Netflix『ナルコス: メキシコ編』麻薬戦争の夜明け、「帝王」と米当局が激突

シーズン2への更新も決定している『ナルコス: メキシコ編』は、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの台頭と破滅を追ったNetflixオリジナルドラマ『ナルコス』を引き継ぐシリーズ。舞台はコロンビアからメキシコに移っている。

『ナルコス』シリーズは、コロンビア編もメキシコ編も、歴史的事実に基づいたノンフィクションドラマ。フィクションや脚色を織り交ぜながらではあるものの、メインの登場人物らは実在の人物である。メキシコの麻薬帝王ミゲル・アンヘルは72歳で、現在は服役中。しかし、彼が呼び込んだ麻薬組織間の抗争は、今もメキシコで進行中である。『ナルコス: メキシコ編』は、そんなメキシコの黒い歴史を描いたシリーズだ。

【関連記事】"メキシコ人として伝えたかった祖国のストーリー"『ナルコス:メキシコ編』ディエゴ・ルナ直撃インタビュー in シンガポール

◆激しい麻薬戦争の序曲

麻薬密売の横行に悩むメキシコ政府は軍事介入に乗り出す。麻薬栽培農家が襲撃され、麻薬畑が政府の手によって焼き払われた。密売人らは教会に逃げ込む。そこへ、州警察を名乗るミゲル(ディエゴ・ルナ)という男が現れるが、実は、彼がアメリカにコカイン、マリファナを輸出して巨額の富をあげるグアダラハラ・カルテルのトップとなり、そしてメキシコ麻薬戦争の帝王となる男だった。

そんな折、アメリカ麻薬取締局(DEA)局員のキキ・カマレナ(マイケル・ペーニャ)が、カリフォルニアからメキシコのグアダラハラの支局に赴任する。メキシコ当局と比べ、米国の捜査当局の捜査は厳しいもので、キキは精力的に捜査を進め、大規模なマリファナ畑を壊滅させる。しかし、その報復として拷問されたのち、殺害されてしまう。そして、DEAとカルテルの戦いに火ぶたが切って落とされたのだった。

◆危険で残虐な犯罪者の持つ人間性

メキシコの麻薬戦争は1980年代から始まり、2000年代後半から激化の一途を辿った。現在は改善されつつあるが、やはり地域によっては世界有数の治安の悪さが問題となっている。

この『ナルコス: メキシコ編』シーズン1は、そのメキシコ麻薬戦争の中心地グアダラハラを拠点とした麻薬カルテルの出現と、そのトップとして君臨したミゲル・アンヘル・フェリクス・ガジャルドを中心に描いている。

史実に沿って作られたシナリオは往々にして、歴史を知っている視聴者には話の先が見えてつまらないものだが、『ナルコス: メキシコ編』はそのような視聴者でも楽しめる、と書くのは米Vulture誌だ。「シーズンの終わりまで見ることで、それが思い違いかどうかわかるだろう」と書き加えてはいるが、最終話まで見ることが前提だとすると、レビューアーのこのドラマに対しての高い評価が伺える。

また、米TV Insiderは、史実ベースのドラマについて、「2種類の視聴者がいる」と語る番組のエグゼクティブ・プロデュ―サー、エリック・ニューマン氏のインタビューを紹介している。それは、「悪人が堕ちていくのを待つタイプと、本当の悪人はいないと信じるタイプ」だという。

ニューマンは「犯罪者を称えるかのように彼らを描いているという批評家の声があるのは知っている」と言うが、「犯罪者たちのキャラクターに人間味を与えたい」だけなのだという。その理由は、「母親から突然怪物が飛び出してくることはないから」と付け加える。そして、その与えられた人間味の部分が、視聴者を惹きつける中毒性のある魅力を作品に与えているのは確実だ。

「これはハッピーエンドではない。それどころか、終わりは全くない」と冒頭のナレーションは言う。現在も続いている麻薬戦争の序章を描く一連の『ナルコス』シリーズでは、撮影先を下見していたメキシコ人スタッフが銃弾を多数撃ち込まれ、蜂の巣状態の遺体で発見されたとの報道もある。まさに、Netflixが体を張って贈るドラマだといえるだろう。

Netflixオリジナルシリーズ『ナルコス: メキシコ編』シーズン1は独占配信中。(海外ドラマNAVI)

 

Photo:Netflixオリジナルシリーズ『ナルコス: メキシコ編』