世界一有名なヴァンパイア、《あの人》ゆかりの地に行ってみた!<前編>

誰も知りたくないとは思うが、私の「お気に入りヴァンパイアランキング」で10年以上トップを走り続けてきたエンジェル(『バフィー ~恋する十字架~』『エンジェル』)、その不動の地位が脅かされようとしている。

デイモン(『ヴァンパイア・ダイアリーズ』)の出現、そしてエリック(『トゥルーブラッド』)の猛チャージ。特に後者はシーズン2からの追い上げがすごい。ヘアスタイルを変え、(なぜか)肌の露出が増えただけではない。ギャップと意外性の宝庫であるエリックのキャラクターがさらに妖しく深みを増し、より美しくよりセクシーになってきた。

ここ数年、彼ら以外にも"素敵ヴァンパイア"が相次いで登場。次々日本上陸を果たしたヴァンパイアドラマのほうもますます目が離せない展開に・・・。そう、そんな今だからこそ、ヴァンパイアドラマ好きを自認する私としてはどうしても行っておきたい国があった。それは―――

◆《吸血鬼の聖地》ルーマニア!

「ルーマニア」といって大半の日本人が思い浮かべるのは、たぶん《白い妖精:コマネチ》《独裁者:チェウシェスク》そして《吸血鬼:ドラキュラ》のどれかだろう。

「吸血鬼ドラキュラ」はアイルランドの作家ブラム・ストーカーが1897年に出版、今も世界中で読まれている怪奇小説。幾度となく舞台化・映画化されてきたのはご存じのとおり。

レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」(1872)に影響を受けたB・ストーカーは、知人から聞いたり本で読んだりした東欧の歴史や吸血鬼伝説をヒントに、新たなストーリーを創作。レ・ファニュのカーミラに対抗して(?)男のヴァンパイアを登場させることに。そこでモデルにしたといわれるのが、ワラキア公:ヴラド3世(1431-1476)だった。

彼は、オスマン帝国をはじめ敵対する周辺国の兵士・使者らを生きたまま木の串で貫き、死ぬまで野ざらしにするという残酷な方法で処刑。領内の反抗的な貴族たちをも見せしめのために串刺しの刑にしたという。ここから《串》を意味するツェペシュという渾名がつき、ヴラド・ツェペシュことヴラド3世は《串刺し公》として知られるようになった。こうした逸話とともに誇張されながら西欧に伝わっていったヴラド3世のイメージが、ドラキュラ伯爵というキャラクターのベースとなったといわれている。

また、「ドラキュラ」の名も、ツェペシュが「ドラクル(竜公と呼ばれた父:ヴラド2世のこと)の息子」という意味の「ドラクルア」を名乗っていたのを参考にしたという。もともとドラクルは《竜》だけでなく《悪魔》の意もあり、ストーカーにとってはまさに御誂え向きのネーミングだったはず。

もちろんツェペシュは残虐ではあったがヴァンパイアではなく、ルーマニア人にとっては祖国を守った英雄。しかもストーカー自身は、ルーマニアどころか東欧にも行ったことがなかったらしい。つまり「トランシルバニアの吸血鬼=ドラキュラ伯爵」は彼の想像力と創造力の賜物。しかしその一方で、ヴラド・ツェペシュという人物がいなければ「吸血鬼ドラキュラ」はここまで有名にならなかったかもしれないし、現在の《ヴァンパイア・ブーム》も起こらなかったかも・・・。

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◆すべてはココから始まった!? ドラキュラ生誕の地 ~シギショアラ

シギショアラは、首都ブカレストの北西およそ300キロにある町。鉄道でなら4時間半ぐらい。
高台にある旧市街は今も城壁に囲まれていて中世の趣き。もともとザクセン人の入植から興った町なので、看板にもルーマニア語とドイツ語(ときどき英語も)が併記されていた。ゴシック風の古い建築物や小ぢんまりした住居や店舗が整然と並んでいる感じもなんだかドイツっぽい。

 

 

そんなトランシルバニアの小都市に、ドラキュラ伯爵のモデル=ヴラド・ツェペシュの生家がある。
ツェペシュは、父:ドラクルがハンガリー王に幽閉されていたとき(1431~36)にこの家で次男として生まれ、幼少期を過ごした。

【ドラキュラ伯爵のご実家】はひときわ目立つイエローの外壁。ドラキュラの怪しげなイメージとはかけ離れたかわいらしさ。エントランスのドラキュラ看板もなんだかコミカル。現在は「Casa Vlad Dracul(ヴラド・ドラクルの家)」というレストランになっていて、ほぼ通年、ドラキュラファン&ヴァンパイアマニアでにぎわっている。

中にはツェペシュとドラクルの壁画や人形、串刺しにされた人々を描いた絵が飾られていたり、メニューにも「ドラキュラシチュー」などドラキュラにちなんだ料理があったりして、お店側の努力とサービス精神が随所に。その甲斐あってか、ちょうど混む時間帯だっただけなのか、お客さんはかなりの数。お昼どきには外にも列が!

しかし、あまりの混雑ぶりにドラクルの家でのランチは断念(並ぶのキライ)、今回は同じブロックにあるホテル併設のレストランへ。ちなみに、この店のチョルバ(※ルーマニアのスープ)は「英チャールズ皇太子が絶賛した」そうで(皇太子の写真もあった)、地元では「"ドラキュラレストラン"より美味しい」との評判も。見た目は素朴だったが、変なクセがなく確かに美味しかった。

さあ、いよいよ「吸血鬼ドラキュラ」の舞台へ!

...というところで続きは次回。

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