思えば、彼はこれまでのキャリアにおいて、しっかりと着実にステップアップをしてきたな...。マット・ズークリーが出演する新作TVドラマの放送が始まると聞いた時、真っ先にそんなことが頭をよぎった。
正統派のイケメンというよりも、どこか陰があり、胸の内に熱いものを秘めているかのような芯の強さを感じさせる容姿に、若き日から大きな注目を寄せていた。気がつけば、彼ももう40歳を超え、キャリアは15年以上、成熟した大人の俳優へと成長を遂げており、時の経つスピードを感じさせるものだ。
しかし15年にも及ぶ俳優人生の中で、主演作というのは僅かなもので、活躍のメインフィールドとしているTVドラマでの主演という経験は一切なかった。そのため、熱心な海外ドラマファンでない限り、彼の名前を聞いて、ピンとくる人はそこまで多くなかっただろう。
そんなマット・ズークリーがこの2018年、TVドラマ初主演を飾り、日本でも広く知られる日がやってくる!
俳優になるまで
マット・チャールズ・ズークリーは、1977年5月20日アメリカ・ニューハンプシャー州マンチェスターで、大学教授の父と家庭教師の母の間に生まれた。高校卒業後に進学したチャールストン大学では歴史と政治学を学び、テニスチームのキャプテンとして活躍。在学中の1998年には"ミスター・チャールストン大学"にも選出された。この頃からすでにカリスマ性に溢れ、学内の注目の的であったことをうかがわせる。
その後、ロースクールへの進学を目指すが上手くいかず、大学の演劇のクラスで、教授よりその才能を見出されたマットは、演技の道を探求することを決意。こうしてマット・ズークリーの俳優としてのキャリアが幕を開けることとなる。
TVドラマへの出演を重ねて
プロとしての俳優デビューは2000年のことだった。1997年から2004年まで放映され、名作の名をほしいままにしてきた大ヒットドラマ『ドーソンズ・クリーク』のスピンオフとして2000年に米WBで放送された『Young Americans(原題)』のレギュラーキャストに抜擢されたのだ。
デビュー作でいきなりブレイクという可能性も十分考えられたものの、作品自体の評価があまりにも低く、8話の放送を経て打ち切りとなってしまう。マットのキャリアスタートは順調とはいかない滑り出しだったものの、これにめげることなく、その後も『フリークス学園』『ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル』『7th Heaven(原題)』『Hack(原題)』といった人気ドラマへのゲスト出演を重ねていく。そして2004年、最初の代表作となるTVドラマへの出演を果たす。
『ギルモア・ガールズ』で人気者に
2000年から放送をスタートさせた『ギルモア・ガールズ』は、アメリカ・コネチカット州の架空の街スターズ・ホロ―で暮らすシングルマザーのローレライ(ローレン・グレアム)とその娘ローリー(アレクシス・ブレデル)の姿を描いた、ファミリー・ドラマ。
マットはそのシーズン5からレギュラーキャストに加わるローガン・ハンツバーガー役に抜擢されたのだ。ローリーが進学したイェール大学の生徒で、新聞部に所属するお金持ちの息子という役どころで登場し、ローリーと惹かれあうようになっていく。
計3シーズンの登場で、ティーン・チョイス・アワードに3度ノミネートを果たすなど、『ギルモア・ガールズ』に登場する男性キャストの中でも特に高い人気を博した。ローガン自体は、シリーズ最終話でローリーにプロポーズするも断られてしまいフェードアウトという結末だったが、ファンの間では印象に残るキャラクターとして認知されている。
『ギルモア・ガールズ』放送終了後まもなく、次なる出演作が決定し、着実にスター街道を歩んでいくこととなる。
『グッド・ワイフ』で実力を証明
2009年放送開始のリーガル・ドラマ『グッド・ワイフ』。ゴールデン・グローブ賞を初めとした数々の受賞歴を誇る同作にて、青年弁護士のケイリー・アゴス役を演じているのが、マット・ズークリーだ。
【関連記事】自分を殺して生きてきた女性必見!の秀作ドラマ 『グッド・ワイフ』レビュー
ハーバード大学法科大学院卒業という華々しい経歴を誇る有望株だが、己の野望のためならどんな手段でも厭わない冷たい印象を与える役柄をクールに熱演。この演技が高く評価され、2010年から2012年まで3年連続でスクリーン・アクターズ・ギルド賞(SAG賞)にノミネート。容姿だけでなく、類まれな演技力を持ち合わせていることを証明してみせた。
全7シーズンへの出演を経て、『ギルモア・ガールズ』リバイバル版である『ギルモア・ガールズ:イヤー・イン・ライフ』へのカムバックも果たしたマットだったが、代表作で演じているのは、主に脇役だった。数多くの作品で実力を証明してきたマットが、今、主演俳優として羽ばたく時を迎えている。
『レジデント 型破りな天才研修医』でTVドラマ初主演!
2018年1月より米FOXで放送中の医療ドラマ『レジデント 型破りな天才研修医』。すでに話題沸騰中の同作に主演しているのが、ほかでもないマット・ズークリーなのだ。現代医療の問題や大病院に蔓延る腐敗を真っ向から描く異色の医療ドラマである同作で、正義感が強く、患者を救うために冷静かつ的確な判断を下す、シニア・レジデントのコンラッド・ホーキンスを演じる。
時には患者の命を救うため、規則をも無視する向こう見ずな性格の持ち主だが、軍医として培った現場レベルのあらゆる技術を持ち合わせ、腐敗に満ち溢れた上層部にも立ち向かっていく型破りで勇敢な医師だ。
これまで様々な作品で幅広い演技を魅せてきたマットの陰のある熱演が非常に活きた役どころであり、鬼気迫る表情で、魅力的なキャラクター像を作り上げているのが印象深い。すでに全米ではシーズン2の製作も決定していることから、今後、キャリア史上最高の代表作となっていくことは間違いなさそうだ。
大ヒット海外ドラマの脇役として存在感を発揮してきたマット・ズークリーの初主演TVドラマ『レジデント 型破りな天才研修医』。非常に気さくで紳士的な性格として知られる彼は、全米では超がつくほどの人気者。本作がきっかけで、日本でも彼のファンが急増するに違いない。
日本よ、これがマット・ズークリーだ!
『レジデント 型破りな天才研修医』
FOXチャンネルで放送中
<字幕版>毎週火曜午後10時 ほか
<二ヶ国語版>毎週水曜午後11時 ほか
(文・zash)
Photo:『ギルモア・ガールズ』© Warner Bros. Entertainment, Inc. マット・ズークリー (C)FAM020/FAMOUS 『グッド・ワイフ』 (C)Everett Collection/amanaimages 『レジデント 型破りな天才研修医』(c)2018 Fox and its related entities. All rights reserved.