声優さん"ほぼ"リレー・インタビュー!<第3回:『ザ・ケープ 漆黒のヒーロー』山寺宏一さん>【前編】

ちょっとご無沙汰していた声優さん"ほぼ"リレー・インタビュー。第3回となる今回は『ザ・ケープ 漆黒のヒーロー』で主人公ヴィンス・ファラデーの声を演じる山寺宏一さんに直撃! 今回の『ザ・ケープ』のような海外ドラマはもちろん、映画ではエディ・マーフィーやジム・キャリー、ウィル・スミス、ブラッド・ピットら大物俳優の声を担当、WOWOWの『HOLLYWOOD EXPRESS』ではナレーションを務め、NTV『アンパンマン』シリーズほか数々の名作アニメで吹き替えを担当し、さらにはTX『おはスタ』ではタレントしても活躍と、幅広い活動をしている山寺さん。まさに"七色の声を持つ男"の異名にふさわしいその多彩な声の秘密と、『ザ・ケープ』の魅力について、大いに語ってもらいました。

■ヒーローだけど人間くさい主人公を演じる

―― 最初に「ザ・ケープ」をご覧になった時の山寺さんの印象は?

山寺 すごくスピード感があって、アクションが中心のドラマではあるんだけれど、親子や夫婦の愛情もしっかり描かれているところが素晴らしいと思いますね。それに主人公のヴィンスも完全なスーパーヒーローではないのがいいですよね。元警察官がヒーローになっていくわけですが、生身の人間の彼がケープを使うことでヒーローになっていくのが面白いです。

―― 生身の人間であるヴィンスとヒーローであるヴィンスの違いなどはやっぱり意識されましたか?

山寺 多少は意識しましたね。ヴィンスはアメコミの中のヒーロー、ケープとして存在しますし、息子に会いに行く時もケープの姿で行きますから。でもあれ、目しか隠してないからバレるだろう、って思うんですけどね(笑)。 それはともかく、実はオリジナルの俳優さんの演技は、ヒーローに変身する前と後であまり変えてないような気がするんですね。英語のニュアンスなので実際のところはどうなのかよく分からないんですけど。なので吹き替えではヒーローの時の彼は普段とは違うことが分かるよう、あくまであまりわざとらしくならない程度に、少し変化を付けています。

―― ヴィンスはヒーローと生身の人間というある種の2面性があるキャラクターだと思うんですが、声を演じるうえで一番気を配った点はどんなところだったんですか?

山寺 やっぱり完全なヒーローではなく悩みを抱えている人物として僕は見ていた気がしますね。ヴィンスは正義感は強いけど、かといって俺について来い! ってタイプでもない。ヴィンス自身、毎回どうしていいか分からなかったと思うんですよ。クライム・カーニバルと手を組んだりもしてるけど、正義感が強い元警察官の彼が犯罪組織と手を組むのも相当葛藤があるわけで。オーウェルにしたって味方なんだろうけど彼女の素性は全く分からない。そうやって分からないことだらけの中で常に迷いながら、家族のもとに帰るための道を探している、ただカッコいいだけじゃなく、そういう人間くさい部分が出るように意識しました。それと彼の行動の背景にはいつも息子への愛、妻への愛があるんですよね。夫婦や親子のシーンはほとんど回想で描かれているんですけど、それを見るともうどんだけイチャついてるんだ、って思うくらい仲が良いんですよ(笑)。でもそれだけ幸せな夫婦だったんだな、と思うし、そういうラブラブっぷりだったり、息子のことが可愛くて仕方がないという姿をきちんと声で表現することで、今のヴィンスが置かれている状況がより鮮明になると思ったので、その辺のメリハリには気をつけたつもりです。

■ツッコミどころが多いのも、ドラマの魅力!?

―― 山寺さんから見て「ザ・ケープ」の魅力とは?

山寺 ヴィンスに限らずキャラクターがみんな面白いのが魅力ですよね。アクの強いのがたくさん出てくる。クライム・カーニバルというサーカス団にいるっていう設定もユニークだし。強盗団なのに公衆の面前に出てきちゃダメだろう、とか思ったりもしますけど(笑)。あんな目立つ集団、一発でバレるんじゃないの? みたいなね(笑)。ヴィンスにしても、ケープひとつであんなにいろんな事ができちゃったり、あんまり理屈で考えない方がいい部分もたくさんあるんですよね、このドラマは。でもこういうツッコミどころが若干多いところもいいんですよ(笑)。ケープがスケールズの部下に対して○○(12/2放送後に公開します)の中に違うものを入れてやっつけるシーンなんかね、「これもうただのイタズラじゃないか!」って思いましたよ(笑)。あれはアフレコ現場でもみんなで大笑いだったんですよ、「セコい!」って(笑)。僕もリハーサルのときアドリブで「しめしめ」とか入れちゃったんですけど(笑)。「やってやったゼ!」とか「ザマアミロ!」みたいなまるで子供のノリみたいなところがあって、こういうスケールが大っきいんだかちっちゃいんだか分からないような部分も、ある意味このドラマの醍醐味だと思います(笑)

―― 山寺さん的にお気に入りのキャラクターは?

山寺 僕個人としてはスケールズかなぁ。リッチも面白かったね、ちょっと訳分からない存在だったけど(笑)。あと女性キャラクターにはきれいどころが多いけど、僕は何気にね、クライム・カーニバルのライアが可愛いと思ってます(笑)

―― ツウなチョイスですね(笑)。でも海外ドラマって見てるとどんどんサブキャラクターが面白くなってくるんですよね。

山寺 そうですね。特にこのドラマは本当に濃いキャラクターが多いので。濃いのに1回しか出てこないキャラとかもいますしね。でもそもそも主役のヴィンスとピーター・フレミングの関係にしても、「そこでなぜやらないか、そこでやっちゃえばいいのに!」っていうじれったさがまた面白いんですよ。ピーター・フレミング、というよりチェスですが、彼は全ての悪の権化のはずなのに何故か憎みきれないんですよね。でもこれはもしかしたら吹き替えを担当している木村さんの魅力かも。木村さんってどうしても憎めないキャラなんですよ(笑)。それがついついにじみ出ているのかもしれないですね。吹き替え版はそういう魅力も大きいんです。スケールズなんてオリジナルを超えてますよ!

山寺さんの「声」の秘密は、【後編】でたっぷりと!>>
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