『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョン・スノウ役でブレイクしたキット・ハリントン。本格的な演技経験は2008年から上演された舞台「戦火の馬」が初めてであり、それからわずか3年でゲーム・オブ・スローンズの大役に抜擢されたことになる。卓越した演技力でファンを虜にする彼の生い立ちと出演作品をご紹介したい。
由緒ある家系に生まれる
1986年のクリスマスの翌日、キット・ハリントンはロンドンで生を受ける。元脚本家の母とビジネスマンである父の家に生まれ、16世紀の劇作家クリストファー・マーロウのファーストネームにちなんでキットと名付けられた。家系図を8代ほどさかのぼれば、17世紀にイングランド・スコットランド・アイルランドを統治したチャールズ2世にたどり着く。また父方の家系も貴族の血筋を引いている。
11歳になると家族に連れられ、ロンドンとリバプールの中ほどに位置するウスターシャーに引っ越す。中学時代に「ゴドーを待ちながら」の舞台を見ており、この頃から芝居に興味を持ち始めたようだ。構内の複数の発表会に参加しているほか、その後進学した高校ではドラマと演劇を修めている。ベン・ウィショー出演のハムレットを鑑賞して感銘を受けた彼は18歳でロンドンに戻り、著名演劇学校で基礎を学んだのち2008年に卒業している。
ゲーム・オブ・スローンズで人気に火が付く
ドラマ作品での代表作は、何といっても『ゲーム・オブ・スローンズ』だ。ジョージ・R・R・マーティンによる大ヒット小説「氷と炎の歌」シリーズを映像化した、中世ヨーロッパ風の重厚な世界観で彩られた本格ファンタジー大作だ。究極の玉座をめぐり7つの王国が血生臭い争いを繰り広げるなか、魔法やドラゴン、そしてさまざまな種族の人間が画面をにぎわせ、空想の世界へと視聴者を誘う。
キットは視点人物であるジョン・スノウ役として実質的な主演を務め、シリーズを通じて圧倒的な存在感を示した。物語冒頭でこそ出生にまつわる劣等感を漂わせていたものの、自らの能力と責任を果たせるポジションを見つけ、頼りがいのある主体的な人物へと変貌する。圧倒的な力を持ちながらも地位や名声を追い求めることなく、いつも弱き者やのけ者などに寄り添う姿が魅力的だ。ちなみにキットは2018年に結婚している。お相手はシーズン3からイグリット役で出演し、作中でジョン・スノウと恋人関係に発展する元共演者のローズ・レスリー。結果的にキットの実生活にも影響を及ぼした『ゲーム・オブ・スローンズ』は、Hulu、Amazon Prime Video (シリーズ8のみPrime対象外) で視聴可能だ。
映画にも多数出演
『ゲーム・オブ・スローンズ』人気もさることながら、映画作品でもキットの力強い演技が冴え渡る。2014年に公開された主演作品『ポンペイ』は、火山の噴火で街全体が一瞬で灰に埋れてしまったという、実際に起きた歴史上の悲劇を描く。キットが演じるのは、誇り高きグラディエーターのマイロだ。大災害が迫るなか、愛する女性との真の愛を証明すべく、生命を賭けた決闘に臨む。Amazon Prime Video、Hulu、Netflixで配信中だ。
危機とラブロマンスを交互に描く作品としては、戦争映画『戦場からのラブレター』にも出演。身分の差を乗り越えて若き女性との恋を実らせるが、折しも世界は第一次世界大戦へと突入。キット演じるローランドは、戦地へと送られてしまう。国内ではHuluによる配信が終了してしまったため、機会があればDVDなどで鑑賞したい。
このほか、西部劇とサスペンスを融合させた映画『ブリムストーン』には助演俳優として参加。恐ろしい正体を隠した牧師が平和な村にやってきて...というストーリーで、キットは腕利きのガンマンを演じている。Amazon Prime Videoで配信中だが、ストーリーには過激な残酷描写など賛否両論あるのでご用心を。
『ヒックとドラゴン2』はドラゴンと少年との交流を描いた心温まるアクション・アニメーション映画だ。キットはドラゴン・ハンターのエレットに声を当てている。Huluで視聴可能だ。
最後に紹介するのは3月13日(金)より劇場公開となる『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』。11歳の少年ルパートと有名スターとの100通以上にわたる秘密の文通から明かされる、若くしてこの世を去った美しきスター、ジョン・F・ドノヴァンの衝撃的な死の真相に迫り、"人生の真実"を描く愛の物語だ。本作でキットは少年が憧れる世界的スター、ジョン・F・ドノヴァンに扮する。華やかなスターの光と影、スキャンダラスな世界の表と裏をキットが表現している。
いずれの作品でも、頼れるたくましい男といったイメージを一貫して発揮している印象のキット。深い演技力をさまざまな作品で堪能したい。(海外ドラマNAVI)
Photo:キット・ハリントン©Denis Makarenko / shutterstock.com 『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(c)THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD. 『ポンペイ』© 2014 - Constantin Film International GmbH and Impact Pictures (Pompeii) Inc. All rights reserved. 『ブリムストーン』© N279 Entertainment