第72回エミー賞2020予想〜現地メディアはどう見る?【リミテッドシリーズ/TVムービー】

アメリカTV界にとって年に一度の祭典、第72回エミー賞授賞式が現地時間9月21日(月・祝)にロサンゼルスのマイクロソフトシアターにて開催される。各カテゴリーで魅力的な作品や俳優などが候補に挙がる中、【ドラマシリーズ】、【コメディシリーズ】、そして【リミテッドシリーズ/TVムービー】部門の主要部門について、現地メディアの予想をまとめ、受賞の行方を様々な視点から追ってみよう。3回目の本日は【リミテッド/TVムービー】をご紹介。

■リミテッドシリーズ作品賞(Outstanding Limited Series)

 

『リトル・ファイアー ~彼女たちの秘密』(Hulu)
『Mrs. America(原題)』(FX)
『アンビリーバブル たった1つの真実』(Netflix)
『アンオーソドックス』(Netflix)
『ウォッチメン』(HBO)...本命

リミテッドシリーズでは、全カテゴリーの中で最多ノミネートを誇る米HBOの『ウォッチメン』(26ノミネート)の圧勝が予想されている。しかし、今年度のリミテッドシリーズ作品賞ノミネート作品は、全てが重要な文化的および社会的問題に焦点を当てており、いずれも注目度は高い。

米FXの『Mrs. America』は、70年代の男女平等憲法修正案を認可させる運動を描き、米Huluの(日本ではAmazon Prime Videoで配信)『リトル・ファイアー ~彼女たちの秘密』は、人種や階級、家族の問題に焦点を当て、Netflixの『アンビリーバブル』は性的暴行事件の実話を基にしており、Netflixの『アンオーソドックス』はニューヨークのブルックリン地区に存在する厳格なユダヤ教の超正統派コミュニティを描いている。最有力候補の『ウォッチメン』では、初回オープニングで1921年に米オクラホマ州タルサで起きた人種暴動事件にフォーカスし、話題を呼んだ。

■TVムービー作品賞(Outstanding Television Movie)

 

『アメリカの息子』(Netflix)
『バッド・エデュケーション』(HBO)...本命
『ドリー・パートンのハートフル・ソング』第8話「オールド・ボーンズ」(Netflix)
『エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIE』(Netflix)...対抗
『アンブレイカブル・キミー・シュミット:キミーVS教祖』(Netflix)

直近の3年間、このカテゴリーを独占していたNetflixの『ブラックミラー』がドラマシリーズにお引越ししたことで新たな競争が期待されるTVムービー作品賞だが、5作品中4作品がNetflixと同サービスのコンテンツの強さが証明された。

しかし、ここでフロントランナーとして支持されているのは、孤軍米HBOの『バッド・エデュケーション』。教育関係者による巨額横領事件の実話を基にしたクライムコメディで、『グレイテスト・ショーマン』を大ヒットさせたヒュー・ジャックマンと、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアリソン・ジャネイが主演を務めている。この好敵手に上がるのは、TVドラマ史に残る大ヒットドラマ『ブレイキング・バッド』の続編となる映画版『エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIE』だ。

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■主演男優賞(Lead Actor In A Limited Series or Movie)

ジェレミー・アイアンズ『ウォッチメン』
ヒュー・ジャックマン『バッド・エデュケーション』...対抗
ポール・メスカル『Normal People/ふつうの人々』...本命
ジェレミー・ポープ『ハリウッド』
マーク・ラファロ『アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』...対抗

『ウォッチメン』のジェレミー・アイアンズ、『バッド・エデュケーション』のヒュー・ジャックマン、『アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー』のマーク・ラファロは、いずれもアカデミー賞にノミネートされたことがあり、エミー賞受賞(※演技部門以外も含め)の経験も持つまさにトップ俳優たち。しかし、ここで彼らを抑えて最有力候補に挙げられているのは、アイルランド発のリミテッドシリーズ『Normal People』で主演を務め、主要賞レースに初ノミネートを果たしたポール・メスカル。24歳の新進気鋭俳優は、同作で間違いなく世界的にブレイクし、多くの人たちを魅了したと米Hollywood Reporterは評価している。

■主演女優賞(Lead Actress In A Limited Series or Movie)

 

ケイト・ブランシェット『Mrs. America』...対抗
シラ・ハース『アンオーソドックス』
レジーナ・キング『ウォッチメン』...本命
オクタヴィア・スペンサー『セルフメイドウーマン ~マダム・C.J.ウォーカーの場合~』
ケリー・ワシントン『リトル・ファイアー ~彼女たちの秘密』

『ウォッチメン』のレジーナ・キングは、2015年から2018年まで4年連続エミー賞の演技部門にノミネートされ、その戦績は3勝1敗。さらに、昨年は『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞を受賞するなど、今最も勢いに乗る女優の一人。そんな彼女は間違いなくこのカテゴリーの最有力候補だが、『Mrs. America』で保守派積極行動主義者のフィリス・シュラフリー役を豊かに表現力で熱演したケイト・ブランシェットも高い評価を得ている。

■助演男優賞(Supporting Actor In A Limited Series or Movie)

 

ディラン・マクダーモット『ハリウッド』
ジム・パーソンズ『ハリウッド』...本命
タイタス・バージェス『アンブレイカブル・キミー・シュミット:キミーVS教祖』
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世『ウォッチメン』...対抗
ジョヴァン・アデポ『ウォッチメン』
ルイス・ゴセット・Jr『ウォッチメン』...大穴

作品賞の大本命『ウォッチメン』からはヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、ジョヴァン・アデポ、ルイス・ゴセット・Jrの3人がノミネートされたが、投票者がこの3人の中から誰か一人を選ぶことは簡単なことではないはず。それを踏まえ、現地メディアは過去に演技部門で7度ノミネート(内4度受賞)され、『ハリウッド』では実在した芸能エージェントを独特な雰囲気で演じきったジムに軍配が上がると予想している。

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■助演女優賞(Supporting Actress In A Limited Series or Movie)

 

ホーランド・テイラー『ハリウッド』
ウゾ・アドゥーバ『Mrs. America』...大穴
マーゴ・マーティンデイル『Mrs. America』
トレイシー・ウルマン『Mrs. America』
トニ・コレット『アンビリーバブル たった1つの真実』...本命
ジーン・スマート『ウォッチメン』...対抗

助演女優賞では『Mrs. America』からウゾ・アドゥーバ、マーゴ・マーティンデイル、トレイシー・ウルマンの3人がノミネートされたが、助演男優賞同様、こちらもこの3人の中から誰か一人が選ばれる可能性は低いと見られている。『アンビリーバブル』で少女のレイプ事件の再捜査に乗り出す女刑事を好演し、ゴールデン・グローブ賞と全米映画俳優組合(SAG)賞にもノミネートされたトニ・コレットが一歩リードか。

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第72回エミー賞授賞式は、日本時間9月21日(月・祝)に米ロサンゼルスのマイクロソフトシアターで開催。また、FOXチャンネルにて9月26日(土)23:00より字幕版が独占放送。

今回参考にした米メディアは以下の通り。
(Indie Wire, Variety, Deadline, Los Angeles Times, Gold Derby)

(翻訳/Ai Ono)

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