【スペシャル対談】『エクスタント』宮内敦士さん、矢島晶子さんにインタビュー!vol.02

スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を手掛け、ハリー・ベリー、真田広之ら豪華キャストが出演する超大作ドラマ『エクスタント』。全米CBSで昨年7~9月に放送され、早くも第2シーズンの製作が決まった本作の放送が、4/4(土)からWOWOWプライムでスタートします。
そこで今回は、ハリー・ベリー演じる主人公モリーの夫ジョンの吹替を担当する宮内敦士さんと、ジョンが開発したアンドロイドでジョンとモリーの子どもとして育てられているイーサン役を務める矢島晶子さんを直撃! ドラマの見どころやアフレコ現場の様子、声優としてのお仕事などについてたっぷりとお話をうかがってきました。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがですか?

宮内:モリーの上司のアラン・スパークス役のふくまつ進紗さんがムードメーカーになって盛り上げてくださっています。僕にはそういう盛り上げ役はムリなんで、とてもありがたいです。

矢島:パパ(ジョン)はいっぱいしゃべってるんだから、盛り上げ役もやらなきゃ!

宮内:いやあ、僕は気遣いが苦手なもので(笑)。それはさておき、板谷さんも一緒にスタジオ収録するようになってからは、ますます雰囲気が良くなりましたね。お互いの芝居も見えてくるようになり、より楽しみながらやらせてもらっています。

――矢島さんは、イーサンの母親モリーを演じる板谷さんとの絡みも多いのではないでしょうか?

矢島:スケジュールの関係上、スタジオで板谷さんとご一緒するようになったのはシーズン後半のエピソードに入ってからなんです。「やっと板谷さんと親子の掛け合いができる!」と楽しみにしていたんですが、実は意外と絡めるシーンが少なくて。最近のイーサンは、パパ(ジョン)とばっかりしゃべってますから(笑)。イーサンとモリーの素敵なシーンもたくさんあったので、今から全部板谷さんと一緒に録り直したいくらいです(笑)。

 

――声優初挑戦の板谷さんの印象はいかがでしょうか?

矢島:俳優さんがいきなり声だけの演技をするのは難しいと思うんです。私自身も、最初は舞台役者を目指していて。途中でアニメの仕事をするようになり、アフレコではしばらく居心地の悪さを感じていました。アニメのキャラクターって、通常の人間の呼吸と違うタイミングでしゃべりますから。外画の場合も、まず向こうの役者さんの演技ありきです。向こうの役者さんの口の動き次第で日本語の翻訳も変わってくるくらいですから、最初はしっくりきませんでした。板谷さんもお家でリハーサルしながら、私がかつて感じていたようなある種の居心地の悪さを感じているかもしれませんね(笑)。

――宮内さんは現在も俳優としてご活躍されていますが、俳優と声優の仕事の違いや、それぞれの難しさはどんなところにあると思われますか?

宮内:声優を始めたのは10数年前で。当初は、「俳優も声優もどちらも芝居には変わりない!」と考えていました。でも、実際に声優をやってみると、想像以上に感情がマイクに乗って届いていないことに気付いて。声優の芝居ではあえて感情を増幅させたり、表情や口の動きに合わせた演技を心がけたりと、いろいろ工夫を重ねながら演じています。最近になってからのことですが(笑)。
たとえば、ジョン役のゴラン・ヴィシュニックさんはクロアチアの出身。英語のネイティブスピーカーではないので、特徴的な彼の口の動きにセリフがきっちりと合うように注意しています。やりがいはありますが、正直言って疲れる部分もありますね(笑)。

――工夫しているのは最近になってからだとご謙遜されていますが、ご自身で自分の声の魅力に気付かれたのはいつ頃ですか?

宮内:いや、そんなことに気付いたことはないです(笑)。声優を始めた当初なんて、自分の声をまともに聴くこともできなかったですから。聴けるようになったのは、ここ2、3年ですかね。声も昔とはずいぶん変わり、少しは声優としても成長できたかな、と。もともと役の幅は狭いんですが、それでも少しずつ広がってきたように思います。

 

――宮内さんが今後挑戦したいタイプの役はありますか?

宮内:うーん、どうだろう......!?

矢島:オネエなんてどう!?

宮内:実は、若いときに舞台でオネエ役をやったことがあるんですよ。でも全然合ってなかった(笑)。

――矢島さんは、何と言っても『クレヨンしんちゃん』のしんちゃん役で有名ですよね。ほかにも、今回のイーサン役のように子役の吹替でも活躍されていますが、幅広い役柄を演じ分けるコツはあるんでしょうか?

矢島:それが"ない"んです(笑)。先ほどもお話しましたが、なるべく余計なことを考えないようにして収録に臨んでいます。ムリをして何かやろうとすると、間違いなく滑っちゃうので(笑)。とにかく台本と映像に集中! 海外ドラマをはじめとする外画では、より一層映像をよく見るようにしています。

宮内:無心で演技されていても、きっと矢島さん自身の魅力がお芝居に投影されているんだと思いますね。

――矢島さんの魅力というキーワードが出ましたが、宮内さんにとって矢島さんの魅力って?

宮内:謙虚ですし......、それに......。

矢島:かわいそう! ムリに言わされてる(笑)。

宮内:いえいえ(笑)。矢島さんとは以前も外画の吹替で何度かご一緒させていただいていますが、ここまでガッツリとやらせていただくのは初めてなので、すごく嬉しく思っています。矢島さんのこと、尊敬してますし! だって、しんちゃんの演技と外画の演技、まったく違いますもんね(笑)。

 

矢島:しんちゃんをやらせていただくようになった当初は、もっと普通のしゃべり方をしていたんです。でも、キャラクターや絵のスピードの変化に合わせていくうちに、なぜかあのヘンタイっぽいスタイルになっちゃって(笑)。今も普通の5歳児だと思ってしんちゃんを演じているんですが、すでにかなりデフォルメされちゃってますからね(笑)。

――矢島さんにとって、しんちゃんは特別ということですか?

矢島:そうですね。しんちゃんが極端ですから、本来の自分を出せる役をいただくと、「うわー! 思いっきり出しちゃっていいですか!?」と前のめりになります(笑)。俳優も声優も、芝居を通して自分の経験や内側にあるものを表現する機会を与えてもらっているからこそ、日々の生活のバランスが取れている部分があると思うんです。役者や声優って、基本的に不器用な人が多いんですよね。演じるという点で器用な方はたくさんいますが、そもそも生きることそのものに不器用というか......。だからこそ、芝居の中で自分の内面を表現できることがとても幸せなんです。宮内さんだって、お芝居で表現する自由を取り上げられちゃったら困るでしょ?

宮内:いやあ、僕の場合は人間としての厚みがないもんで(笑)。

矢島:年齢的に、まさにこれから厚みが出てくる時期なんじゃないですか? 男性は40代からが本番って言いますから。

宮内:そうですね。でも、先輩の声優さんが今の僕と同じ年齢の頃の演技を聴くと、自分はまったくこのレベルに達していないなと思い知らされますね。

 

矢島:あ、それは同感! 憧れている先輩声優のみなさんの演技には、到底自分は追いつけないだろうなと思います。とは言え、私なりにコツコツやっていきたいとは思っていますが。

宮内:自分自身が魅力的にならなければいけないんでしょうね。でも、自分をどう磨けばいいのかよく分からなくて(笑)。

――なるほど。突っ込んだお話までお聞かせくださってありがとうございます。では最後に、『エクスタント』の見どころをあらためて教えてください!

矢島:個人的には、人間の両親とアンドロイドの子どもで構成されたウッズ家の今後が気になります。人間とアンドロイドがどのようにして家族の絆を深めていくの?って。イーサン、モリー、ジョン、それぞれの葛藤が、そのあたりの問題提起をしてくれているような気がします。
もう一つ。人間だからこそのつながりを求める心、言ってみれば執着心がストーリーに織り込まれている点もこのドラマの見どころだと思います。SFでありながらSFにとどまることなく、人間の欲深さや愛といった核心をついてくるドラマなんです。あ、偉そうですかね!? スピルバーグさん、ごめんなさい(笑)。

宮内:モリーにしろ、ジョンにしろ、イーサンにしろ、ほかのキャラクターにしろ、みんな愛する人のために行動する、それがさまざまな問題の引き金になります。そうせずにはいられない愛の衝動というか、人間同士の絆の深さが感じられるドラマです。ぜひみなさんも楽しんでください!

■スピルバーグ製作総指揮『エクスタント』WOWOWプライムにて放送中!
<レギュラー放送>
4月4日(土)二か国語版・毎週土曜よる11:00~/字幕版・毎週水曜よる10:00~