アメリカドラマの運命を左右する「視聴率」のミカタ<後編>

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もうひとつ、近年の北米での目立った傾向として、DVR(=デジタル・ビデオ・レコーダーの略称。TVの映像などをテープやDVDでなく、ハードディスクに録画するレコーダー)による録画番組の視聴があります。現在、アメリカでTVを所持している世帯のうち、約43%がDVRを使用していると言われます。

DVRの普及に伴って、リアルタイムでテレビ番組を観ない人が増加したため、ニールセンでは数年前からDVRで番組を再生して視聴した人も含めた視聴率も計測しています。

以下の表が、その視聴率の一例です。ここでは、前回ご紹介した18~49歳の視聴率と比較するため、同じ期間(2012年3月5日~3月11日)で、年齢制限のない視聴率を取り上げました。
Primetime Broadcast Total Viewership for the week:shichoritu2.jpg

Nielsen TV Ratings: ©2012 The Nielsen Company. All numbers are live viewing plus same day DVR viewing.

表の上には「Primetime Broadcast Total Viewership for the week:」と書かれています。最初の「Primetime Broadcast」の部分は同じですが、その後が年齢制限なしの「Total Viewership(=全視聴者数)」に変わっています。

次に、表の最上段に記されている項目について左端から見ていくと、RankからNetまでは前回の表と同じですが、その右の「# Viewers (Live+SD) (000)」は新しいですね。#はナンバーを表す記号なので、# Viewersはナンバー・オブ・ビューアーズで視聴者数を意味し、次の (Live+SD) は「ライブ+Same Day」を意味します。つまり、「リアルタイムで番組を視聴した人と、DVRで録画した番組をその日のうちに観た人」の合計人数ということになります。

ちなみに、ニールセン視聴率のSame Dayでは、翌日の午前3時までに視聴した人まで含まれます。でも午前4時に視聴した人は含まれません。微妙なラインですよね(笑)。(000)とあるので、単位は千人。したがって、1位の『American Idol(水曜)』を当日に観た全視聴者数は、1,869万2千人と読み取ることができます。

続いて、お隣のHH Rating (Live+SD)について。HHはhousehold (=家庭、世帯)の略なので、HH Ratingで「テレビを所持する世帯単位の視聴率」を意味します。この場合の視聴率は「テレビを所持する全世帯のうち、ある特定の番組を視聴していた世帯」の割合です。そしてこちらも(Live+SD)とあるので、「リアルタイムで番組を視聴した世帯と、DVRで録画した番組をその日のうちに観た世帯の合計」の視聴率ということになります。1位の『American Idol(水曜)』の世帯視聴率は、10.9%だったということです。

そして最後にHH Share (Live+SD)を説明します。ここで、初めてShare(シェア)という言葉が出てきました。シェアというのは「その時テレビを視聴していた世帯のうち、ある特定の番組を視聴していた世帯」の割合を意味します。前述のRating(視聴率)との違いは、「テレビを所持している全世帯からの割合」であるか、「その時テレビを視聴していた世帯からの割合であるか」ということです。後者にあたるシェアは、必然的に視聴率より数値が高くなります。1位の『American Idol(水曜)』では、「リアルタイムで番組を視聴した世帯と、その日のうちにDVRで録画した番組を観た世帯の合計」のシェアは、17%でした。

前回ご紹介した18~49歳の視聴率と比較してみると、順位に微妙な違いがあることがわかります。たとえば、18~49歳のライブ視聴率では『VOICE』に勝てなかった『American Idol』が、50歳以上を含めたライブ+録画視聴者数では『VOICE』を上回り、1位2位を占めています。このことから、「『American Idol』は『VOICE』よりも年配の視聴者が多い」、あるいは「『American Idol』は、DVRで録画して観ている視聴者が多い」といったことが推測できます。同様にして、全視聴者数で『Big Bang Theory』を抑えて4位に上昇した『Person of Interest』についても、同じことが言えるでしょう。様々な条件のデータを比べてみることで、広告主は適切なターゲットにアプローチすることが可能となるのです。

さて、今回はアメリカの視聴率の見方についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか? 番組の運命を左右する視聴率。あなたの好きなドラマがアメリカのどんな年齢層にどれくらい支持されているか、あるいは、ちょっと気になっているドラマを今後も観続ける価値があるかどうかを見極めたい。そんな時にアメリカの視聴率をチェックしてみると、また違った側面が見えて良いかも。