オトナだからこそ楽しめる!スキャンダラス&エロティックなダーク系歴史ドラマはいかが?

「人の不幸は蜜の味」との慣用句どおり、たいていの人間は他人の《醜聞》が好物だ。

タブロイド紙もテレビもニュースサイトも、毎日のように芸能人スキャンダルで大騒ぎ。有名人に多額の借金があろうが、整形に失敗しようが、お忍びデートしようが、不倫相手と夫が鉢合わせしようが、本音をいえばかなりどーでもいい。

・・・はずなのだが、やはりメディアで連日取り上げられていると、不覚にも好奇心をくすぐられてしまう。

程度の差こそあれ、シャーデンフロイデ[※他者の不幸がもたらす悦びの感情]は誰にも存在するだろうし、他人の秘密を「暴きたい」「のぞき見たい」欲求があるのも否定できない。
そんな大衆のニーズを満たす誰かの《醜聞》《不祥事》《よからぬウワサ》は、海外ドラマにおいても格好のネタ。

今夏、日本上陸の『スキャンダル 託された秘密』は、数々の政界不祥事をもみ消してきた実在の女性フィクサーがモデル。『ゴシップガール』はヤングセレブのプライベートを追うブログが物語のベースだったし、『ダーティ・セクシー・マネー』は醜聞まみれの華麗な大富豪一族のメロドラマ。タブロイド誌の女編集長を主人公にハリウッドの暗部に迫る『dirt/ダート:セレブが恐れる女』もあった。

そして2011年に北米とヨーロッパで始まったのが、「史上、最もスキャンダラスな法王一族」を描いた2作品。ひとつは仏独合作の『ボルジア 欲望の系譜』、もうひとつは米ケーブル局Showtimeの『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』だ。

15世紀末、ルネサンス期のローマで権勢をふるったバレンシア出身の貴族《ボルジア家》。スペイン人としては2人目の法王となったロドリーゴ・ボルジア(アレクサンデル6世)を中心とする悪名高い一族の盛衰を描いた歴史ドラマだ。

●"破廉恥伝説"は歴史ドラマのお約束!?

いつの世も、スキャンダルの2大要素は《異性》と《カネ》。

不義や浪費のウワサが絶えなかったマリー・アントワネット、
並外れた精力でロシア皇后の寵愛を受けたとされる"怪僧"ラスプーチン、
カエサルやアントニウスを籠絡し、運命を狂わせたクレオパトラ、
近親相姦の関係にあった(と噂の)実母を殺害、惚れ込んだ美少年を去勢させて妃にしたといわれるローマ皇帝:ネロ、
離婚問題でカトリック教会と断絶、生涯6人の女性と結婚した英王:ヘンリー8世・・・

ウソか真か、スキャンダラスな逸話を残す歴史上の人物は枚挙にいとまがないが、中でも(なぜか)今ブームを迎えているボルジア家には、スキャンダラスなエピソードがてんこ盛り!

神に仕える身(=清いカラダじゃないとダメ)にもかかわらず、娘ほど歳の離れた若い人妻をはじめ複数の愛人と関係し、何人もの子をもうけたロドリーゴ
賄賂で買収したコンクラーヴェで念願の法王に即位。身内を要職に取り立てて権力を固め、娘は政略結婚に利用。邪魔モノは次々に殺害し、彼らの資産は没収して自らのものにするという腹黒ぶり。
冷酷な策略家として知られる息子:チェーザレも、数々の暗殺に関わっていたとされる。彼もまた、権謀術数と秘伝の毒薬を駆使して一族の野望を叶えようとした。
3回も政略結婚させられた娘:ルクレツィアは、多くの男性と浮名を流した恋多き女性だったが、兄や父との近親相姦のウワサも!?

ここでは挙げきれないほどの悪行・不品行を重ね、みんなまとめて真っ黒なボルジア家のみなさん。
彼らの「清廉そうな肩書き」と「実際やってること」とのギャップは、「不良なのに捨て猫に優しい」とか「汚い店なのに美味しい」とかのレベルをはるかに超えている。
だが、どんな偉業を成し遂げても、何の汚点もない品行方正な人間じゃ面白味がない。かえって、不道徳だったり変人だったりしたほうが、ドラマ化し甲斐があるというもの。

ロドリーゴ曰く「最後の恋愛とは、最も苦く、そして甘い」らしい。
「愛人に私生児を何人も産ませた聖職者がどの面下げて言うのか」という気はしないでもないが、老齢になってこんなセリフを恥ずかしげもなく言えるところはさすが!
狡猾な古狸のはずが、なんだか「ちょっとステキなおじさま」にすら見えてくる。

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●《毒気》と《ドロドロ感》は題名にも!

『ボルジア 欲望の系譜』『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』のように、邦題のサブタイトルにインモラルなイメージの言葉が使われているのも《オトナ向け海外歴史ドラマ》の特徴だ。
『キャメロット ~禁断の王城~』『THE TUDORS ~背徳の王冠~』『エリザベス1世 〜愛と陰謀の王宮〜』『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』『マジックシティ 黒い楽園』・・・と、粘度高めのワードが並ぶ。

そんな邦題と同様、いい具合にメロドラマテイストを醸し出しているのが、その時代に合わせた特徴的な衣裳の数々。
袖がふんわりしたチュニックにタイトなパンツ(ホーズ)といういわゆる王子様スタイルや、緋色の祭服に変な形の帽子という枢機卿の衣裳、どんな人でも勇ましく&頼もしく見えてしまうクラシカルな甲冑・・・などなど、歴史ドラマは基本的に「コスチュームプレイ」。
古代ローマが舞台の『ROME[ローマ]』『スパルタカス』に至っては、男性キャラはほぼ半裸。もはや筋肉がコスプレだ。

●表層的ではないリアルなエロティシズム

今年に入って、男優の上半身裸シーンが目立つ日本のテレビドラマ。
「女性の裸は多方面からいろいろ言われそうだけど、オトコならOKでしょ」といわんばかりの裸(上半身)ラッシュだが、今のところまだ「カラダを鍛えてる若手人気俳優」でないと脱ぐのが許されない雰囲気。
海外歴史ドラマでも、マーク・ライダー(『ボルジア~』チェーザレ)ジェイミー・キャンベル・バウアー(『キャメロット~』アーサー王)ら若い俳優の肉体美を堪能できるが、あえて注目したいのはフルヌードを堂々と披露しているベテラン俳優のほう。

『ボルジア 欲望の系譜』のロドリーゴ=ジョン・ドーマンは、愛欲と悪巧みが詰まっていそうなお腹周りが貫録たっぷり。『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』のロドリーゴ=ジェレミー・アイアンズは、表面のカサつきとは真逆のねちっこいオーラを放出している。

ジェームズ・ピュアフォイ(『ROME』『キャメロット~』)やジェフリー・ディーン・モーガン(『マジックシティ~』)の筋肉と脂肪がほどよく入り混じった霜降りボディも、スティーヴ・ブシェミ(『ボードウォーク・エンパイア~』)の年季が入ったたるみ加減も、それぞれ妙にリアルでエロティック。

女優陣の脱ぎっぷりも潔くて気持ちいい。
『キャメロット~』では、『007/カジノ・ロワイヤル』でボンド・ガールだったエヴァ・グリーンが、そして『ボルジア』ではジュリア役のマルタ・ガスティーニやルクレツィア役のイゾルテ・ディシャウクなどが、官能的な裸体を惜しげもなくさらしている。

セックスは人間の根源的な欲求のひとつ。エロティシズムを描くなら、生々しく肉感的であるべき。
よくある「シーツにくるまったままのベッドシーン」に不自然さを感じ、「唇を重ねたまま動かないキスシーン」にいい加減うんざりしている人、それほどエロくもないのに「過激」「ちょっとエッチ」を謳うドラマに落胆したオトナの視聴者にこそ観てほしいのが《ダーク系海外歴史ドラマ》。

セックス&バイオレンス描写を前面に押し出してはいるが、これらの作品で描かれるのは、自らの野望のためにあえてタブーを破るボルジア家の面々を筆頭に、本能・欲望のままに突き進む人間の姿。
濃厚でエロティックなシーンの向こうに、人間の汚さ・愚かさ・滑稽さが透けて見えるはずだ。

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『ボルジア 欲望の系譜』
エスピーオーより7月3日(水)からDVD-BOX発売!!
同日よりVol.1~6 レンタルスタート!!