2015年から“ミステリーの女王”アガサ・クリスティーの小説を次々とドラマ化している英BBC。次に取り上げる作品が「ゼロ時間へ」となることが分かった。米Deadlineが伝えている。
犯行の瞬間へとさかのぼっていく独特な叙述法
これまで「そして誰もいなくなった」を皮切りに、サラ・フェルプスの大胆な脚色で「検察側の証人」「ABC殺人事件」「無実はさいなむ」「蒼ざめた馬」を映像化。その後は、2022年にヒュー・ローリー(『ドクター・ハウス』)が監督・脚色・製作・出演を兼任して「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」が作られ、そして2023年には「殺人は容易だ」がドラマ化された。
新たに制作されることが決まったのは、クリスティーが1944年に発表した「ゼロ時間へ」。犯人が殺人の計画を策定する時間から始まり、犯行の瞬間(ゼロ時間)へとさかのぼっていくという独特な叙述法が採用されている点が特徴だ。寝たきりとなっている金持ちの未亡人トレリシアン夫人のもとに、亡き夫の被後見人である男が訪れる。毎年夏になると彼は夫人のもとを訪れていたが、今回は前妻と現妻を両方連れてきたことで気まずい訪問に。そのほかにも客人や関係者が集まる中、そのうちの一人が死亡。死因は心不全かと思われたが、続いて夫人が惨殺され、ロンドン警視庁のバトル警視が呼ばれる…というストーリーだ。
原作にはクリスティー作品の有名な探偵であるエルキュール・ポワロやミス・マープルは出てこないが、「殺人は容易だ」やポワロ作品「ひらいたトランプ」に出てきたバトル警視が登場。「殺人は容易だ」のドラマ版にはバトル警視が出てこなかったが、今回こそこのキャラクターはドラマに登場するのだろうか。
「ゼロ時間へ」はあまり知られていない作品かもしれないが、実は何度か映画や舞台で綴られてきたストーリーだ。クリスティー自身が1950年代に舞台化。また、内容を変えすぎたとして原作としては認められなかったものの、1994年の映画『イノセント・ライズ』はこの小説を元としている。2007年にはフランス映画にもなった。そしてドラマとしては『アガサ・クリスティー ミス・マープル』『アガサ・クリスティーの謎解きゲーム』の一編に組み込まれている。
脚色を担当するのは、『リッパー・ストリート』『World on Fire』のレイチェル・ベネット。この夏に撮影が行われる予定だ。キャスティングはまだ発表されていないが、続報が入り次第お伝えしたい。(海外ドラマNAVI)
参考元:米Deadline
Photo:アガサ・クリスティー ©IMAGO