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暴走するラブ&バイオレンス!歴代のカップル犯罪作品に見る《アウトローな恋人たち》

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1930年代、不況時代のアメリカに実在した男女2人組の強盗、ボニーとクライド。彼らの凄絶な生きざまを描き、アカデミー賞2部門を受賞した映画のリメイク版ドラマ『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』

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映画史に残る歴代のカップル犯罪作品

アメリカ映画史において重要な作品となった1967年の名作『俺たちに明日はない』は、映画ファンのみならず、視聴者に強烈な印象を今でも与え続けている。そんな本作のドラマ版放送を記念して、映画史に残る歴代のカップル犯罪作品を集めてみた!

孤独に生きる殺し屋と少女の共同生活&純愛を描いた『レオン』(監督:リュック・ベッソン、出演:ジャン・レノ/ナタリー・ポートマンほか)、恋人との仲を邪魔する母親から逃れようと、若い男女がトラブルに巻き込まれながらも西海岸を目指す『ワイルド・アット・ハート』(監督:デヴィッド・リンチ、出演:ニコラス・ケイジ/ローラ・ダーンほか)、シリアルキラーに関する取材旅行で車に乗せたカップルが、実は連続殺人鬼だった! という『カリフォルニア』(監督:ドミニク・セナ、出演:ブラッド・ピット/ジュリエット・ルイスほか)・・・など、90年代は《犯罪者カップルの逃避行》を描いた映画が豊作だった。

90年代映画を代表する《犯罪者カップル》

中でも衝撃的だったのは、1994年製作の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(監督:オリバー・ストーン、原案:クエンティン・タランティーノ)。
米中西部各地で殺人・強盗を繰り返す「スプリーキラー夫婦」ミッキー(ウディ・ハレルソン)とマロリー(ジュリエット・ルイス)が主人公のバイオレンス・ムービー。

夫妻の凶行は新聞やテレビで大々的に報じられ、若者を中心とした民衆のカリスマ的存在に。
2人の殺人行脚を主軸に、彼らを逮捕して名を上げようと目論む刑事(トム・サイズモア)、クライムドキュメンタリー番組のキャスター(ロバート・ダウニー・Jr.)、刑務所長(トミー・リー・ジョーンズ)らの思惑が絡み合い、ストーリーが目まぐるしく展開する。

アメコミ風アニメやホームコメディを彷彿とさせる回想、サイケデリックなイメージなどを挿入しながらの畳み掛けるような演出。暴力的すぎるシーンの数々や「親からの虐待」を最大の理由(いいわけ)とする彼らの悪逆無道ぶりには好みが分かれるところ。
議論を呼んだ問題作ではあるが、ウディとジュリエットの壊れっぷりと、ミッキー&マロリーの「毒」が周囲にじわじわと広がっていく終盤は圧巻だった。

実在した「最凶」カップルたち

ミッキーとマロリーは架空のキャラクターだが、モデルになったとされる実在の犯罪者カップルがいる。
1956年に18歳と13歳で知り合い、1958年の3ヵ月弱で10人を殺害したチャールズ・スタークウェザーとキャリル=アン・フューゲートだ。

この2人が起こした事件をベースに作られたのが、1973年公開の『地獄の逃避行』(監督:テレンス・マリック、出演:マーティン・シーン/シシー・スペイセクほか)。
25歳の清掃員:キットと15歳の少女:ホリーが、交際に反対したホリーの父親を手始めに、行く先々で人を殺めていく。この作品自体『ナチュラル・ボーン・キラーズ』に影響を与えたといわれ、2作品には内容にも共通点が多い。

ちなみに、キットのモデル=スタークウェザーは、キャリルの継父だけでなく実母とわずか2歳の妹まで容赦なく射殺。死体が転がる家でキャリルと6日間も暮らしていたというから、現実のカップルのほうが狂気じみていた!?

そしてこちらも実際の連続殺人事件が題材になっている。
2006年の『ロンリーハート』(監督・脚本:トッド・ロビンソン)は、《ロンリー・ハーツ・キラーズ》と呼ばれた殺人鬼カップルのゆがんだ愛情と、刑事たちの捜査を描いた映画。

結婚詐欺師のレイモンド・フェルナンデス(ジャレッド・レトー)は、新聞の恋人・文通相手募集欄「ロンリー・ハーツ・クラブ」で標的を選び、孤独な中高年女性や戦争未亡人を騙しては金品を巻き上げていた。

彼が新たなカモに選んだのは、元看護士のマーサ・ベック(サルマ・ハエック)。
別の詐欺でしくじったレイモンドをマーサが救ったのをきっかけに、彼女は結婚詐欺の片棒を担ぐことになるが、レイモンドに執着するマーサは激しい嫉妬からターゲットの女性を撲殺してしまう。

ジャレッドは「よく見ると全然イケてないカツラ男」=レイモンドの風貌に頑張って近づこうとしているが、サルマはマーサ本人よりずっと美形かつセクシーで、映画はかなり美化された印象。監督・脚本が(現実の)二人を逮捕した刑事の孫ということもあり、犯人よりもロビンソン刑事(ジョン・トラボルタ)ら警察側の描写が色濃い人間ドラマに仕上がっている。

作中では3人ほどしか殺していないレイとマーサだが、現実には1947年の出会いから逮捕されるまでの1年数ヵ月の間に20人以上を殺害。単独ならシケた詐欺師で終わっていた男が、女と運命的に出会い、お互いを触媒にして悪事をエスカレートさせていった典型例。

彼らの事件は世間に衝撃を与え、本作以前にも1969年の『ハネムーン・キラーズ』(監督:レナード・カッスル)や1996年のメキシコ映画『ディープ・クリムゾン』(監督: アルトゥーロ・リプステイン)として映画化された。

冷戦下だけでなく今も実在?「スリーパー」という犯罪者

現在アメリカでヒット中のテレビシリーズにも《犯罪者カップル》が登場する。

2013年スタートの『ジ・アメリカンズ』は、レーガン政権下のアメリカに極秘潜入したソ連の男女スパイの暗躍を描くサスペンスドラマ。

フィリップ(マシュー・リス)とエリザベス(ケリー・ラッセル)はKGBのスリーパー
母国での訓練を経て20年前からDC郊外で生活。小さな旅行代理店を経営しつつ娘と息子を育て、表向き「ごく普通のアメリカ人夫妻」として暮らす一方、祖国からの指令で工作活動を行っている。

(スパイ活動自体すでに違法だが)任務遂行のためなら殺人もいとわず、次々に手を汚していく。そんな彼らもれっきとした犯罪者だ。
工作活動はアメリカにとって「犯罪」でも、夫妻にしてみれば「正義」であり「使命」
偽りの夫婦とはいえ20年も一緒にいれば情も湧くし、実の子への愛情はホンモノ。
子供たちに真実を話せない彼らは、次第に祖国への忠誠心と家族への愛の板挟みになっていく。

彼らの葛藤と苦悩が大きくなるたび、判官びいき的な感情が刺激されて、夫妻のスパイ活動=犯罪がうまくいくよう祈りながら見てしまう。
見れば見るほど「悪者」であるはずの《犯罪者夫妻》を応援したくなるのが、本作の面白さだろう。

《犯罪者カップル》のアイコン=ボニーとクライド

そして「もっとも有名な犯罪者カップル」といえばボニー・パーカーとクライド・バロウ。1930年代前半に銀行強盗や殺人を繰り返し、短くも波乱に満ちた人生を送った男女だ。

犯行を重ねて逃亡する2人の写真(フォード車の前で葉巻をくわえ、銃を構えてポーズをとっていたアレ)が初めて新聞に掲載されたのは1933年のこと。

当時は世界大恐慌の真っ只中。アメリカの失業率は25%を超え、多くの銀行が破たん。貧富の格差は拡大、この年の12月に廃止されることになる禁酒法への反発もピークに達し、政治不信・金持ちと権力者への不満が社会に蔓延していた。
「自分たちをヒドい目に遭わせた政府や銀行にひと泡吹かせた」ボニーとクライドは、市民にとって、息苦しい時代の憂さ晴らしだったと言われている。

石川五右衛門に真田幸村・赤穂浪士、ロビンフッドやビリー・ザ・キッドにウィリアム・ウォレス――。
そもそも民衆は「権威に逆らい、お上に楯突くアウトロー」が好きだ。

さらにメロドラマ的要素やピカレスク的魅力、若さや美しさといった「はかなさ」が加われば、より大衆ウケする格好の題材に。
その具現化がまさに《ボニーとクライド》だったのではないだろうか。

ボニーとクライドの”真実”に迫るミニシリーズ版

人々からヒーロー視されたカップルの逃避行は、幾度となく映像化・舞台化されてきた。

その筆頭が1967年の映画『俺たちに明日はない』(監督:アーサー・ペン、出演:ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイほか)。
反体制的な若者たちの暴走と破滅を描いた「アメリカン・ニューシネマ」の原点ともいわれる作品で、《ボニーとクライド》は”アウトローな二人組“の代名詞となった。

今回放送されるミニシリーズ『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』(監督:ブルース・ベレスフォード)は、この名作映画のリメイク。どちらも同じ事件が元なので、主なキャラクターや物語の大筋はほぼ共通。だが、ミニシリーズ版は映画版より事実に(比較的)忠実だ。

「10代のクライドが兄のバックと働いた悪事」や「クライドの悲惨な刑務所生活」、
「クライドと出会う前、すでにボニーは別の男と結婚していて最期まで人妻だったこと」、
「バロウギャングと呼ばれた強盗仲間との関係」、
「クライドの知人でボニーに会ったこともある人物が捜索チームにいたこと」など、
犯罪者になる以前の2人や事件の知られざる背景もしっかり描いている。

また、《追われる側》のボニーとクライドにフォーカスするあまり、これまでないがしろにされてきた人々に光を当てているのも興味深い。

ボニーの母(ホリー・ハンター)をはじめとする《家族》
元テキサスレンジャーのフランク・ヘイマー(ウィリアム・ハート)を中心とした《追う側》
ヘラルド紙の記者(エリザベス・リーサー)ら《2人を祭り上げた傍観者》の心情といった、映画1本では語りきれない部分まで網羅されているのは、総尺3時間(前編90分、後編90分)のミニシリーズならでは。
「脇役たち」を演じるベテラン俳優の演技と存在感にも注目だ。

一方、主役のボニー(ホリデイ・グレインジャー)とクライド(エミール・ハーシュ)の描き方には独創的な点も。

女優志望だったが夢破れたボニーは、人生に刺激を求めた結果、道を踏み外してしまう。
「幼少期からのいい想い出」を詰め込んだ宝箱を肌身離さず、自分が載った新聞記事でスクラップブックを作り、呼び名も《クライドとボニー》ではなく、あくまで「ボニー」が先であることにこだわる。
強すぎるエゴと功名心の持ち主だとわかる、数々のシーンが印象的。

マスコミにもてはやされて満足気なボニーとは反対に、不穏な空気を感じ取っているのがクライド。
彼が第六感、というか不吉なヴィジョンにたびたび襲われるシーンは、2人の結末をすでに知る私たちの目線と重なる。
逃亡の先の破滅を予期しながらも暴走を止められず、犯罪を重ねたのはなぜなのか?
泥沼にはまっていく2人の哀しさともどかしさが際立つ演出になっている。

もちろん、映画史に残る「あの有名なクライマックス」=ボニーとクライドが待ち受けていた捜索チームからハチの巣にされるシーンは、今回のミニシリーズ版でも健在。

ただしラストには、映画版とは異なる「演出」「メッセージ」があるので、その違いも見比べてほしい。
彼らについて本作で初めて知る人は言うまでもなく、映画版の《ボニーとクライド》しか知らない人にも、新鮮な驚きと発見があるはずだ。

(海外ドラマNAVI)

Photo:『ボニー&クライド/俺たちに明日はない』(c)2013 Sony Pictures Television Inc. All Rights Reserved.

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海外ドラマNAVI編集部

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