『TOUCH/タッチ』ティム・クリング(プロデューサー)にインタビュー「僕はとても複雑なアイディアに惹かれるようなんだ」

『TOUCH/タッチ』2014年1月8日からDVDがリリースされる『TOUCH/タッチ』。世界のあちこちで起きている全く無関係のようにみえる出来事が、見えない赤い糸で徐々に繋がっていく――壮大なテーマを描いた本作のプロデューサーにどうしてこのようなドラマを作ろうとしたのか、ドラマの主人公にキーファー・サザーランド、そしてデヴィッド・マズーズを起用しようと思ったのか、など伺いました。

――『TOUCH/タッチ』という作品が生まれた経緯を教えてください。何かきっかけなどがあったのでしょうか?

僕は、人とのつながりというテーマや、我々が考えている以上に世界がもっとつながっているということを考え始めたんだ。これらのテーマについては何年も前に考え始めた。多くの意味において、僕のTVシリーズ『HEROES/ヒーローズ』は、スーパーパワーを中心としたジャンルものだけど、底にはこういうテーマを持っていたんだ。

『HEROES』のテーマは、世界がどのようにつながり、これらのキャラクターがお互いどのようにつながっているかについてだった。そして、この新しい番組『TOUCH』では、同じテーマを扱うけれど、水面下に隠すのではなく、番組全体のテーマにしようと決めたんだ。番組全体のアイディアが、僕たちがお互いにどのようにつながり、僕たちが思っているより世界は小さいということなんだ。僕に起きたことはあなたに影響を与え、あなたに起きたことは僕に影響を与える。 そういったテーマをもう少し深く探求してみたかったんだ。

――人をつなぐポイントに数字をつかったのはなぜですか。また、そのアイデアを思いついた具体的な出来事があれば教えてください。

もしあなたが量子物理学の本を読んだり、勉強したりしたら、数学的なアイディアによって自然で起きるとても奇妙な偶然や、自然にある多くのものをコネクトする数字的なパターンがあることに強い感銘を受けるだろう。それはとても神秘的なアイディアだけど、数学的で、ほとんど確かな科学や量子物理学に根差しているんだ。それで、僕はそういった繰り返されるパターンがあるということにすごく惹かれるようになった。もしあるキャラクターがそれらのパターンを見ることが出来れば、そこにはほとんど予言出来る資質があるということにね。彼は、過去や現在、そして未来において、どのように物事が起きるかを見ることが出来るんだ。どのようにすべてがつながり、彼が他の人々とどのようにつながっているかということがわかるんだ。

――なぜ、あなたは、このような誰も考えつかないアイデアを思いつくのでしょうか?普段から何か気をつけていることがあれば教えてください。

僕が何かアイディアを思いつく時、それはしばしば何かを考えているからじゃないんだ。何かを感じ、何かを言いたい時にアイディアが浮かぶんだ。何かのアイディアを世界に送りたいというエモーショナルなアイディアから始まり、そこへまた戻っていくんだよ。でも、そうだね。この番組は、そのおかげでとても複雑な番組なんだ。なぜなら、こういった人々のつながりというテーマは、書いたり制作するのがものすごく複雑だからだよ。でも、僕はとても複雑なアイディアに惹かれるようなんだ。

――本作のように何か不思議な経験をしたことがあれば教えてください。

僕がそういった経験をしたことがある、というんじゃないんだ。僕は常に、そういった経験をしたことがある人々に好奇心をそそられてきたし、目に見えるもの以上に、何か大きなものが僕たちの人生に働きかけているという考えに興味を抱いてきた。世界で実際に起きているミステリー、それはこれらの驚くべき偶然を起こしているんだ。僕たちみんながそういう偶然を経験している。僕たちみんなが、人生のどこかで、何かの理由があってあることをやらなかったために、その結果の波及効果がいろいろと起きたりする。そういうアイディアにずっととても惹かれてきた。何か不思議な、マジカルなものが作用しているのか?それとも、ただ自然のパターンが何度も何度も繰り返されているのか、とね。

――主人公マーティン役をキーファーに依頼しようと思ったのはどの段階ですか?企画の立ち上げ時ですか?それとも...?

僕たちはすでに脚本を終えていた。すでに脚本は書かれ、誰がマーティン・ボームを演じることになるだろうかと探していたんだ。実は、フォックスが、キーファーに依頼してみようというアイディアを思いついたんだ。彼は『24-Twenty Four-』を終えたばかりで、8 年間もあのシリーズの仕事をしていたんだ。他のテレビ番組をまたやることには興味がないだろうと思っていた。だから、キーファーに依頼するのは僕のアイディアじゃなかったんだ。フォックスのアイディアで、彼が興味を持っているとわかってとても驚いたよ。

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――キーファー・サザーランドとデヴィッド・マズーズくんを起用した理由と、その魅力を教えてください。

今、僕たちはシーズン2の最後の方をやっているから、キーファーがこの役を演じ始めてからかなり長い時間が経っている。マーティン・ボームのキャラクターがどこで始まり、キーファー・サザーランドがどこで終るかは、僕にとってはかなりぼやけてきている。彼らは一つで、同じなんだ。キーファーは、ものすごい情熱を持ち込んでくれている。このキャラクターは、彼が『24』で演じたジャック・バウアーよりももっと傷つきやすいキャラクターだから、観客は、キーファーの違う面を見ることになると思う。もっと感情的なキャラクターなんだ。そして何が素晴らしいかと言うと、キーファーは、彼が画面に出ている時、すべての強さを画面に持ち込む。だから、彼が傷ついている時、さらにもっと強烈になるんだ。なぜなら、僕たちは彼のことをタフなアクション・キャラクターとして知っていて、そのレンズを通して彼のことを見ているからだよ。だから、彼が傷ついているところを見ると、もっと強いインパクトがあるわけなんだ。

それから、デヴィッドを見つけることが出来たのは、まさに夢がかなったようだった。この役のために、多分100人以上の男の子をインタビューしてオーディションした。デヴィッドにはどこかとても特別な何かがあった。彼は、実はキーファーと一緒にオーディションした最初の子どもだったんだ。その後、すごくたくさんの子どもたちをキーファーと一緒にオーディションした。でもキーファーは言い続けていたよ。「最初の子はどうなの?」って。そして、実際そうだったんだ。振り返ってみると、僕たちの最初のチョイスは正しいチョイスだったわけだよ。

デヴィッドはとても集中力があり、とても落ち着いていて、とても静かなんだ。こういうことは、若い役者にはあまり見られないものだ。だから、彼に関して僕たちはとてもラッキーだったよ。また、ご存知のように、デヴィッドはナレーションもやっている。それは、僕たちが完全に準備していないことだった。キャラクターが話さないから、誰か他の役者に彼の声をやってもらおうと思っていたんだ。でも、彼は、ボイスオーバーをやるのに素晴らしいクオリティを持っていることがわかった。それで、彼のことをキャストとナレーションの両方で使うことが出来たんだよ。

――日本人女性2人が作品に準レギュラーで出演していたり、東日本大震災の物語があったりと、本作は日本と深く関わっているように思うのですが、それはなぜでしょうか?

そうだね...僕は常に日本に惹かれていて、うれしいことに、この数年に何度か日本へ行く機会があったんだ。僕はとても日本のことを気に入っていて、大好きなんだよ。でもまた、僕は...原宿にいる若者みたいなルックスの二人のキャラクターを考えていて、彼女たちをこの番組全体に、とても軽い感じでずっと登場させたかったんだ。彼女たちのストーリーというのは、いつも軽くて、いつも楽しいものにしたかった。それは、僕たちが語っているもっと重くて暗いストーリーとの釣り合いを取ることになるからね。彼女たちは、『ハムレット』のローゼンクランツとギルデンスターン(ハムレットの学友)や、『スター・ウォーズ』のCP3OとR2D2みたいに、シーズン1を通して登場するんだ。彼女たちはどこにでも出て来る。そして、僕たちは(彼女たちを登場させることを)とても楽しんだよ。

――あなたは日本のどういうところがお好きなんですか?

僕は日本文化にとても惹かれているし、日本の歴史にも惹かれている。それは『HEROES』をやっている時に取り上げたよ。それからまた、グローバルな感じのする番組をやっている時、日本は、世界的な(人々の)意識においてとても重要な役割を果たしているから、番組の中に日本を出さないというのは変だと感じたんだ。

――『TOUCH』という作品のシーズン1見どころ、そして今後の展開で教えてもらえることがあったら聞かせてください。

僕は、希望と、お互いにつながっているというメッセージを伝えることにとても興味があったんだ。僕にとってもっとも重要なことは、この番組がシニカルじゃないということだよ。今テレビで放映されている多くの番組は、人生のシニカルな面を描いている。でも、この番組には、シニカルな世界観はない。それは僕にとってとても重要だった。僕たちみんながつながっているというメッセージを僕はとても伝えたかったんだ。

また僕は多くのキャラクターを作り出したかった。僕はキャラクターをクリエイトすることにとても興味を持っているからね。また、シーズン1を進めて行くにつれて、それぞれのエピソードが独立していて、そのエピソードだけを見て楽しむというものから、ゆっくりと、続いていくストーリーを紹介していった。シーズン1の最後にいきつくまでには、もっとストーリーが続いている番組になっていた。エピソードの最後にいつも(続きがどうなるんだろうと気になるような)クリフハンガーがあって、また見たいと中毒になるようなクオリティがあるんだ。だから、シーズン2は、メインのキャラクターたちにもっと危険が迫っていて脅威があるような、連続した(ストーリーの)番組になっているんだよ。

――アメリカのドラマのクオリティは年々上がっているように思っているようですが、『HEROES』の時と比較して、ドラマを制作するうえで何か違いなどがあれば教えてください。

それは同じプロセスなんだ。『HEROES』はとてもコミックブックっぽいつやつやしたルックスだった。とても規模の大きな番組の感じがした。『TOUCH』にも、グローバルなフィーリングはあって、世界中からきたキャラクターが登場する。でも、番組の撮影のスタイルは、もっとリアルなんだ。照明とかもっと自然光を使っているしね。プロダクションは、『HEROES』の時よりも、もっとずっと早く進めているよ。『HEROES』はとてもテクニカルだった。特撮の量が多かったから、ショットを固定しないといけなかったんだ。『TOUCH』には、そんなにたくさん特撮はない。もっとリアリティに基づいているし、自然なルックスなんだ。

『TOUCH/タッチ』
2014年1月8日 Vol.01&DVDコレクターズ BOX1 リリース
2014年2月5日 DVDコレクターズ BOX2 リリース

Photo:(c)Kaoru Suzuki
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