明らか。『PAN AM』などは、制作側がものすごくストレートに『マッドメン』と『グレイズ・アナトミー』を足したような作品と言っているくらいだ。

そこで気になるのは『マッドメン』などがケーブル局だからこそ可能な表現を追及できるのに対し、この2作品は何かと表現上の制約があるネットワーク局でのオンエアという点だ。制約の中でどこまで真に迫った作品を作り出せるかが大きな鍵となるわけだが、個人的に旅好きな筆者としては、特に『PAN AM』には頑張ってもらいたいところ。だって世界を飛び回るということは、アメリカだけでなく"世界中の60年代"が垣間見えるということ。こういうスケール感こそアメリカン・ドラマならではの醍醐味だと思うのだ。くしくも本家『マッドメン』は契約上の問題で1年お休みが決定している。その間に『マッドメン』ファンを取り込み、60年代ドラマ下克上を果たせるか。成功すれば本格的に近代時代劇ブームがやってくるかも。
そういう意味でもこの2作品の行方から目が離せないのだ。

■『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』
10月9日(日)より放送スタート!

【放送】WOWOW
【吹替】毎週日曜夜11:00~
【字幕】毎週日曜午前9:45~
(c) 2011 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.