デヴィッド・リンチとの幻の企画についてNetflixのボスが語る

先日、日本のお茶の間でも報じられた鬼才デヴィッド・リンチの訃報。78歳でこの世を去った彼との幻の企画についてNetflixのボスが語った。米Varietyなど複数のメディアが伝えている。

デヴィッド・リンチ監督死去、『ツイン・ピークス』カイル・マクラクランらが追悼

カルト的ブームを巻き起こしたドラマシリーズ『ツイン・ピークス』や映画『マルホランド・ドライブ』『砂の惑星』などで知られる鬼才デヴィッド・リンチ監督が、78歳でこの世を去った。 多くの映画関係者が追悼メッセージを投稿 現時点で、正式な死因は公表されていないが、2024年、長年の喫煙習慣の結果、肺気腫...

パンデミックなどで都合が合わず…

1990年代にカルト的ブームを巻き起こしたドラマ『ツイン・ピークス』や映画『エレファント・マン』『砂の惑星』『ブルーベルベット』などで知られるリンチ監督の死を受けて、エンタメ業界から追悼の意が寄せられているが、Netflixの共同CEOテッド・サランドスも「永遠にお気に入りのフィルムメーカーの一人」である彼の死を惜しむ声明をInstagramに投稿。リンチとともに彼が監督を務めるリミテッドシリーズの企画を練っていたと明かした。

その企画が幻に終わった背景には、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされたリンチの健康上の不安があったとのこと。リンチは2024年、長年の喫煙による肺気腫と診断されたこと、それにより風邪であっても大きなリスクとなるため、今後の監督業は対面でなくリモートで行う必要があることを明かしていた。

「彼がNetflixに持って来てくれたリミテッドシリーズの企画に我々はすぐに飛びついた」と振り返ったサランドス。「デヴィッド・リンチの作品だから謎だらけだったしリスクも多かったけれど、我々はこの天才との企画をなんとしても実現させたかった。最初は新型コロナウイルス、続いて（彼の）健康上の不安によってプロジェクトはお蔵入りになってしまったけれど、彼が可能ならすぐにもやる気満々だった」

Netflixとリンチのプロジェクトといえば、2020年11月にリンチが監督・脚本を担当するリミテッドシリーズ『Wisteria（原題）』が進行中であるとの報道が。『Unrecorded Night』とも呼ばれたこのプロジェクトで、リンチは『ロスト・ハイウェイ』や『マルホランド・ドライブ』で組んだ撮影監督のピーター・デミングと再タッグを組むとされていた。2021年11月に新型コロナウイルスの影響で企画は中断となったことをデミングが明かしたが、リンチと付き合いの長いプロデューサー、サブリナ・S・サザーランドは「いつでもチャンスはある」と2024年5月にコメント。今回サランドスの言うリミテッドシリーズがこれを指しているのかは定かではない。

リンチ自身は昨年、アニメーション『Snootworld（原題）』をどうしても作りたかったもののNetflixに却下されたと話しており、様々な企画をNetflixに提案していたようだ。リンチ監督は74歳の誕生日を迎えた2020年1月20日、いきなりNetflixで短編映画を配信してファンを驚かせていた。

サランドスは初めてリンチと会った時のことも回想している。それは、当初レンタルビデオサービスとしてスタートしたNetflixがまだDVD貸出を行っていた頃のこと。当時絶版になっていたリンチの初監督作、1976年の『イレイザーヘッド』を取り扱いたいと本人に連絡を取ったことをきっかけに、『イレイザーヘッド』だけでなく彼の先見的な短編映画のディスク化の合意も取りつけたサランドスは、リンチの自宅に招かれ、邸宅とアートコレクションを見せてもらったのだという。

「彼はさらに、次の映画の初期のカットを見たいかと聞いてきた。僕はてっきり、いくつかのシーンを見せてくれるんだろうと思っていた。そうしたら、彼は僕を試写室へ連れて行って、3時間近い『マルホランド・ドライブ』を流してくれた。一日中いるつもりなんてなかったんだけど、デヴィッド・リンチの家の試写室で、まだ解禁されていない新作を見るという信じられないような経験をさせてもらった。試写開始のおよそ2時間後、彼が部屋からいなくなっていたことに気づいたけど、僕は映画を最後まで見てから自分で外に出たんだよ」

「彼の最後のプロジェクトとなるはずだった作品で、我々に何を見せようとしていたのか、いつまでも気になり続けるだろう」と嘆くサランドス。世界中のファンが同じ思いを抱いているに違いない。

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参考元：米Variety、米Deadline