米AMC製作による傑作クライムドラマ『ブレイキング・バッド』では、“色”が大きな意味を担っていることは周知の事実だが、主人公ウォルター・ホワイト(ブライアン・クラストン)の名前には、どんな意味が隠されているのだろうか?
至る所に“色”が散りばめられている
『ブレイキング・バッド』は、末期がんを宣告された温厚な高校の化学教師が家族に財産を残すため、専門知識を活かして高純度のドラッグを精製し、裏世界をのし上がっていく姿が衝撃的に描かれるシリーズ。
本作ではウォルターだけでなく、相棒ジェシー・ピンクマンの姓にも色が使われ、二人が精製するドラッグは“ブルー・メス”と呼ばれている。また、二人が作業中に身に着ける色鮮やかなイエローのジャンプスーツのほか、ウォルターの義兄ハンクの妻マリーの持ち物はほとんど紫色といった具合に、とにかくシリーズの至る所に“色”が散りばめられている。
ウォルター・ホワイトの名前に込められた意味
米Vultureのインタビューで、クリエイターのヴィンス・ギリガンがウォルター・ホワイトの名前に込められた意味について、「ホワイトはバニラの色で、当たり障りのない色ですからね」と説明している。英語で「バニラ(vanilla)」は食品のほか、「平凡」「つまらない」といった意味にも使われ、ウォルター刺激のない生活や人間性を表していると言えるだろう。また“ホワイト”には、いとも簡単に犯罪や悪に染まってしまったウォルターが、“真っ白な”キャンバスだったことを象徴しているとも考えられる。
キャラクターの心の状態を表す
ウォルターは裏世界でドラッグの取り引きをする際、“ハイゼンベルグ”という偽名を使うが、この名前は実在の著名な物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクに由来している。ウォルターは、大学卒業後に親友エリオットと画期的な企業「グレイマター」社を設立するが、個人的な理由で会社の権利を売ってしまう。その後にグレイマター社は巨大企業となり、その成長を目にしたウォルターはエリオットに対して劣等感を拭えきれないでいた。「ハイゼンベルグ」の名前には、ウォルターが成り得ていたかもしれない人物像が重ね合わされているのかもしれない。
なお、ギリガンはマリーが紫色を好む理由について、「マリーは、“紫は王族の色だから”と言うでしょうね。『ブレイキング・バッド』で色は重要で、常にその観点から考えていました。キャラクターが着ている色は、その人物の心の状態を表すという意味で常に考えるようにしていたんです」と語っていた。
もう一度シリーズを見直す人も未見の人も、色を意識しながら視聴してみてはどうだろうか。『ブレイキング・バッド』はNetflixにて全シーズンが配信中。(海外ドラマNAVI)
Photo:『ブレイキング・バッド』©2008-2013 Sony Pictures Television Inc. All Rights Reserved.