『高い城の男』シーズン4 歴史の「もし」を描くSFスリラー、ついにフィナーレへ

Amazon Prime Videoで配信中の『高い城の男』は、「もしも第二次世界大戦でアメリカが敗戦していたら」という大胆な想定のもと繰り広げられるSF歴史スリラー。西海岸を日本が統治し、東海岸を含むその他大部分がナチスの手に落ちた緊迫の状況下で、シーズン4では黒人たちの反乱軍が第3の勢力として蜂起する。

二つの勢力に支配されたアメリカ

歴史の「もし」を描く本作は、第二次大戦に枢軸国側が勝利した世界を舞台に、強大な勢力による支配と混乱を描く。サンフランシスコを拠点に広く西海岸を支配する日本は、日本太平洋合衆国の建国を宣言し、現地に住む日本人以外への弾圧を強めていた。しかし、そんな現状に疑問を抱いているのが、穏便派の貿易大臣・田上(ケイリー=ヒロユキ・タガワ)だ。東側をむしばむナチスの横暴を食い止めたいジュリアナ(アレクサ・ダヴァロス)とタッグを組み、政府打倒のヒントとなる大量の謎のフィルムの解析に乗り出す。驚くべきことにそのフィルムには、現状とは異なる並行世界の様子が克明に収められていた。

最終章となるシーズン4では、これまでストーリーを牽引してきた田上大臣がある事件に巻き込まれ、表舞台から姿を消すことに。事件の裏を追う木戸警部(ジョエル・デ・ラ・フエンテ)は、急速に力をつけつつある黒人共産反乱軍が関与しているものと見て追及を強めてゆく。一方ジュリアナは、並行世界の悪用を目論むナチスを食い止めるべく、すべてを賭けた一騎討ちを総帥に仕掛けようとしていた。

テンポ向上、さらに観やすく

歴史モノという性質上やむを得ないものの、シーズン1のスタート当初はやや重厚すぎる印象があった本作。しかしフィナーレとなる今シーズンは見事に持ち直しており、米A.V.Club誌はこれまでで最高のシーズンだと評価している。元々米Amazonオリジナルシリーズとしては評価の高かった本作だが、シーズン2の製作中にショーランナーのフランク・スポトニッツ(『X-ファイル』)が突然の降板を発表。製作方針をめぐりAmazon側と食い違いがあったとのことだが、この退陣が契機となってか、作品としての面白さはシーズン2以降一気に加速することとなった。シーズン3では、並行世界とつながるポータルの常識を超えた性質が明らかに。その後継となる今シーズンは、いよいよストーリーの核心に迫ることとなる。

シーズンを重ねるにつれ深みを増すキャラクター像も魅力だ。ジュリアナの宿敵であるナチス親衛隊のジョン・スミス(ルーファス・シーウェル)は、当初はわかりやすい敵役として登場した。しかし昨シーズンまでに徐々に深みのある人物として描かれるようになっている。シーズン3では完全に視聴者の興味の的となっている、と米Vulture誌は表する。人物の掘り下げでますます興味深くなるストーリーに注目したい。

パラレルワールドをめぐる謎

あり得たかもしれないもう一つの歴史世界を主軸にした本作だが、それとは別に並行世界の存在が示されている。二つの世界にはそれぞれ異なる宿命を背負ったキャラクターが存在しており、それらが織りなす複雑な状況もシリーズの特色の一つだ。例としてAV Club誌が挙げるのは、宿敵・ジョンのもう一つの姿。メインストーリーでは大ナチス帝国の中枢である彼だが、ナチスが大戦に勝利しなかった歴史の世界では、一介の保険のセールスマンとして働いている。こちら側の世界でジョンに撃たれたジュリアナが、ワープ先の世界では保険外交員のジョンに命を救われるなど、複雑に入り組んだストーリーが知的好奇心に訴える。

二つの世界を繋ぐポータルは、エピソードが進むにつれきわめてカジュアルに描かれるように。人々はまるで回転ドアをくぐるかのように別の世界を行き来している、とVulture誌は表現。二つの世界の人物同士が出会ってしまったとき一体何が起きるのか。また、夢見ていたナチスのない世界を目の当たりにしたとき、主人公たちが取る行動とは。二つの世界を股にかける物語は、いよいよフィナーレを迎えることとなる。

並行世界の核心に迫る『高い城の男』シーズン4は、Amazon Prime Videoで全4シーズンを配信中。(海外ドラマNAVI)

Photo:Amazon Original『高い城の男』 シーズン4