英国ミステリー『アガサ・クリスティー ゼロ時間へ』は、アガサ・クリスティーが1944年に発表した小説「ゼロ時間へ」をもとにしているが、これまでの映像化作品と同じようにいくつかの変更が加えられた。そのうち、謎解き役が代わった理由を脚本家が説明している。(※本記事は、作品のネタバレを含みますのでご注意ください)
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古典的なミステリーの逆を行く斬新な作品!『アガサ・クリスティー ゼロ時間へ』
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謎解き役には一般人でなく警察官が必要
『アガサ・クリスティー ゼロ時間へ』の舞台は、1936年のイギリス。英国テニス界のスター選手であるネヴィル・ストレンジは妻オードリーとスキャンダラスな離婚劇を繰り広げた後、再婚した相手ケイとのハネムーン先として、おばのレディ・トレシリアンが暮らすガルズポイントを選ぶ。しかし、そこへネヴィルと「友人に戻る」ことにしたとして元妻のオードリーも滞在することに。当事者たちの緊張感が徐々に高まる中、レディ・トレシリアンの付き添い人やネヴィルと確執のあるいとこ、ネヴィルの謎めいた従者、一家を長年支えてきた弁護士、精神的に不安定な警部などもガルズポイントに集まってくる。やがて殺人事件が発生し…。
脚本を担当したレイチェル・ベネット(『リッパー・ストリート』)は、原作小説の特徴として、この作品にはクリスティーおなじみの探偵が登場しないことを指摘する。
「この作品で、クリスティーはとても珍しいことをしています。最も興味深いのは、物語の中心から探偵を外している点です。彼女は(謎解き役として)ポワロやマープルでなくバトル警視を起用しています。ですが、バトルは捜査中ずっと“ポワロがここにいてくれたらよかったのに”と思っているんです」
バトル警視といえば、クリスティー作品にたびたび登場するキャラクターの一人だ。「チムニーズ館の秘密」(1925年)で初登場し、ポワロ作品の「ひらいたトランプ」(1936年)にも姿を見せたが、これまでは脇役や別にいる謎解き役を補佐するだけの役回りだったのに対し、最後の出番となった「ゼロ時間へ」では彼自身が謎解き役に回っている。休暇で甥のジェイムズ・リーチ警部を訪ねていたところ、近所で殺人事件が起きて地元警官のリーチとともに捜査することになるのだ。
「ゼロ時間へ」でのバトル警視は、ポワロの手法を真似て手掛かりを発見したりと、まずまずの活躍を見せるが、とはいえ完全に独り立ちしたわけではなく、終盤で別の謎解き役が現れる。その人物とは、ホテルの宿泊客アンガス・マクワーターで、物語の冒頭で自殺を図るも奇跡的に生き延びたキャラクターだ。彼は自殺しそこねた場所をのちに再訪したことがきっかけで、事件に介入する。
ベネットは脚色するにあたり、原作でバトルとマクワーターが分担していた推理の役割を「非常に独創的なキャラクター」のマクワーターに集約させるつもりだったようだ。しかし、ある問題が浮上する。
「(家族でもなく警官や探偵でもない)マクワーターは、物語の中心人物たちとはかなり距離があり、この非常に複雑な事件を解決するには、やはり警察官が必要だということがすぐに明らかになったのです」とベネットは回想する。

その結果、「自然に生まれてきた」のが『アガサ・クリスティー ゼロ時間へ』でマシュー・リス演じるリーチ警部だった。彼は、バトル警視とアンガス・マクワーター、そしてバトルの甥のジェイムズ・リーチ警部の3人を融合させた存在だ。「本作に登場するリーチ警部のDNAは純粋なクリスティーそのもので、まさに原作から抜け出たような人物です」
バトル警視がようやく活躍する機会を奪われてしまったのは少し残念だが、原作に出てくる3人の要素をバランス良く含んだリーチ警部の活躍を本作で味わってほしい。(海外ドラマNAVI)
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参考元:英Radio Times






