歌手で女優のセレーナ・ゴメスが原作と出会い、6年以上の歳月をかけ、自らが製作総指揮として映像化を実現させたNetflixオリジナルシリーズ『13の理由』。
5月18日(金)より全世界同時ストリーミングとなるシーズン2では、ハンナの死の余波に揺れながらも、登場人物たちがそれぞれに傷を癒やし、乗り越えようとする複雑な過程が描かれるそうだが、新シリーズ配信前に来日を果たしたクリエイターのブライアン・ヨーキーを直撃インタビュー!
――2011年にユニバーサルが映画化する権利を得てから、Netflixで製作に至るまでかなりの時間がかかったそうですね。映像化までのプロセスを教えてください。
実は詳しいことは知らないんだ。初めは何年も掛けて長編映画を作ろうと動いていたようなんだけど、TVシリーズのほうが構成的に向いているという決断になったということは聞いているよ。
――ということは、ブライアンさんはNetflixで製作が決まってから携われたということでしょうか?
もともとセレーナ・ゴメスと彼女の母親のマンディ・ティーフェイが映画化する権利を持っていて、セレーナがハンナを演じる予定だった。でも、シリーズ化することになって、彼女はプロデュ―サーとして参加することにしたんだ。その時に僕は彼女たちとシリーズについて話し合いをする機会があって、二人と意見がとても合ったんだよ。それでNetflixとパラマウントが製作することになったという流れだよ。
――現場でのセレーナなどんな感じなのでしょうか?
よく現場にも来ていたし、はじめの打ち合わせにも全部出席していたよ。とても忙しい人だけど、常に撮影を確認しに来てくれたよ。セレーナはこのシリーズの"道しるべ"のような存在なんだ。彼女自身の病についても正直に公表しているし、多くのファンが世界中にいるよね。本作を通して、同じような気持ちでいる人たちに「あなたのことを気に掛けているよ」「手を差し伸べているよ」といったことを伝えているから、僕は彼女のことを本当に尊敬しているんだ。
――俳優たちの現場での雰囲気はどのような感じなのですか?
みんなとっても仲が良いよ。若い人同士はもちろんだけど、クレイ役のディラン・ミネットはクレイの父親役のジョシュ・ハミルトンとすごく打ち解けていて、本当の親子みたいなんだ。他の親子役の俳優たちも現場でとてもいい関係を築き上げていたよ。
――今まで主に舞台を手掛けてこられましたが、TVシリーズを製作するうえでの違いや苦労した点は?
舞台の場合、一人で脚本を書くんだけど『13の理由』にはスタッフライターが8人もいるんだ。みんなと一緒に働けるのはとても楽しいけれど、もちろん難しい面もあるよね。同意が得られなかったり...。あとは、技術的な知識も必要になってくるので、彼らが忍耐強くて助かったよ(笑)
――今回は残念ながら来日を果たせなかったハンナ役のキャサリン・ラングフォードは、本作に出るまでほとんどプロとしての経験がなかったんですよね。そんな彼女を起用した理由とは?
ハンナは特別な存在になるとわかっていたんだ。多くの素晴らしい若い女優とオーディションをしたんだけど、なかなか決まらなくてね。脆さもある中で強くなくてはいけない、聡明でユーモアのセンスもあって、クレイが一目惚れするような女の子というのがハンナなんだ。ある日、オーストラリアのパースから、一つの動画が届いたんだ。彼女こそハンナだと思ったんだよ。
――何か特別なものを感じたのですか?
特殊なものだったね。言い表すのが難しいんだけど、彼女の目だったと思うよ。秘密を抱えていて、彼女しか知らないことがいっぱいある。だからこそ、目が大事だったんだ。
――ハンナの自殺シーンですが、あそこまでリアルに表現した意図とは?
ストーリーを語るうえで、正直であるということを念頭に置いていたし、命を絶つという話は初めからわかっているのに、いざそのシーンになって何も映像として見せなかったらある意味、視聴者を裏切ることになるよね。たくさんの話し合いをした上で、そうすることに決めたんだ。あのようなシーンを撮影することは精神的にものすごく痛みを伴うけれども、残された人たちの痛みも感じ取って欲しいと思ったんだ。実際に本当に辛いことだから、正直に、そして責任を持って描いて、その辛さを伝えたかったんだよ。
――今回一緒に来日したディランとアリーシャのキャスティングの理由を教えてください。
アリーシャが演じるジェシカは美人で学校でも人気のある女の子だよね。ただ、あのようなことがあって心に傷を負っているし、複雑な思いを抱えている。チアリーダーとして華やかである彼女だけれど、痛みを抱えていて混乱しているという二つの面を持つ役をアリーシャが的確に表現してくれるんだ。
クレイ役のディランは、あまり顔に表情を出さないほうだし、思っていることや感情をあまり人に話さないタイプだよね。どこにでもいそうな青年だけど、とても興味深いキャラクターなんだ。だから、シリーズを通して色んな表現が出来るという俳優が必要だったんだ。
――きちんとした理由がわからないまま娘を亡くすという難しい役を演じたケイト・ウォルシュとの仕事はいかがでしたか?
彼女は完全にプロの女優で、全力投球でこの役を演じてくれたよ。見た目なんて気にすることなく、彼女の持つ大きな痛みを表現してくれて、全身全霊を役に打ち込んでくれたね。
――本作に携わって、メンタルイルネスについての考えは変わりましたか?
僕は一般的な姿勢でいたから、特に大きく変わったとは言えないかな。本作に対して色んな反響が出ているけど、未だにうつ病やPTSDに対する"恥"というのが色濃く残っていると思うんだ。でも、それは恥じることではないし、手を差し伸べるべきだし、自ら語れるような世界になるべきだよね。「助けが必要だ」と言えるような環境を作っていかないといけないと思うよ。
――現場にセラピードッグがいたと聞きました。
ハンナとブライスのシーンを撮る時の話だね。実際に犬を抱きに来たのは、技術系のスタッフが多かったよ。実はプロデューサーが初めてセラピードッグを提案した時は、みんな笑っていたんだ。でも、現場に犬がいてくれたから心が静まったのは事実だよ。
――いつ頃からシーズン2の製作の話が出ていたのでしょうか?個人的にはハンナと同じ経験をしたジェシカの今後が気になります。
シーズン1の後半になって、クレイやジェシカの今後、ブライスやアレックスはどうなるのかということを僕たちも知りたくなったんだ。みんなキャラクターを愛するようになっていたから、そのくらいから話が出ていたよ。
――話は変わりますが、お好きなTVシリーズを教えて頂けませんか?
うーーーん(考え込んでしまう)。人生で一番好きなもの? それとも今放送中で?
――今放送(配信)中のものでお願いします。
わかったよ。だからといって答えるのが簡単になるわけじゃないけど(笑)じゃあ、両方答えるね。一番好きなTVシリーズは『スター・トレック』シリーズ。僕はSFが大好きなんだ。今やっているものだと...。たくさんあるから答えるのが難しんだけど、選ぶなら『グレイス&フランキー』だね。
――私も大好きですよ!
本当に? 2年前に他界した母がジェーン・フォンダ(グレイス役)とリリー・トムリン(フランキー役)が大好きだったから、彼女たちと一緒に育ったみたいな感覚があるんだ。『グレイス&フランキー』を見ていると、母と過ごしているかのような気分にもなれるんだ。だから、君も好きって言ってくれてとっても嬉しいよ。
世界中で話題沸騰のソーシャルチェーン・ミステリー『13の理由』シーズン2は、5月18日(金)より全世界同時ストリーミング。
Photo:『13の理由』ブライアン・ヨーキー