『ウォーキング・デッド』で事故死したスタントの遺族がAMCを訴える

昨年の夏、大ヒットドラマ『ウォーキング・デッド』の撮影現場でスタントを務めていたジョン・バーネッカーがセットから落下して死亡してしまうという悲しい事故が起きたことは当サイトでもお伝えした通りだが、このほど遺族が放送局の米AMCに対し訴訟を起こしたことが分かった。

米Varietyによれば、ジョンの母スーザンさんはAMCがスタントの予算削減のために安全性を考慮しなかったと主張しているという。事故が起きたのは昨年7月12日。ジョージア州アトランタでシーズン8の撮影を行っていたジョンは、30フィート(約9メートル)の高さから転落。その場にいた目撃者の話によると、バルコニーから落ちる戦闘シーンのリハーサルで、バランスを崩した彼はコンクリートの床に激突し、激しく頭部を強打。直ちにアトランタ・メディカルセンターに搬送されて集中治療を受けていたが脳死状態に陥り、のちに死亡した。

スーザンさんは、AMCがバルコニーの下に適切なクッションを用意せず、しっかりとした予行演習を行うこともしなかった上、前もって現場に救急車を待機させておかなかったと主張。「AMCは、『ウォーキング・デッド』の撮影で安価で安全性を欠いた方法を採っていました。その一環として、彼らは制作会社のStalwart Filmsに対し、スタント用に割り当てられたお金を含め、不当に低い予算を維持するように圧力をかけていました。したがって、『ウォーキング・デッド』の制作は安全上の予防措置で手が抜かれていました」と訴えている。これを受けてAMCは声明を発表し、安全性については極めて真剣に考え、業界の基準に則っていると主張している。

今回の訴訟では、AMCのほか、Stalwart Films、当該エピソードのスタントコーディネーターであるモンティ・シモンズ、監督のラリー・テン、製作総指揮者のトム・ルーズ、第1助監督のジェフリー・ジャニュアリー、第2助監督のマシュー・グッドウィン、そして事故当時にジョンと共演していたドワイト役のオースティン・アメリオらも訴えられている。

ジョンの死を受けて1月上旬、労働安全衛生管理局OSHA(オーシャ)はStalwart Filmsに、"雇用者を落下の危険から守ることができなかった"として最大級の罰金となる12,675ドル(約140万円)の支払いを命じていた。しかしスーザンさんは、「50万ドル(約5600万円)なら注意を引くことができたかもしれません。しかし、今回提示された罰金の額では誰も気にかけはしません」と、わずかな罰金では安全性の欠如が叫ばれるスタントの環境改善には繋がらないと主張していた。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ウォーキング・デッド』
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