イギリスの貴族一家と使用人たちの人間模様を描いた英ITVの人気ピリオドドラマ、『ダウントン・アビー ~貴族とメイドと相続人~』。同作の料理を製作しているフードスタイリストのリサ・ヒースコートが、米Entertainment Weeklyのインタビューで時代劇の料理製作にまつわる秘話を明かした。
ヒースコートによると、『ダウントン・アビー』で晩餐シーンを撮る際はあらかじめフルコース・メニューを考案するという。「キャストがテーブルにつく時に、すでに全メニューを知らせます。それからフルコース・ディナーのどの場面を使うか、どのコース料理を実際に見せるかを決定するのです。撮影するコース料理以外、実際には作りません」とのこと。また、「料理人のミセス・パットモアが晩餐用の料理をこしらえるシーンをよく目にしますが、ストーリーの展開上、その料理が必ずしもクローリー家の食卓に上るわけではありません。あえて言えば、彼女が料理する場面を見せることにより、その料理がクローリー家の晩餐で食されたと見せかける効果を狙っているのです」と解説した。
また、いくら撮影用フードとはいえ、キャストたちが実際に口にするだけに味にも配慮しているようだ。「俳優たちはずっと撮影用の料理を食べなければいけませんから、彼らが美味しく食べられるよう工夫しています。といっても、ソースにこだわる暇はありませんけどね。私の仕事は皿の上で見栄えがする、カメラ映りのよいフードをデザインすることですが、食事のシーンでは俳優がいつでも口に運びやすいように、小さく切ったクレソンやキュウリといった非常にシンプルな食材も用意します」と明かした。
料理製作だけではなく、ヒースコートはミセス・パットモアやレスリー、デイジーら料理人たちの演技指導も担当している。俳優がセリフに集中できるよう、ほぼ完成したデザートに最後の仕上げを施すなど、簡単だが映像的に映える動作を振り付けるそうだ。
ヒースコートはさらにスコットランドを舞台とする米Starzのファンタジー・ドラマ、『アウトランダー』の料理も手掛けている。『アウトランダー』は1947年のイギリスから1700年代のスコットランドにタイムスリップしてしまった従軍看護婦、クレアを主人公とする冒険ドラマだ。アスピック(肉のゼリー寄せ)など、洗練されたメニューが多い『ダウントン・アビー』に比べ、こちらは骨付きの大きな肉塊やジビエといった野趣豊かな料理が似合うという。いずれも、料理のアイデアはロンドンの英国国立公文書館や骨董品店などで集めた古いメニューから生まれるそうだ。これから両シリーズを視聴する際は、ぜひテーブルの料理に目を留めてみてほしい。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ダウントンアビー』
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