7シーズン続いた法廷サスペンス『グッド・ワイフ 彼女の評決』の1年後を描いた『グッド・ファイト 華麗なる逆転』。シカゴの弁護士事務所を舞台に、逆境を乗り越え、次々と押し寄せる訴訟問題に立ち向かうダイアンを中心とした女性弁護士たちを力強く描き、全米批評家サイトRotten Tomatoesの評価で驚異の満足度98パーセントのスコアを獲得した本家に勝るとも劣らない人気のドラマだ。
『グッド・ワイフ』でお馴染みのキャストに加え、豪華俳優陣による新キャラクターが登場し、放送当初より話題に上っていた本作。すでにシーズン3までの製作が決定している本作のシーズン1のDVDリリースに先駆け、全米を瞬く間に虜にした『グッド・ファイト』の魅力をご紹介しよう。
ダイアンは、弁護士を辞めて優雅に残りの人生を満喫しようと計画中。一方、裕福な家庭に生まれ育ったお嬢様マイアは、司法試験に受かりこれからの人生を謳歌しようと幸せの絶頂にいた。だが彼女の父親ヘンリー・リンデルが巨額の投資詐欺で逮捕されてしまう。友人だったヘンリーに資産運用を任せていたダイアンも、財産とキャリアを失うはめになる。また財団の理事を勤めていた娘のマイアは、被害者たちから罵倒の的となり人生に絶望する。天国から地獄へと突き落とされた二人は、運良く知り合いの法律事務所に拾われるも、今度は"国"という強大な権力が、再び彼女たちを窮地に追い込んでいく...。
人生のどん底から這い上がっていこうとするダイアンとマイアの底力が描かれるだけでなく、投資詐欺事件やSNS犯罪に加え、トランプ政権がアメリカの人々の日常にいかに影響を及ぼしているのかも語られるタイムリーな話題満載の"今のアメリカ"を目の当たりにできる作品だ。
主人公の一人、マイアを演じるローズ・レスリーは、『ダウントン・アビー』のグウェン役や『ゲーム・オブ・スローンズ』のイグリット役などで知られる注目の若手イギリス人女優。また、ダイアンを演じるクリスティーン・バランスキーは、『グッド・ワイフ』で6年連続エミー賞助演女優賞にノミネートされ、本作ではプロデューサーも務めている。
それでは、お馴染みの顔からニューフェイスまで、本作を彩るキャラクターたちを見てみよう。
■ダイアン・ロックハート(クリスティーン・バランスキー)
ロックハート&ガードナー法律事務所の共同経営者。タフで経験豊富な弁護士。民主党を支持するフェミニスト。マイアの両親の友人で、マイアのゴッドマザーでもあるため小さい頃から彼女をよく知っている。
■マイア・リンデル(ローズ・レスリー)
両親も仲の良い裕福な理想の家庭、リンデル家の純朴な娘。司法試験に受かり、これからキャリアがスタートするというときに、父親が巨額詐欺事件の容疑者として逮捕される。同性愛者でエイミーという彼女がいる。
■ルッカ・クイン(クシュ・ジャンボ)
ダイアンとマイアが拾ってもらえた法律事務所で働いている敏腕弁護士。ダイアンとは知り合い。マイアの置かれた境遇を見て、助けてあげようとする優しい女性。キャリアと恋愛に揺れる一面も。
■コリン・モレロ(ジャスティン・バーサ)
優秀でイケメンの検事。ルッカと法廷で激しく対立するも、個人的には別の感情を抱くようになり、仕事とプライベートの間に立つことになる。
■エイドリアン・ボーズマン(デルロイ・リンドー)
ダイアンとマイアを雇用するアフリカ系従業員しかいない法律事務所の共同経営者。窮地に陥ったダイアンを事務所に受け入れる、懐の深さが魅力。
■バーバラ・コルスタッド(エリカ・タゼル)
エイドリアンと事務所を経営する共同経営者の一人。ダイアンの雇用に反対する。
■マリッサ・ゴールド(サラ・スティール)
政治コンサルタント、イーライ・ゴールドを父に持つ。ダイアンの秘書として事務処理のみならず、調査員業務にも実力を大いに発揮し、ダイアンたちを支える。
■ポール・ギルフォイル(ヘンリー・リンデル)
マイアの父で、ダイアンの資金運用もしていた投資家。詐欺事件の主犯として逮捕されるが、無実を訴える。
■レノア・リンデル(バーナデット・ピータース)
優雅に暮らすマイアの母。夫ヘンリーの逮捕に動揺するも、何か秘密を隠している素振りも。
次に、本作の見どころポイント4つを紹介しよう。
目次
1.『グッド・ワイフ』を全く見たことがなくても100パーセント楽しめる
スピンオフと言われると、「オリジナルを見たことないから、楽しめないかも」と思われるかもしれないが、そんな心配はなく、全くの新作として満足できるドラマだ。勿論、『グッド・ワイフ』ファンからすると、人気絶頂時に終わった同作のキャラクターたちのその後が垣間見られ、懐かしさと新たな興奮で本作を楽しめることは間違いない。本家と比べ、かなり若いマイアという新主要キャラクターの登場だけでなく、ダイアンが事務所も変わって心機一転人生を始めるところから物語が始まるので、それまでのダイアンの過去や事情を十分に知らなくても見応えある作品に仕上がっている。
実際に、『グッド・ファイト』を見てファンになってから、キャラクターの過去を知るために『グッド・ワイフ』を見始めたという視聴者もいるようだ。怒涛の展開のストーリーラインは、本家同様に健在で、見始めたらやめられなくなる中毒性も抜群だ。
2. マイアの成長と大御所ダイアンの底辺から這い上がる姿が魅力
お嬢様で同性愛者の新人弁護士マイアが、実の母レノアよりも頼りにしているダイアンとの関係が非常に面白く描かれている。ダイアンは、優秀でひたむきなマイアに若かりし頃の自分の面影を見て期待をする。そんなマイアが父親のスキャンダルのせいで世の中からバッシングを受けて打ちひしがれている中、ダイアン自身もマイアの父ヘンリーのせいで全財産を失ったにもかかわらず、恨みごと一つ言わずマイアに救いの手を差し伸べる。マイアもまた、自分のキャリアのため、そして救世主のような存在のダイアンに恩返しするかのように奮闘する。
本家『グッド・ワイフ』のアリシアも、専業主婦から弁護士として活躍していったが、マイアの場合、学校を卒業したばかりの20代。キャリアもなければ、人生経験も不足、まして超が付くお嬢様で何の不自由もなく暮らしてきた"子ども"であるため、彼女の成長はアリシアの時のそれよりゆっくりに見えるかもしれない。だが、そこがまたこの作品に若い風を吹き込んでいて新鮮だ。これから法曹界で羽ばたいていこうとするマイアに、ダイアンは部下として様々なノウハウを教えていく。ダイアンを尊敬し、見習い憧れ、日々の逆境に耐えていく芯の強いマイアの成長が上手く描写されている。
3. 本家からと新規の脇を固める豪華俳優陣
『グッド・ワイフ』同様に、本作にも豪華なゲスト名優たちが毎回登場する。オリジナルを見た方からは、歓喜の声が聞こえそうな顔ぶれも! お馴染みのキャラクターとしては、キャリー・プレストン演じる変人ぶりが有名な頭の切れる赤毛の弁護士エルズベス・タシオニ、マシュー・ペリー演じる曲者マイク・クレスティーバ、ゲイリー・コール演じるダイアンの良き夫カート・マクべイなどが登場。
更に、『グッド・ファイト』に現れる個性的な新キャラクターたちに、『ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ』のクリエイターで主演のジョン・キャメロン・ミッチェル、『Glee』スー・シルベスター役のジェーン・リンチ、『グレイスランド 西海岸潜入捜査ファイル』主人公マイク・ウォーレン役のアーロン・トヴェイト、『RENT/レント』マーク・コーエン役アンソニー・ラップなど錚々たる面子がいる。
特に、ジョン演じるド派手な衣装のソーシャリスト、フィリックスや、ジェーン演じるFBIエージェントなど、猛烈なインパクトをはなつキャラクターには釘付けになるだろう。そんな破天荒なキャラクターたちとダイアンやマイア、ルッカらの攻防も圧巻だ。ドラマ、映画好きなら絶叫するような豪華ゲスト陣に毎回ワクワクさせられることは間違いない。
4.トランプ政権発足がもたらす人々への影響がふんだんに語られるストーリー
第1話では、トランプ大統領の就任式のテレビ中継シーンから始まる。民主党のダイアンは、この世の終わりのような面持ちでテレビの前に座って呆然とするのだが、なんとこのシーンは脚本が急遽書き換えられて撮影したもの。製作側は、当時ヒラリー候補の勝利を想定していたため、初の女性大統領就任を喜ぶダイアンの姿を描くことになっていたが、トランプ政権誕生となったため、撮り直しを余儀なくされたのだ。
そんな時代の瞬間を取り入れた本作では、常に「今のアメリカ」がどういう状況にあるのかを上手く組み込んで表現している。父親の巨額詐欺事件のせいで、マイアに関するフェイクニュースさえもメディアを賑わせ、SNSでは衝撃的なヘイトスピーチが横行するという、現実社会でも起きていることがテンポ良く、そして大胆に描かれている。まさに、この作品を通して「今のアメリカ」を目撃することもできるのだ。
スピーディかつ、強烈なキャラクターたちによって語られる今のアメリカ社会で、どん底から脱却しようとする力強い女性たちを描いた『グッド・ファイト 華麗なる逆転』シーズン1のDVD-BOXは、2019年1月9日(水)よりリリース。
公式サイト
(文/Erina Austen)
Photo:『グッド・ファイト 華麗なる逆転』(C)2018 CBS Studios Inc. CBS and related logos are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.