『グッド・ドクター』『ヤング・シェルドン』『S.W.A.T.』がシーズン7で終了する理由

『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』のスピンオフ『ヤング・シェルドン』、医療ドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』、そしてアクションドラマ『S.W.A.T.』という人気作がそろって2024年~2025年シーズンにシーズン7をもって終了する。なぜこの7年というスパンで終了する作品が多いのかについて、米Deadlineが報じている。

話の流れ、ストライキによる編成変更なども影響し…

前述の3作は、本国アメリカで2017年~2018年シーズンに放送がスタート。同時期に始まって6シーズン以上続いた作品としてはほかにも、シーズン7のタイミングで米FOXから米ABCへと放送局を変える『9-1-1:LA救命最前線』や、FOXの『レジデント 型破りな天才研修医』、CBS系列で続いてきた『SEAL Team/シール・チーム』、ABCの長寿ドラマ『グレイズ・アナトミー』のスピンオフ『STATION 19』があり、これら7作のうち、2023年にシーズン6をもって終了した『レジデント』を除く6作が7シーズン継続されたことになる。

現代の視聴率低下と財政的重圧による地上波テレビ事業の縮小を考えれば、このように長く続く作品をたくさん生み出すような流れが今後繰り返されることはないと言えそうだ。テレビは数で勝負するものであり、シリーズの受注が減ればヒット作も当然減る。伝統的なメディア企業においては、財政上のバランスシートを重視するため、ヒット作であっても放送スパンを短縮される可能性が高い。とはいえ、『グッド・ドクター』『STATION 19』『S.W.A.T.』といった人気作の終了決定はいささか時期尚早の感がある。さらに残念なことに、昨年半年にわたって続いたハリウッドのダブル・ストライキの影響で、2024年~2025年シーズンに完結する作品の最終シーズンはその多くが10話程度でフィナーレを迎えることになってしまった。

ある情報筋は、相次ぐ打ち切りの主な理由は「予算」だと語る。ハリウッドでは昔から、シリーズが長くなるとテレビ局が制作費を全額支払わなければならなくなる仕組みだ。そのため、6シーズン以上続く作品の場合、テレビ局としてはライセンス料が高くつくが、スタジオにとっても赤字を出し続けることにつながることがある。さらに、一般的なシリーズレギュラー俳優の契約期間は6年で、シーズン2あるいはシーズン4まで制作された後のギャラ交渉を経て、その契約期間を6年から7年へと延長することが多い。そのため、多くの作品はシーズン7以降、レギュラーキャストを続投させるためには新たな契約で大幅なギャラアップをしなければならなくなる。

こうしたコストの問題はどの打ち切り決定にも共通することだが、複数の業界関係者は、長寿番組の終了にはそれぞれ固有の事情があると強調する。かつては視聴率が更新か打ち切りかの明暗を分けていたが、もはや主要な判断基準ではない。というのも、2024年~2025年シーズンに終了する作品の多くは、前シーズンに地上波で最も視聴された娯楽番組トップ40にランクインしている(『ブルーブラッド ~NYPD家族の絆~』と『ヤング・シェルドン』はドラマ部門の3位、4位)。

CBSで放送されている『ヤング・シェルドン』は外部スタジオのワーナー・ブラザースTVが制作し、『グッド・ドクター』と『S.W.A.T.』はそれぞれソニーTVがABCシグネチャー、CBSスタジオと共同制作している。ある業界関係者は、「地上波のテレビ局は、その番組の広告費がライセンス料に見合うかどうかを判断しなければならない状況になりつつある」と語っており、これはネットワークにとって「リース」している状態の非所有番組では、制作スタジオ側が収益を生み出す下流の権利を所有するという事実を指している。

全米ランキングで最も視聴されているコメディ番組であり、非スポーツ番組としては3位という好成績を誇る『ヤング・シェルドン』のようなヒット作であれば、シーズン8への更新はあり得たかもしれない。しかし、『ビッグバン★セオリー』の前日譚である同作はシーズンを重ねるうちに本家の時系列に少しずつ物語が近づいており、プロデューサーたちはこのあたりが止め時だという考えだったようだ。そのため同作の更新話は放送局とスタジオの間であまり話し合われていなかったそうだが、その代替案としてシェルドンの兄ジョージーと彼の恋人マンディを中心としたスピンオフ制作話が持ち上がっている。

一方、『グッド・ドクター』のキャンセルは、業界関係者にとってはいささか首をかしげるものだった。この医療ドラマは昨シーズン、22時台の娯楽番組として18~49歳の視聴者数で1位を獲得するなど好調だったからだ。主人公ショーン・マーフィーを演じるフレディ・ハイモアの契約は7シーズン終了時点で切れるため、シーズン8以降も制作するなら彼やショーランナーと新たな契約を結ぶ必要があったが、そこまでは至らなかった。情報筋によると、ソニーTVはシーズン8の発注エピソード数を減らすといった、さらなる削減も受け入れる形で新たな契約を結ぶ意向があることを示していたという(『グッド・ドクター』や『S.W.A.T.』のように海外での売上が好調な作品の場合、ソニーTVのような外部スタジオはネットワークライセンス料を多少減額したとしても、海外へ販売することで利益を維持することができる)。

また、フレディ本人は、キャンセル決定前にABCから新たな契約を正式に打診されたことはなかったようだが、カナダのバンクーバーで撮影される同作への出演継続には前向きだったと言われている。シーズン7時点でレギュラーとしてのオリジナルキャストは彼とアーロン・グラスマン役のリチャード・シフだけで、二人の契約料が高くなるとしてもバンクーバーというロケ地がコストを抑えるのに役立っていた。情報筋によれば、結局のところABCは経済面を考えて、ドラマとリアリティ番組、スポーツ中継のバランスを取ったスケジュールを推し進めることで経費を節約したかったのだという(ハリウッドでのストライキ勃発後のABCの秋のラインナップは、ほとんどがリアリティ番組で構成されていた)。

『S.W.A.T.』に関しては、2023年5月に一旦シーズン6をもっての打ち切りが発表されたが、その数日後にこれまでよりも少ない話数で最終となるシーズン7が制作されることが決まった。同作の打ち切りは、放送局であるCBSと制作スタジオのソニーTVが金銭的な合意に至らなかったからだと言われている。

結局のところ、ほとんどの作品の場合はいくら人気があっても、放送局や制作スタジオの財政的な判断で打ち切りが決まることが多いようだ。(海外ドラマNAVI)

参考元:米Deadline