【ネタばれ】『ウエストワールド』を凌ぐか? 『ヒューマンズ』シーズン3で高評価される深いメッセージ性

人間そっくりのロボットたちが、もしも従順さを捨てたなら――? AIやヒューマノイドなどが反乱を起こすディストピアは、SFの中でも人気を誇る世界観。英Channel 4で放送中のドラマ『ヒューマンズ』シーズン3は、お約束のスリルだけでなく、社会問題を織り込んだ思慮に富んだ内容で視聴者を惹きつけている。

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(※この記事は『ヒューマンズ』シーズン3のネタばれを含みますのでご注意ください)

◆12万人が死亡 憎み合う人間とロボット
人間そっくりの高機能ロボットとして作られた「シンス」と人間の対立がこのドラマのテーマ。シーズン2では、従順だった世界中のシンスたちに自我が芽生え、12万人の人間が死亡する大災害を引き起こしていた。人類はシンスを危険視し、彼らをレイルヤードと呼ばれる地区に隔離する。

弁護士のローラ(キャサリン・パーキンソン)は、そんなシンスの「人権」保護のため立ち上がった一人。激化する人類とシンスの間の憎しみの前に、ときに無力さを感じている。シンス側ではリーダーのマックス(イヴァノ・ジェレマイア)が平和を唱えているものの、人間を赦すことのできない好戦的なシンスが多く手に負えない。

一方、ローラと別居中の夫のジョーはシンスのいない町で暮らしている。シンスという安価な労働力がないため、物価が異常に高騰するという町の現状を鑑みれば、人類がシンスなしに暮らせないことは明らか。技術の進歩により「100%安全」だというオレンジの目をした新型シンスたちが登場するが、果たして彼らは信頼できるのだろうか?

◆無表情の中の表情
ローラ役の主演女優キャサリンは、会社のIT部門を舞台にしたシットコム『ハイっ、こちらIT課』のジェン・バーバー役で名を知られており、その演技の幅の広さには定評がある。

しかし、英Evening Standardは、本作でシンス側の演者をさらに高く評価する。表情をほぼ動かせないという制限の中で、機微を表現する能力が磨かれたのでは、と分析。特に目を引くのがジェンマ・チャンだ。ローラの父が購入したシンスであるミアとして登場するが、彼女は物静かなキャラクターでありつつも、その内面に宿る獰猛さを感じさせる。

彼女の魅力は英Telegraphも取り上げている。ミアとニスカ(エミリー・バーリントン)は逃避行を繰り広げるが、その様子はまるで名作クライム映画『テルマ&ルイーズ』のアンドロイド版さながら。道中で出会うシンスを救いながらロード・トリップを繰り広げる様は、思わず応援したくなってしまう。

◆メッセージ性で『ウエストワールド』を上回る!?
娯楽作品として十分に見応えのある本シリーズだが、加えて、社会的メッセージも込められている。注意深く観れば、あちこちに隠された人権問題の暗喩に気づくだろうと英Guardianは指摘する。シンスたちの居住区レイルヤードがフェンスで境界を囲まれているところは、人間に対して同様のことが起きている中東を想起させる。さらには南アフリカや、隔離政策を行っていた時代のアメリカにも通じるところがあり、人間とシンスが対等に交流できる場であったバーの爆破は、ロンドンのネイル爆弾事件に似ていると記している。こうした深遠な内容から、アメリカのSF大作『ウエストワールド』よりも本作に好感触を抱いているようだ。

Telegraphも『ウエストワールド』と比較し、本作の方が思慮に富んでいると評価。「半分の予算で2倍の感情」を込めた作品だと絶賛している。とはいえ、シリアスで堅苦しいドラマというわけではない。人間に「からかいモードなのか」と茶化され、そのモードはないが将来のアップグレードで対応可能か確認してみる、と返すシンスの妙な律儀さが愛おしい。

『ヒューマンズ』シーズン3は英Channel 4で放送中。日本ではシーズン1と2をHuluで配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ヒューマンズ』シーズン3
(C) Colin Hutton/Kudos/CH4/AMC