推理作家コリン・デクスターが生んだキャラクターで、ミステリーの本場イギリスでシャーロック・ホームズを凌ぐ人気を誇る「モース警部」。そんな彼の若き日の活躍を描く大ヒットドラマ『刑事モース~オックスフォード事件簿~』のキャストインタビューを2回に分けてお届けしよう。エンデバー・モース役のショーン・エヴァンスに続いて今回登場するのは、モースを支える上司、フレッド・サーズデイ警部補役のロジャー・アラム。モースとサーズデイの関係や、撮影現場の様子について語ってくれた。
――サーズデイとはどんな人物ですか?
彼は警部補だ。モースにとって直属の上司ではないがね。サーズデイはモースに自分の手足となってほしいんだ。彼はロンドンのイーストエンド出身で、第二次大戦の前から警官だった。その後、戦火を経験した世代なんだよ。
――サーズデイがいい警官である秘訣とは?
ものの見方にあるだろうね。戦争経験は、彼に善悪に対する鋭い感覚を植え付けることになった。彼は正しいことのためなら、時にはルールを曲げることもいとわない。想像力に関しては、モースほどではないけど、全く欠如しているわけでもない。サーズデイが優れているのは統率力だ。戦時中に下士官に過ぎなかった彼は、上官に対して軽蔑の念を抱くとともに、人を導く能力を身に着けたんだ。
――この役を手にした経緯を教えてください。
台詞を読んで、役を手にしたんだよ。とはいえ、サーズデイのことはすぐに気に入った。彼の世代についてはよく知っていたからね。学生時代に教わった教師たちは、従軍経験があり、それを引きずりながらも何も語らない人たちだったんだ。だが、私自身もそんなに彼らと違うわけでもない。家で静かに家族と過ごすのが好きだからね。
――サーズデイとご自身の共通点は?
私自身は警察官ではないし、戦争に行った経験もない。だが、サーズデイには尊敬の念を抱いているし、共鳴するものを感じているよ。
――あまり共通点がない中でどのように役作りを行ったのですか?
演じる上で毎回やっていることだが、キャラクターに命を吹き込むためにリサーチを行った。そして、リサーチしきれなかった部分については、想像力を働かせている。サーズデイを演じるために人生を捧げていると言える。これまで経験したことがないほど多くの時間を、この役のために投じているからね。彼について好きなところの一つが、自分の両親と似た背景を持った人間であること。戦争を経験した世代で、アッパーミドルクラス(上位中流階級)の役はこれまであまり演じたことがなかったから。
――彼はモースの中にどんな才能を見出しているのでしょう?
一見するとバラバラな物事の数々に関連性を見出し、つなぎ合わせる想像力だ。そしてモースは汚職警官になるタイプじゃない。これはサーズデイにとって重要なポイントだ。彼自身が賄賂を受け取らない人間だからね。そして、モースに対して父性的な気持ちもある。サーズデイにとってモースはある意味、見守るべき子どものような存在なんだ。感受性が強く、高潔で、傷を抱えながらも、自分にできることをやり続けているサーズデイの姿は視聴者にも伝わると思う。尊敬すべき人物だと思ってもらえるだろう。
――撮影現場はいかがですか?
チームが優秀なので、非常にうまくいっている。モース役のショーン(・エヴァンス)とはすごく仲が良いし、(ブライト警視正役の)アントン・レッサーとは長い付き合いだしね。
――本作に英国ドラマの典型的な要素はありますか?
まず、希望に満ちあふれていない点は非常に英国的だ!(笑) ちょっと哀愁を帯びた視点で、サーズデイやモースは日々犯罪が起きる世界で奮闘している。これは希望に満ち、キラキラしたアメリカドラマの作風とは別物だろうね。
――ご自身が仕事モードから脱する方法は?
グラス一杯の赤ワインを飲むこと。あとは、料理をすることが多いかな。
――本作に出演したことでオックスフォードに詳しくなったのでは?
撮影中の自由時間はあまりないから、ロケ地については少しずつ知っているところだ。一つのエピソードの撮影期間は23日くらいで、そのうち2日から5日くらいの時間をオックスフォードで過ごしている。つまり、一つのシリーズを作るのに20週間くらい撮影を行うから、他の仕事を行う余地は十分あるわけだ。とはいえ、長期にわたる仕事はやらないようにしている。ちょっとの期間だけ家を空けるのは構わないが、家族と長い間離れたくないからね。
Photo:
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』
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