『ジーニアス』シーズン2はピカソが題材に!自由と女性、天才の個性をアントニオ・バンデラスが熱演

スペインが生んだ美の巨匠、パブロ・ピカソ。類い稀なる絵画の才能に恵まれた天才画家だが、女性には少々だらしなかったことや、若い時分には相当な頑固者であったことなどはそう広くは知られていない。天才たちの人生を、人間性に満ちたありのままの姿で綴るTVドラマが『ジーニアス』だ。4月24日(火)からアメリカでの放送が始まったシーズン2は、好評だった第1段のアインシュタインに続き、ピカソを特集する。

生意気だったピカソが「ゲルニカ」を生むまで

本作は比較的史実に忠実な構成になっているため、ピカソがどのようにしてその天才性を開花させたのかをありのままに追体験することができる。実際に起きた逸話が挿入されていたり、時間と場所が字幕で説明されたりするなど、事実の正確性には相当な注意が払われている。

場面進行はややトリッキーで、アーティストとして大成してからのピカソと美術学生時代の当人が、交互に登場する形式。2つの時代を行き来することで、一流画家の名声を手にした当人と、独りよがりで強情な美術学生だった当時とが対比される。

シーズン前半は大作「ゲルニカ」の制作過程に迫る。1938年のパリ万博でスペイン・パビリオンに展示され一躍有名となった絵画だが、実はピカソは制作依頼を一度断っている。当時のナチス台頭を受け、ピカソは巨大な反戦の壁画制作を依頼される。芸術に戦争を止める力はないと一時は辞退するのだが、母国スペインのゲルニカ村が残虐な襲撃を受けたことにインスピレーションを得て、一気に大作を完成させるのだった。「ゲルニカ」をはじめ、本作に登場する作品はどれもピカソの天才性とうまく結びつける形で紹介されている。

天才性の象徴

本作はピカソの人間性を余すところなく取り上げている。偉大な画家ピカソを象徴する個性は、自由へのこだわりと、女性関係だ。本作はその人間味溢れる個性を余すところなく取り上げている。

シーズン前半では自由にまつわるセリフが多用されている。バラが自由に育つようにと、庭師に切らないように注文をつけるシーンは非常に象徴的。なお、ピカソの父親は美術教師であり、伝統的な技法を尊重する保守的な教育を行っていた。旧来の型にこだわらないピカソの発想は、父への反発心によるものかもしれない。

さて、もう一つの個性である恋の多さについては、2度の結婚を経験したほか、複数の愛人がいるという自由奔放さを持っている。本作では事実に多少の脚色を加えることで、女性問題も創作のエネルギーの源になっていたという形で描かれる。「ゲルニカ」の制作中に、アトリエで愛人のドーラとマリーは取っ組み合いを始める。この史実を脚色し、発想の壁にぶつかっていたピカソが口論にヒントを得て、したり顔でキャンバスに戻るという一幕を加えることで、見応えのあるシーンに仕上がっている。

素晴らしいキャスト 脚本は改善の余地

アインシュタインを扱った前シーズンはエミー賞10部門にノミネートされ、ナショナルジオグラフィックチャンネルの歴史物としては異例の注目を集めた。今シーズンについては、良い評価と苦言の両方が聞かれる状況だ。

米New York Timesは、前述のように史実に忠実なつくりを評価している。ピカソの人生をざっと知りたい人は楽しめるのではないかとの意見だ。

米San Francisco Chronicleは、ピカソ役のアントニオ・バンデラス、青年時代のピカソ役のアレックス・リッチともに、シーンを問わず説得力のある名演技で存在感を放っていると讃える。ただし脚本に難があり、セリフが説教じみていると指摘。また、前述のように時間を往き来する構成には混乱させられたという。

米Varietyでも同様に、キャストは素晴らしいとしている。しかし話数を数えるにつれピカソ自身からその友人たちに焦点が移ってしまっており、一人の天才にフォーカスできていない点は残念だとしている。ピカソ本人のパートについては、欠点と天才性を併せ持つ一人の人間として描いている点で見事だとの評価。天才の意外な一面に興味を持てた方は必見のシリーズだ。(海外ドラマNAVI)

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