米国のコメディ専門チャンネル、コメディ・セントラルで、かつてない異色のトーク番組がスタートした。コメディ・セントラルといえば、ジョン・スチュワート司会の『ザ・デイリー・ショー』、スティーヴン・コルベア司会の『コルベア・リポート』、アニメ『サウスパーク』など、鋭い風刺で広く支持を集めてきた放送局。
そんな彼らが新たに手掛けた『ザ・ゴアバーガー・ショー(The Gorburger Show with T.J.Miller)』は、宇宙怪獣ゴアバーガーが地球(なんと日本!)のテレビ局を乗っ取り、番組スタッフたちに襲いかかって、ブラックジョーク満載の型破りなトーク番組の放送を始めてしまうという設定。毎週、バラエティに富んだセレブや音楽ゲストを招き、笑いを繰り出す。
主演のT・J・ミラーが「自分にとって情熱のプロジェクト」と語る本作は、ウェブ・シリーズから企画をスタートさせ(※そのウェブ版には、『スクール・オブ・ロック』のジャック・ブラックもゲストとして登場)、そこから5年の歳月を経て、2015年にケーブル局のHBOでパイロット版の制作にこぎ着け、その前代未聞の作風にコメディ・セントラルが注目し、シリーズ化の権利を獲得。2017年についに第1シーズン(全8エピソード)として全米ネットワークで放送を開始した。
怪獣ゴアバーガーの声を担当するのは、今が旬のコメディアン&俳優のT・J・ミラー。映画『デッドプール』のウィーゼル役のほか、『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ロック・オブ・エイジズ』『シリコンバレー』に出演。アニメ『ベイマックス』のフレッド役、『ヒックとドラゴン』のタフナット役で声優としても人気を博し、今後はスティーヴン・スピルバーグ監督の『Ready Player One(原題)』が控えている。
T・Jはスタジオ収録時、ゴアバーガーの声をすべてライヴで当て、ゲストたちと多彩なトークを展開する。"宇宙から来た怪獣"として次々とアドリブで想定外の質問を繰り出すため、ゲストの意外な面を引き出し、笑いを巻き起こす。演じるだけでなくパペットの表情を彼自身がリモート操作していることで、ゲストは本当に怪獣と会話しているような錯覚に陥り、かなり過激な質問にもついつい本音で答えてしまう。
番組に登場するのは、ゴアバーガーとゲスト、そして番組を乗っ取られた設定のスタッフたち。シーズンを通してレギュラーを務める主要キャストが司会のT・J(怪獣)と日本人俳優たちだけという、トーク番組としてもコメディ番組としても初の試みとなっている。
出演は、T・J・ミラー、ザ・トーキョー・フィーバー(川村ちひろ&Tsubee U)、
『ベイマックス』のミズイユミ、『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』のカノメマサ、『LOVE』の米本学仁、『エージェント・オブ・シールド』の尾崎英二郎、『ニュースルーム』の春名あみ、平川貴彬、村上ミンチ、岩崎七生、飯塚吉夫(スタント)。ゲストは、有名司会者のラリー・キング、グラミー賞受賞アーティストのケニー・G、『シリコンバレー』のザック・ウッズ、『Ballers/ボウラーズ』のロブ・コードリー、コメディアン&ミュージシャンのレジー・ワッツなど。
~出演者コメント~
目次
【#1】奇抜な発明品でゴアバーガーを驚かせるコーナー担当の発明家カズキ役の米本学仁
■T・J・ミラーとの共演について
自分が出演する前のウェブシリーズ版『ゴアバーガー』の頃は、まだ誰もが知るようなスターではなかったT・Jでしたが、コメディ・セントラルでテレビシリーズ版が放送開始する今は大スターの仲間入りを果たしています。でありながら、スタッフ、共演者と一緒に撮影の合間にもゲームで大盛り上がりするような、彼の気さくなところが現場の空気を作り出していると思います。
ゴアバーガーのコメディはほぼインプロ(即興)で産み出されるのですが、T・Jのコメディは目の前で新しい言葉やスラングが誕生するのを目撃してるような現場で、自分の出番以外の撮影を見学していても笑いをこらえるのに必死でした。そんなT・Jと同じシーンをともに演じることができるのは俳優として素晴らしい経験だし、誰もいない廊下で二人でピンボールのスコアを競い合うのも、子どもの頃に友達とゲームセンターに行った時のようなかけがえのない時間となりました。
■監督やスタッフ、日本人キャストの印象について
監督でありクリエイターを務めるディレクター・ブラザーズのジョシュ(・マーティン)とライアン(・マクニーリー)は、その場その場に漂う、生の面白さを捕まえて最大化することができる素晴らしい才能の持ち主です。私個人的には、自分で面白くしようと狙うのではなくて、彼らが自分という素材を美味しく料理してくれることを信じ切って、まな板の上の鯛になるばかりでした。
彩り豊かな役者陣を見事に撮影に送り出してくれるヘア、メイク、衣装、そしてカズキのハチャメチャな発明品を作り出す小道具担当など、素晴らしいスタッフがこの番組には集まっています。パイロット版制作時から(1年後に)20cm近く伸びた私の髪を1mmも切らずに発明家カズキの独特なヘアスタイルを創り出してくれたヘア担当には脱帽です。
出演陣には、よくこんなにチャーミングな人たちを揃えられたな!と驚くほどキャラクター豊かな俳優たちが集結しています。コメディセンスの塊のような面々はもちろん、尾崎英二郎さんのようなシリアスな役を演じることが多い役者さんが、ハチャメチャなコメディを戸惑いを乗り越えてやり切るのは痛快です! また、ウェブシリーズの頃からパイロット、そして今回のコメディ・セントラルでのテレビシリーズ放送まで、常にゴアバーガーとともに発信し続けてきた番組のマスコット的存在である"ザ・トーキョー・フィーバー"のTsubee Uさんと川村ちひろさんの今作への深い愛から、自分もエネルギーをもらえたことは本当に有り難かったです。
■番組に起用されたことへの思いや抱負
どんな番組に起用されたとしても、それは自分にとって最大級の「アイ・ラブ・ユー」だと思っております。「他の誰でもない!」「あなたが欲しい!」と言われているような。これはかなりぶっ飛んだコメディ作品ですが、そのクレイジーな愛情を受けながら発明家カズキとして命の限り、目一杯花を咲かせたいと思っております。実際、シリーズ中、何度も死んでしまいますが、怖がらずカズキはまたかえってくると信じて楽しんで頂ければ嬉しいです。そしてシーズン2に繋がれば、これ以上のことはありません!
【#2】ゴアバーガーの襲来にも生き残るカメラマンや、キーボード奏者など、複数のキャラクターを演じる尾崎英二郎
■希有なトーク番組の誕生について
アメリカのテレビ界は、夜遅くに放送するセレブや音楽ゲストを招くトーク番組がおなじみです。ジミー・キメルやジミー・ファロンやジェームズ・コーデンらの人気のショーが立ち並ぶ中、怪獣がMCを務めるという、規格外のコンセプトがまず面白いと思いました。しかも、宇宙から来たエイリアン・モンスターに征服されてしまった日本の情報番組の出演者やスタッフの役に、全員日本人俳優を配したことも画期的です。(英語字幕を付ける形で)日本語のセリフもバンバンと当たり前のように飛び交いますから。80~90年代には生まれ得なかった発想と布陣だと思います。アクションシーンのスタントマンに至るまで、日本人演者の起用にこだわってくれているんですよ。脚本家たちは日本の情報番組やバラエティやゲーム番組をしっかり観て研究していて、一見、荒唐無稽な番組に見えますが、実は非常に丁寧に作り込まれたパロディでもあります。
米国では「怪獣」というキャラクターが本当に愛されているのだなとも感じますね。ゴアバーガーは真っ青な身体ではありますが、顔がやや怖くて不細工な感じは、日本の「ウルトラシリーズ」のガラモンやピグモンを彷彿とさせますし、毛むくじゃらの姿は「ポンキッキ」のムックや「できるかな」のゴン太くんを思い出させます。番組全体がレトロなテレビ映像の感じにこだわって仕上げられているのも、クリエイターたちが親しんだテレビの時代への愛情の表れなのだと思います。
ゴアバーガーは肉食だそうで、人間を襲うので恐ろしいはずのキャラクターなのですが、とにかく発言が笑えて、宇宙から来た天然さも多々あって、だんだん視聴者もその強い刺激に慣れてしまうようで、意外な人気があります。
■いくつものキャラクターを演じる試みについて
この番組は、『サタデー・ナイト・ライヴ』のコメディ・スキット(コント部分)のように、一人の俳優がいくつもの役を演じ分ける形で撮影されました。僕が、全8エピソードの中で演じた役柄は、5つほどありました。異なる役柄のシーンの度に、T・Jが放つ閃き的な言葉に反応することが本当に大変でした。何より、T・Jが怪獣として荒々しい声色で演じているので、聴き取るだけでも必死なんです(笑)
監督たちの演出のスピードも速く、演じる直前に渡された英語セリフを懸命に覚え込んだと思ったら、「次のテイクは日本語にできる?」って言われたり。そこで即、日本語に切り替えて演じるんです。なかなかハードな撮影でしたが、米国コメディのライヴ感覚を大切にしながら作る姿勢を体感したのはいい経験でした。
深夜0時にスタートする番組だけあって、血みどろのバイオレンスあり、過激な下ネタあり、挑発的な人類への風刺ありと、初めて目にする方はびっくりされると思いますが、米国ではカルト的なコメディ&音楽ファンに支持されているこの番組を是非、笑い飛ばしながら観ていただければと思います。
■深夜帯のコメディ番組に挑んだ理由
これまでコメディドラマやシットコムに出演させていただいたことはありましたが、本作はまったく毛色の違う番組ですし、とにかくT・J・ミラーという、今、旬のコメディ俳優の仕事に触れてみたかったのが動機でした。日本でも『デッドプール』が大ヒットしましたが、彼は昨年の米国のクリティックス・チョイス・アワード(放送映画批評家協会賞)の司会にも起用された人で、破天荒で怖いもの知らずのお笑いセンスが売りです。この作品は多くの方に観ていただきたいですが、内容的には完全に"R指定"のノリです。お子様には絶対見せられない類いのコメディです。そんな作風で、しかも舞台設定が日本、登場するキャラクターたちも日本人だなんていう作品は米国製作の番組では滅多に無い例なので、これは思いきってやってみよう、と飛び込んでみました。これまで映画やドラマで演じてきた役柄のイメージとは真逆に、振り子を振り切って演じています。真夜中に視聴者が笑い転げてくれたらいいですね。
Photo:『The Gorburger Show with T.J.Miller』