【緊急特別編コラム】今からでも大丈夫!マーベル・シネマティック・ユニバースに追いつき、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観るべき、これだけの理由

(※注意:このコラムの文中のキャラクターの名称や、監督名・俳優名・女優名などは、原語または米語の発音に近いカタカナ表記で書かせて頂いています)

「マーベルの映画、観たことないんだけど...」

「アメコミのヒーローって、全然わからないし...」

「観ても、自分にわかるかな...!?」

と思いながらも、マーベル・シネマティック・ユニバース:MCU の映画作品群がずっと、そしてなんとなく、気になっている皆さんにこのコラムを送ります。

まだ、間に合います!!!

映画の歴史の中でも、これまで見たことのないような"ユニバース:世界・宇宙"を築き続けている手法は画期的で、ここから先の展望は今まで以上にさらに壮大。クリエーターたちが最先端のアイデアと英知を結集し、繰り広げているエンターテインメントは、たとえそれが空想科学や架空の英雄たちの物語だとしても、大人でも鑑賞時間を投下し、観続けていくだけの価値があります。

 

~この男たちから、映画のユニバースが始まった~

2007年の秋、ハリウッドは大規模な脚本家のストライキに突入しました。状況は深刻で、年が明けてもまだ続くストの影響で業界は静まりかえり、やや先の見えないムードが立ちこめていました。(僕が渡米したのがちょうど07年の秋で、ストの影響がTVドラマ『HEROES/ヒーローズ』の出演回数の変更にまで及んでしまった頃なので、とても印象深いのです。ストは翌年の2月にようやく終わりました)

2008年の5月、サマームービーの季節を大幅に先行する形で、ハリウッドの街の暗雲を吹き消すかのようなクリーンヒット作品をマーベル・スタジオ:MARVEL STUDIOS が弾き飛ばしました!!

それがMCUの第1作目となる、

アイアンマン:IRON MAN』でした。

(※アイアンマンに関しては、「初心者にもわかる! マーベル・ユニバースの英語<Vol.1>」をお読み下さい)

 

当時、まだ薬物スキャンダルのイメージを完全には取り払えず、やや不遇(と言っても名優です!!)の時期であったロバート・ダウニーJr. を、"まさか"のヒーロー映画の主演に抜擢するというギャンブルに命運を賭けた製作チームの気迫が、業界にも、批評家にも、観客にも伝わったのです。洗練された映像のクールさ、べトナム戦争や冷戦の時代から、アフガニスタン情勢などを取り巻く「現在の世界」に舞台設定を置き換えたことによる生々しさやメッセージ性も、広く強く観客に受け入れられました。

アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.が演じる)は、かつては巨大軍需産業の大手企業の御曹司として国防に貢献していました。しかしアフガニスタンの戦地で、自社で造った武器がゲリラ攻撃に流用され米国の若き兵士たちの命を奪っている現実を目の当たりにし、その辛い体験をきっかけに破壊兵器ビジネスを捨て去ることを決意し、"スーパーヒーロー"として世界平和に寄与していく道を選びます

そしてさらに!

2008年の『アイアンマン』よりも前に、マーベル世界の"時系列的には"、トニー・スタークよりも早くこのユニバースに存在する、非常に重要な人物がいます。

彼の名は、スティーヴ・ロジャーズ(クリス・エヴァンスが演じる)

この人物が、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011年 MCU第5作目)』の主人公、通称"キャップ"と皆に親しまれている男です。

 

第二次世界大戦の真っ直中の1942年、青年スティーヴ・ロジャーズはその誰にも負けない愛国心とは裏腹に、ひ弱で華奢な体つきで、決して恵まれた境遇ではありませんでした。兵隊となることを志願しましたが、何度も何度もその肉体的な欠点が理由で入隊を拒否されていました。街では不良に目をつけられ、殴られ、スティーヴの正義感は踏みにじられました。

しかし、どんなに殴られても、彼のハートが折れることはありません
激しく殴り続けてくる相手を見つめ、

I can do this all day... 一日中だって、つき合ってやる(僕はずっと耐えていられる)

と言い放ちます。

殴られるスティーヴを見つけて助けに入ったのが、親友で先に軍に入隊していたバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタンが演じる)でした。戦地への派遣がすでに決まっていたバッキーは、別れの前夜にスティーヴを連れて博覧会の会場に行きます。その博覧会とは、天才技術者ハワード・スターク(トニー・スタークの父)が主宰する未来への技術の博覧会"STARK EXPO"でした。
このエキスポの会場内でも、戦争志願兵を募る検査を軍が行っていましたが、この時に再志願の検査を決意したことが、スティーヴの運命を劇的に変えます

(※スティーヴの運命がどんな経緯で変わるのか?は、「初心者にもわかる! マーベル・ユニバースの英語<Vol.3><Vol.4>」をお読み下さい)

スティーヴは「スーパーソルジャー計画」というプランの実験の候補となり、この試みの最初で最後の成功例となります。この計画の成果で強靭な肉体と能力を獲得したスティーヴは、対ナチスとの戦争状態に陥っている国を救います。

そしてその超人的肉体を手にしてしまったが故に、70年間もの時を超えて生き続け、国の未来と世界の未来(2000年代)をも救うという使命も背負うことになっていくのです

~創られた映画の本数とそのプランの期間~

現代に生きる、最高の知能と技術の持ち主であるトニー・スタークと、純粋な愛国心をそのままに過去から蘇り、やはり現代に生きる驚異的な肉体と戦闘能力の持ち主であるスティーヴ・ロジャーズ。

この二人を中心に、マーベル・スタジオは、2008年から今日2016年までのわずか8年間で、実に「12本の個別のヒーロー映画」の数々を創り上げ、しかもそれらの作品がすべて《一つの世界観》の中に存在するという離れ業をやってのけました

過去に、『007』や『スター・ウォーズ』などの傑作や名作シリーズは多くあります。しかし、別々のタイトルのヒーローたちの映画に、"スクリーン上"もしくは"水面下"で、それぞれにつながりを持たせ、それを「8年という時間枠で12本」も観客の目の前に提示したという例は、他に類を見ません。

そのお膳立てを入念に創り上げてきたからこそ、マーベルのコミック原作を代表するストーリーの一つである『シビル・ウォー』(MCU第13作目)の映画化が今、結実するに至ったのです。

ちなみに!『キャプテン・アメリカ』単独のシリーズとして見ても、批評家やファンたちの映画への評価や熱が、1作目の『ザ・ファースト・アベンジャー』、2作目の『ウィンター・ソルジャー』、そして3作目の『シビル・ウォー』と、新作が発表される度に(期待度を含め)上がっていることも決して軽視できない事実です。

ハリウッドにこれまでありがちだったヒット映画の「続編」は、知名度による興行的な大ヒットは狙えても、その作品の質自体は下降してしまったものがほとんどです。最近では昔よりは慎重に続編を作り、2作目が1作目を超える場合もいくつかありますが、「トリロジーの3作目が一番評価が高い!」というケースは非常に稀です。

その意味でも、『キャプテン・アメリカ』というのは、シリーズとしても偉業なのです。

また、多くの方にとって、アクション&ヒーローを扱う映画は、どうしても偏見の目で見てしまう傾向があるでしょうが、このシリーズは《70年の時を超えた純愛》の物語でもあり、時代の経過と共に《人々のために闘う》とはどういうことなのか? そのイデオロギーの意味を問いかける、歴史&戦争映画(反戦)でもあるのです。

~散りばめられた数々の布石と、見つけるのが楽しい Easter Eggs(小ネタ)の連続~

MCUのトップバッター『アイアンマン』のエンディングに、極秘に用意された Post-Credits Scene:クレジット後の追加・付録シーン。

そこに突然姿を現した、ニック・フューリー

ニック・フューリーとは、国際平和維持組織S.H.I.E.L.D. の長官で、サミュエル・L・ジャクソンが演じています。そう、黒いアイパッチを身に着け片目のあの人です。

 

(※ Post-Credits Scene は、それぞれの映画を"タグ付け"するようにつなげていくため、"Tag Scene"とも呼ばれ、マーベル映画ファンの大きな楽しみになっています)

「S.H.I.E.L.D.」は、親子二代にわたって、スターク家の産業が技術で支援し、キャプテン・アメリカことスティーヴは、Super Soldier:超人兵士として仕え、その組織の任務に従事することになるという、二人の運命をつなぐ機関でもあります。

スティーヴとバッキーが、1940年代に"STARK EXPO"で初めて目にした「車が宙に浮き上がる技術」は、のちの未来でS.H.I.E.L.D. が見せるヘリキャリアー(映画『アベンジャーズ』などに登場した戦闘空母)や、テレビドラマ『エージェント・オブ・シールド』の、"あの人"の車!!にも活かされているわけです。

(※"S.H.I.E.L.D."という組織については、「初心者にもわかる! マーベル・ユニバースの英語<Vol.2>」をお読み下さい)

S.H.I.E.L.D. のエージェントたちは、水面下で、スーパーヒーローたちを管理し、時には接着剤となってヒーローたちを集結させ、時には自らがヒーローとなって、世界を危機から救う戦いを支えます。
S.H.I.E.L.D. の面々は、アベンジャーたちの存在と共に、マーベル世界のもう一つの軸なのです。
"アベンジャー"として人気の高いブラック・ウィドウ(スカーレット・ジョハンソンが演じる)、ホークアイ(ジェレミー・レナーが演じる)も、このS.H.I.E.L.D. に所属している敏腕エージェントです。彼らは、スパイ活動と格闘に長けた諜報員であり、人間たち。"超人的なヒーロー"ではありません

さて、"Easter Eggs"とは何なのか? ちょっとだけご紹介しましょう。
イースターとは、元々は春の復活祭の習わしのことなのですが、子供たちにとっての楽しみは、お祭りのために色鮮やかに装飾された卵を探す「エッグハント」という遊びです。この言葉が由来となり、映画やドラマの中に散りばめられ、よく注意して観ていないとわからないような関連ネタ(主に小道具や美術。セリフに含まれる場合も!)のことを、"イースターエッグ"と呼ぶようになったのです。

このイースターエッグが、マーベルの映画作品には様々な場面の「あ!」っという箇所に、仕掛けられているんです。

たとえば、『シビル・ウォー』には、ブラック・パンサー(チャドウィック・ボーズマンが演じる)という新たなキャラクターが登場しますが、マーベルのコミックの世界観の中では人気の高い人物です。2018年には、彼の単独映画も公開されます。ウォー・マシーン(ドン・チードルが演じる)やファルコン(アンソニー・マッキーが演じる)に次ぐ3人目の黒人ヒーローとなり、このユニバースの中では今ハリウッドで叫ばれている"人種の多様性"を促進する役割も担うと言っていいでしょう。

 

このブラック・パンサー、「新キャラがいきなり増えたな...」と新たな鑑賞ファンにとっては敷居がまた高くなるような印象を与えるかもしれませんが、そうではありません。

映画『アイアンマン2(2010年)』の終盤、S.H.I.E.L.D. の長官フューリーが、トニー・スタークに「Avengers Initiative:アベンジャーズ計画」への参加の案件について話す場面がありますが、彼らの背後にある、世界の状況を常に映し出すホログラムのスクリーンには、超人ハルクが起こした事件の映像や、各国の Hot-Spot(S.H.I.E.L.D. の監視ポイント)の地図が表示されています。

そのホット・スポットの一つとして光っているのが、アフリカです。アフリカのケニア近くに存在する"ワカンダ"という王国(架空)を指しているのです。このワカンダ王国の王位を継いでいる者がティ・チャラという人物で、彼がブラック・パンサーです。そしてこの国は小国でありながら、高いレベルの文明国家で、さらに Vibranium:ヴァイブレイ二ウムという稀少金属の唯一の産出国です。
幻の金属 Vibranium:ヴァイブレイ二ウムは鉄よりも硬く、重さは3分の1、どんな衝撃も吸収するという特質を有しています。

このヴァイブレイ二ウムという金属を、20世紀にハワード・スタークの調査団が発見し、ある武器の製造に使用しました。それが、あのキャプテン・アメリカの「丸い盾」なのです!!

しかも、その稀少で無敵の金属ヴァイブレイ二ウムを、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015年)』(MCU第11作目)では強敵ウルトロンが自分の身体造りに用いようと狙うため、ある場面でしっかりワカンダという国が登場する、という筋書きになっています。

つまり、2010年に『アイアンマン2』を公開した時点で、やがてこの映画ユニバースに「ワカンダ国」を登場させる布石はしっかりと打ってあり、「ヴァイブレイ二ウム」の強度と重要性についても度々このユニバースで語ってきている...ということなのです。

問題は!!!なぜ、この文明国の王であるブラック・パンサーが、今『シビル・ウォー』でその姿を現し、分裂するヒーローたちの紛争に参戦してしてくるのか!?ということ...

...と、こんな風に、すべてが絡み合っているんですよ。

~名優、旬のスターたちの競演。そして珠玉のスタントシーン~

マーベル映画の鑑賞の楽しさに、名優たちの演技バトルがあります。

ロバート・ダウニーJr. を筆頭に、
アンソニー・ホプキンス(『マイティ・ソー』)、
トミー・リー・ジョーンズ(『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』)、
ロバート・レッドフォード(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』)、
マーク・ラファロ(『アベンジャーズ』シリーズ)、
グウィネス・パルトロウ(『アイアンマン』シリーズ)、
ナタリー・ポートマン(『マイティ・ソー』シリーズ)、
ベニシオ・デル・トロ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)、
ブラッドリー・クーパー(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)...

そして「マイティー・ソー」の最新作"ラグナロク"には、なんとケイト・ブランシェットが参戦します!!

これだけザッと見渡しても、アカデミー賞受賞者&ノミネート者が並ぶ豪華さ

さらに、旬の俳優たちの才能を即座に作品に迎え入れる戦略にも長けています

トム・ヒドルストン(『マイティ・ソー』シリーズ&『アベンジャーズ』)、
ベネディクト・カンバーバッチ(『ドクター・ストレンジ』本年度公開予定)、
チウェテル・イジョフォー(『ドクター・ストレンジ』)、
マーティン・フリーマン(『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』)、
エリザベス・オルセン(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)、
アーロン・テイラー=ジョンソン(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)...など。

これまで、個別シリーズの主演を担ってきた『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンス、『マイティ・ソー』のクリス・へムズワース、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(シリーズ化決定!)』のクリス・プラットたちには、アメリカの全国区を飛び越え、"世界区"の人気と知名度がもたらされました。

そして俳優たちだけではありません、
彼らのアクションの代役を任されたスタントダブルとして雇われているメンバーや、迫力あるアクションシーンの一瞬一瞬を生み出しているスタントマン/スタントウーマンたち、そしてそれらの場面展開をすべて熟考してプランを練り、「コミック版に見劣りしない実写」として具現化するスタント・コーディネーターたちも超一級!!!

米国の、Taurus World Stunt Awards(スタント界における「アカデミー賞」的な賞)では、2014年度の数ある映画群の中から、BEST STUNT COORDINATION AND/OR 2ND UNIT DIRECTION(最優秀スタント・コーディネーターもしくは撮影第2班の演出)部門で、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のスタント・コーディネーターたちが見事受賞しています。

この部門は、スタントの"作品賞"部門に匹敵します!!

『ウィンター・ソルジャー』は、CGや合成によるヴィジュアルを使いつつも、原点である"プラクティカル(実際に肉体や道具や効果を使って行う)"なアクションをより重要視し、俳優やスタントマンらの格闘やカーアクションのリアリティー溢れる描写にこだわり抜いた作品です。だから、より生き生きとし、登場人物たちの痛みや息づかいも伝わる

また、2012年度のアクション映画の中では、同映画賞の BEST FIGHT(最優秀格闘)部門で、映画『アベンジャーズ』(MCU第6作目)の中でブラック・ウィドウことスカーレット・ジョハンソンのスタントダブルを務めたハイジ・マネーメーカーというスタントウーマンの戦闘場面が堂々受賞しています。この部門は男女の垣根を越えた部門なので、素晴らしい快挙だと言えます

これらの演技バトルや、文字通りスタントによる"バトル"を、最新作『シビル・ウォー』では、さらにレベルを上げて超えてくるのだとすれば、これはもう「必見」というしかありません。

~映画会社の壁を超えた、スパイダーマンの登場!!~

さて、やはりこのことに触れずにはいられません。もうネタバレではないでしょう、予告編にもその姿を現し、世界中のスパイディのファン、マーベルファン、アメコミファン、映画ファンを興奮の渦に巻き込んだ、

『スパイダーマン』の、マーベル・シネマティック・ユニバースへの参戦です!!!

 

アメリカのコミックと、そのコミックの映画化でのキャラクターたちの住み分けに関して、あまり馴染みがなければやや解り難い「興奮♪」とも言えるのですが、簡単に説明しますと...

現在ではディズニーの傘下で映画の製作&配給を行っているマーベル・スタジオ:MARVEL STUDIOS(映画部門の会社)。その母体である「マーベル・エンターテインメント」は、ディズニー傘下になる前の90年代に、様々なマーベル・キャラクターたちの映画化権をいくつかの大手映画会社に譲渡する契約を結んでいました
そのため、皆さんがよく知るところでは、大ヒットシリーズとなっている映画『X-MEN』の一連のシリーズや『デッドプール』や『ファンタスティック・フォー』は20世紀FOXが手がけ、『スパイダーマン』の過去二つのシリーズ(一つはトビー・マグワイアが主演。もう一つはアンドリュー・ガーフィールドが主演で、これもどちらも大人気となった作品群)はコロンビア・ピクチャーズ/ソニー・ピクチャーズが世に送り出してきました。

「マーベル・エンターテインメント」はそれらの大手映画会社と共同でプロデュースしている、もしくはしていたので、それらもすべてコミックを基とした、"マーベル"ブランドの映画です。

一方、2007年にマーベルのコミック世界を知り尽くした若き敏腕プロデューサーであるケヴィン・ファイギを製作チーフに据え、"マーベル自ら"が、単独で映画製作を開始し、展開させたのが新生マーベル・スタジオ:MARVEL STUDIOS の「マーベル・シネマティック・ユニバース」です。

元々の「コミック世界」の中では、長年の間、同じ世界観の中で共存しているキャラクターたちであっても、現時点では、X-MENのミュータントやファンタスティック・フォーのメンバーたちを『アベンジャーズ』映画に登場させることはできません。同様に、アベンジャーたちを『X-MEN』の映画に出演させることはできないのは、映画化権の契約上の理由があるからです
そして、ソニー・ピクチャーズが映画化してきた「スパイダーマン」にも、同じ事情が当然ありました。

ところが!!!

ソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオが、新たなる契約を結び、「スパイダーマン」をマーベル・シネマティック・ユニバースの一つとして製作するというニュースが昨年駆け巡ったのです。クリエイティヴ面の舵を取るのは、ケヴィン・ファイギ。ファンにとっては「不可能が可能になる」驚きの大ニュースでした。
そして、『シビル・ウォー』原作コミックの物語でも欠かせない登場人物であるピーター・パーカー/スパイダーマンを、この機会に壮大なユニバースに招き入れるという離れ業を実現したのが、ファンが待ち望んだ映画版『シビル・ウォー』であるわけです。

最新の予告編のエンディングに、スパイダーマン(トム・ホランドが演じる)が現れる瞬間、アイアンマンのロバート・ダウニーJr.が、

「Underoos!!」

という呼び声でスパイディを呼ぶのですが、この「Underoos」というのは、昔々、昭和の時代に米国で流行った、子供用下着のブランドで、アニメや映画のキャラクターのデザインをあしらった、いわば子供たちが当時ときめいた"コスプレ"下着のことです。

ヒーロー同士が決裂し、対決を果たすというこの重要な局面で、相手を茶化すかのようなジョークを振りまくトニー・スタークの楽しさは健在。
まだまだ産まれたばかりの子供のようなヒーローであるピーターと、トニーの関係性が感じ取れます。

そして

「Hey, everyone. (ヘイ、みんな)」

というカジュアルな一言で登場する高校生らしいピーターの軽さもたまりません!!

ソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオは、さらに2017年にトム・ホランド主演版で『スパイダーマン:ホームカミング』という単独映画をリリースする予定で、そこには複数のMCUキャラクターたちが参戦すると言われています。

そしてなんと、アイアンマンのロバート・ダウニーJr. も登場するという出演契約が成立したことがこの4月に発表されました。

『アイアンマン4』の実現の可能性を否定してきたロバートですが、『シビル・ウォー』の結実によって、『スパイダーマン』リブート作で映画会社の壁を打ち崩し、"逆参戦"。むしろ彼が演じるアイアンマンを見れる機会は、さらに広がったわけです。

~ルッソ兄弟監督への大いなる期待~

アンソニー&ジョーの二人で監督するルッソ兄弟は、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』から、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でも続投を果たしました。日本ではキャプテン・アメリカの知名度は他のマーベル・キャラクターたちよりもやや劣るかもしれないので、『ウィンター・ソルジャー』を観ていない...という方はまだまだ多いでしょう。

しかし、キャプテン・アメリカのシリーズ2作目の『ウィンター・ソルジャー』は、これまでのヒーロー映画とは一線を画し、S.H.I.E.L.D. という絶対的な頭脳集団でもある機密組織の内部に起きた政治スリラー劇としてMCUの作品群の中でも「傑作!」と讃えられています
この集団の"分裂"を巧みな語り口で撮り上げたルッソ兄弟の手腕が評価され、次にスーパーヒーローたちの友情の"致命的な分裂"を描く『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に起用されたことは、当然と言えるのです。

 

そしてさらに!!

MCUの「フェイズ1」、「フェイズ2」、そして「フェイズ3」(Phase:変化の段階、期間)の作品群の締めくくりとなり、これまで登場してきたほとんどのキャラクターたちが再び結集し、アベンジャーズの最大の宿敵となる「サノス(ジョシュ・ブローリンが演じる)」と激突する集大成の映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー Part 1 & Part 2』の2本の映画も、ルッソ兄弟監督が手がけることがすでに決定しています。

ここには『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラットや『マイティ・ソー』のクリス・へムズワースらの出演がすでに発表されています。他のアベンジャーズやガーディアンズも当然、参戦するはず!
『デアデビル』などの人気ネット配信ドラマのキャラクターも、ひょっとするとクロスオーバーさせる(!?)可能性の噂もささやかれています。ということは、どこかの時点でテレビドラマ『エージェント・オブ・シールド』のコールソン捜査官(クラーク・グレッグが演じる)も映画スクリーンでの再登板となるのか...???

とにかく、『Part 1』が2018年、『Part 2』が2019年にそれぞれ公開が決定していますが、それまでにはまだまだ時間がある...

だから、間に合うのです!!

このコラムでは、極力ネタバレは避けました。

是非、今からでも、

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』

少なくともこの2本はご覧になって下さい。

"キャップ"の70年を超える恋愛の行方は? これから先、誰かを新たに愛せるのか?
"ウィンター・ソルジャー"とは何者か? 何処にいるのか?

それを踏まえて観れば『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ Captain America: Civil War』

を10倍も20倍も、楽しめるでしょう。

そして、お時間の許す方は、

『アイアンマン』
『アベンジャーズ』
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』

もご覧になって下さい。

『シビル・ウォー』で激突するのは、チーム・キャップとチーム・アイアンマンに分かれたヒーローたちの主義と主義です。

《理想》を胸に、心の赴くままに行動する、
自分の身を犠牲にしてでも誰かを守る...

その信念を守るキャプテン・アメリカ/スティーヴ・ロジャーズ

VS

《技術》を確立し、理性とルールを重んじ、現実的なシステムで平和を築く...

その信念をもとに行動するアイアンマン/トニー・スターク

が、対立の構図です。

この対立に向けた数々の布石は、『アベンジャーズ』と『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の2作の中でしっかりと敷かれています

この2本も観ておけば『シビル・ウォー』を50倍は、面白く観れるはず。

そしてさらに、これまでのMCU 12本の作品群をすべて観ておけば、『シビル・ウォー』のみならず、ここから脈々と続いていく、創造性と技術の結集が生み出す「ユニバース:世界・宇宙」を

100倍、200倍と、楽しんでいくことができるでしょう。

 

※ 今回のコラムは緊急特別編でしたが、次回『初心者にもわかる! マーベル・ユニバースの英語<Vol.7>』では、『シビル・ウォー』までに至った、スティーヴ・ロジャーズとトニー・スタークの対立の布石の会話の数々を取り上げます。

どうぞお楽しみに!!

Photo:『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 (C)2016 Marvel. アイアンマン役のロバート・ダウニーJr. (C)Hanako Sato/www.HollywoodNewsWire.net キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンス (C)Izumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net ニック・フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン (C)Kazuki Hirata/www.HollywoodNewsWire.net (左から)ブラック・パンサー、アイアンマン、ウォー・マシーン (C)2016 Marvel. (左から)アイアンマンとウィンター・ソルジャー (C)2016 Marvel. スパイダーマン (C)2016 Marvel. アンソニー&ジョー・ルッソ監督 (C)Izumi Hasegawa/www.HollywoodNewsWire.net 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 (C)2016 Marvel.