鬼才デヴィッド・フィンチャー(『ハウス・オブ・カード 野望の階段』『セブン』)も惚れ込んだ英国ミステリードラマのリメイクとなるAmazon Original『ユートピア~悪のウイルス~』が10月30日(金)より独占配信中。カルト系コミック「ユートピア」に心酔する4人のファンが、地球上で起きる大災害を予見する原稿の存在を知ったことで、謎を解明し、悪のウイルスの蔓延を防ぎ、世界の終わりから人類を救おうとする...というストーリーだ。クリエイターを担うのはギリアン・フリン(『ゴーン・ガール』『KIZU-傷-(別題:シャープ・オブジェクツ)』)。キャストにはジョン・キューザック(『ハイ・フィデリティ』)、レイン・ウィルソン(『ジ・オフィス』)、コーリー・マイケル・スミス(『GOTHAM/ゴッサム』)らも名を連ねる。
そんな注目作のキャストたちのインタビューを5回に分けてご紹介! 今回登場するのは、コミックファンたちとは別のきっかけで異変に気づく科学者を演じたレイン・ウィルソン(マイケル・スターンズ博士役)。自身のキャラクターや作品の特徴について語ってもらった。
――あなたが演じるキャラクターについて教えてください。
マイケル・スターンズは大好きなキャラクターだよ。彼は地下室に閉じこもっている科学者で、これまで周囲の人間から尊敬されることはもちろん、存在を知られてすらいなかった。でもストーリーが進むにつれて成長していき、高潔な彼は巨大な陰謀に立ち向かうことになるんだ。面白いよ。(新型コロナウイルス対策に関わっている米国立アレルギー感染症研究所所長の)アンソニー・ファウチ博士をいろんな点で彷彿とさせるキャラクターだね。清廉と真実、そして人のためになることを求めているんだ。
――その役を演じるにあたって、ギリアン・フリンからどんなことを求められましたか?
ギリアンがマイケルに求めていたのは高潔さだね。この作品では巨大な陰謀が渦巻いていて、何が善なのか悪なのか、誰が善人なのか悪人なのかが分かりにくいけど、そんな中でマイケルはとにかく科学に根差した考えを持ち、高潔でないといけないんだ。そして誰も彼を買収することはできない。それによって彼は視聴者の信頼を得ることができる。見ている側が頼りにできる存在なんだ。
――ギリアンは2015年頃から本作に関わっていたそうですが、そんな彼女との仕事はいかがでしたか?
彼女のことは前から知っていたけれど、実際に組んでみてビックリしたよ。実に才能豊かな人だ。ねじくれた想像力を持ち、ブラックなユーモアのセンスがある。一見するとシカゴ郊外の主婦って感じで、どこにでもいそうな女性なんだけど、書くものはひねりが効いていて面白く、とにかく素晴らしい。キャラクターが魅力的でどんどん先が知りたくなり、面白いと同時にサプライズもいっぱいでね。一緒に働くことができて良かったよ。
――本作は英国版のリメイクになりますが、すでに一定のファンがいるものを作ることにプレッシャーはありましたか?
素晴らしい英国ドラマの新しいバージョンを作れることにワクワクしたよ。アメリカ風にするために新しい形を見つけ、Amazonのユーザーというより大きなファン層に届けるんだからね。英国は、ウィリアム・シェイクスピア以前の時代から秀作を作り、今も素晴らしい映画やドラマを生み出している。かたや僕らアメリカ人は人のアイデアを元にして大金を稼ぐのが得意なんだ(笑) 世界中の人に楽しんでもらえる作品になっていると思う。
――本作に出てくるウイルスの話題は、新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威に苦しむ現在では非常にリアルなテーマです。それについてはどう思われますか?
驚きだよね。本作の撮影が終わって間もなく世界的なパンデミックが本当に起きるなんて。ギリアンや共演者たちとメッセージを送り合っていたんだ。「何が起きているんだ?」ってね。まるで『ユートピア』を見ているようだった。パンデミック、陰謀、ワクチン、恐怖...。本作を見る人には、これはひねくれたところはあるけれどあくまでもエンターテイメント作品であり、現実のパンデミックをひと時忘れる娯楽作として楽しんでもらえればと思うよ。
――本作を見ていると、面白いけれど不安に駆られることがありました。
君が言うように、本作は見る者を落ち着かなくさせる作品だ。すごく面白いし冒険にあふれているけど、日々の生活が陰謀と絡み合っているからね。見知らぬ町の工場から逃げ出したモンスターが暴れるというようなストーリーと違い、とても現実味がある。そういうことが起きるんじゃないかと思わされてしまうんだ。そんなところも含めてエンターテイメントとして楽しんでもらいたいね。
――同じAmazonの『The Boys/ザ・ボーイズ』のように、『ユートピア』は決して完璧でない人たちが巨悪と闘うために立ち上がるストーリーです。あなたが考える本作の魅力とは?
いい質問だね。これは負け犬たちの話だ。どこにでもいるような人たちがふとしたことで陰謀に気づき、それを止めるための冒険に出る。普通の人たちが真実を求めて巨悪に立ち向かうというのは、感情移入がしやすく惹きつけられる作品だと思うよ。風変わりなストーリーだけど、その根底にあるのは真実を求める気持ちなんだ。
――オリジナルは暴力描写が過激だと問題視されたこともありました。本作も暴力描写は健在ですが、それについてはどう思われますか?
暴力描写というものはトリッキーなんだ。若者を中心にそれに惹きつけられる人もいるけれど、どのように見せるかが重要で、内臓や血を映せばいいというものでもない。僕はこの作品について、よくこう説明するんだ。「『ストレンジャー・シングス』とクエンティン・タランティーノを足した作品」ってね。この作品には冒険に繰り出す若者のグループが出てくる一方、人が頭を撃たれたりしてどんどん殺されていく。若者には受け入れられやすい作品じゃないかな。
――人々がなかなか外出できずにいる中、ドラマはどういう役目を果たせると思われますか?
この作品が視聴者に受け入れられれば、2つのことを果たせたと言えるだろうね。一つ目は、大変な時を送る人たちに、一時でもそれを忘れることができるような優れたエンターテイメント作品を提供できたということ。二つ目は、現代のように何が起きているのか、何が正しいのかがよく分からないような混沌した世界を舞台に、力を持たない者が強大な相手に立ち向かうというストーリーを伝えられたこと。ギリアンは本作のインスピレーションとして、1970年代の映画、『パララックス・ビュー』『マラソン マン』などを挙げている。こうした作品は娯楽性があると同時に、その時の世界の映し鏡的な要素も含んでいるんだ。
『ユートピア~悪のウイルス~』(全8話)は10月30日(金)よりAmazon Prime Videoで独占配信中。
Photo:
Amazon Original『ユートピア~悪のウイルス~』