【海外ドラマ入門】日本でも大人気!超大作『ウォーキング・デッド』のススメ

『ウォーキング・デッド』は2010年から放送されているアメリカのTVドラマ。タイトルからも分かる通り、この作品を一言で表現するならばゾンビがはびこる世界を舞台にしたサバイバルストーリーということになりますが、「単なるゾンビものか」と決めつけるのは早計。既存のゾンビものとは一線を画す作品であり、極めて完成度の高いドラマが展開されていることは、世界中に多くの熱狂的ファンが存在している事実からも明らか。そんな『ウォーキング・テッド』の魅力に迫っていきましょう。

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◆ドラマ化したのは『ショーシャンクの空に』の監督

『ウォーキング・デッド』はゾンビに支配された世界で安住の地を求めてさまよう人々の姿を描いたサバイバルホラーです。原作はグラフィックノベルと呼ばれるコミック作品であり、第1作が発表されたのは2003年。それを『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』といった感動作の監督として知られるフランク・ダラボンが企画・発案、『エイリアン』『ターミネーター』といったサスペンス色の強い人気シリーズを手掛けてきたゲイル・アン・ハードが製作総指揮を務め、2010年よりケーブルチャンネルのAMCで放送がスタート。その中で繰り広げられる極限のドラマはたちまち視聴者の注目を集め、現在はシーズン8が放送中、シーズン9の製作もすでに決定しています。

キャストは、主人公リック・グライムズ役にアンドリュー・リンカーン、その息子カール役にチャンドラー・リッグス、荒くれ者ながらいざという時に頼りになるダリル・ディクソン役に映画『処刑人』で知られるノーマン・リーダスなど。ダラボン監督作『ミスト』に出演したメリッサ・マクブライドとジェフリー・デマンも名を連ねています。どちらかというと日本では無名な俳優が多いのですが、主演のアンドリューをはじめとしてその演技力は確か。本作の魅力の一つである登場人物たちの個性豊かなキャラクター性が確立できたのも、出演者の熱演があればこそでしょう。

◆目覚めたら世界は一変していた...

物語は、銃で撃たれて昏睡状態に陥っていた保安官代理のリックが病院で目を覚ますところから始まります。自分が治療のために入院していることは理解したものの、周囲に人の気配がない上に病室の花はすっかり枯れており、病院を探索すると無残な死体が転がっています。外に出ても異常な状況は同じで、街はゴーストタウンそのもの。急いで自宅に帰ってみても家族の姿はどこにもなく、リックは途方に暮れます。

そんな時、彼は黒人の少年に襲われるものの、その父親が割って入ってくれたおかげで九死に一生を得ます。父親は、死者がウォーカーと呼ばれる怪物となって甦ると人々を襲い、彼らに噛まれた人間は高熱を出したのちに自らもウォーカーになるのだとリックに説明します。少年が襲ったのもリックをウォーカーと勘違いしたからでした。

ウォーカーによってアメリカの社会秩序は崩壊寸前となっていますが、それでも軍に守られた避難所がアトランタにあると聞いたリックは、妻子がそこに逃げ込んでいるかもしれないと考えてその地を目指します。こうして、リックは終末を迎えようとしている世界で多くの仲間と出会い、彼らと共に極限のサバイバルを繰り広げることになるのです。

◆ゾンビはあくまで"添え物"

『ウォーキング・デッド』は世界中で高い人気を博している一方、今まで散々作られてきたゾンビ映画の亜流に過ぎないと考えられることも少なくありません。しかし、この作品の主軸はあくまでも個性的な登場人物が織り成す人間ドラマ。ゾンビが登場するシーンはたっぷりありますが、それらは濃密な人間ドラマを成立させるための副次的要素でしかありません。社会秩序が破壊されて極限状態に陥った時、人々はどのような行動を取り、いかにして人間としての尊厳を守り抜くのかといったテーマこそがこの作品の醍醐味。また、ゾンビという極めて非現実的な存在を扱いながらも、描かれている世界にリアリティが感じられる点も高評価を得ている重要なポイント。「もしかしたら実際に起こりうるかも」と感じさせるだけのリアリティに満ちていることが劇中のサスペンスを盛り上げ、視聴者を釘づけにしているのです。

◆予想外の展開の連続で娯楽性はバッチリ

個性的で魅力にあふれた登場人物、一見現実離れしていながらもリアリティを感じさせる世界観と共に、秀逸なストーリー展開も人気を支える重要な要素。2時間前後で完結する映画ならともかく、シリーズを重ねる人気ドラマでひたすらゾンビとの戦いに明け暮れていたのではどうしてもワンパターンになってしまいます。かといって、グループ内の人間関係だけを掘り下げていても冗長になるばかりです。

この作品ではそうした問題点を巧みに回避。おなじみとなっていたキャラクターがゾンビに襲われて命を落としたり、別のグループと合流して新たな人間関係を形成したりと、常に先の読めない展開が用意されています。お気に入りのキャラが死んでしまうのはとても悲しいことですが、すぐに気になる新顔を登場させたり、意外な展開に持っていったりすることで、興味を引き続ける作りになっています。また、いくら人気の登場人物であっても死んでしまう可能性があることは、サバイバルホラーとしての緊張感を否応なしに高めてくれます。予定調和を極力廃した脚本によって予想外の展開が次々起こるため、気がつけば画面から目が離せない状態になっているというわけです。

また、ストーリーが進むほど、"人間VSゾンビ"から"人間VS人間"へとシフトしていき、しかも悪役がどんどん強大になっていきます。これも展開のマンネリ化を回避する一手。次はどんな敵が出てくるのか、強大な敵をどうやって倒すのかといった点に焦点を当て、娯楽作品としての厚みを持たせているのです。

説明してきた通り、『ウォーキング・デッド』は単純なサバイバルホラーではなく、娯楽作品としての様々な要素が高いレベルで融合し合った傑作。老若男女から高い評価を得ており、見れば必ずハマるとまで言われているのも納得なのです。食わず嫌いで敬遠していた人はこの機会にチャレンジしてみてはいかがでしょう。特に、長大な連続ドラマをじっくりと楽しみたい人には必見の作品です。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ウォーキング・デッド』
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