『ドクター・ストレンジMoM』日本語吹替版声優 三上哲にインタビュー!ベネディクト・カンバーバッチの魅力は「守ってあげたくなる弱さ」

『ドクター・ストレンジ』、そして『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に続くMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)劇場公開最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』。

このたび、本作でドクター・ストレンジの日本語吹替を担当している声優、三上哲に直撃インタビュー! 約5年にわたって演じてきたストレンジへの思いや本作の見どころ、専属声優だからこそわかるベネディクト・カンバーバッチの魅力などについて語ってもらった。

ついに単独2作目!“マルチバース”の扉が開く本作の見どころとは

――前作『ドクター・ストレンジ』が2017年1月に日本で公開されてから、約5年が経ちました。率直な今の気持ちをお聞かせください。

ストレンジの初登場が『ドクター・ストレンジ』。その後、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、そして今年2022年に公開した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を経て、また単独作品に戻ってきました。いよいよというか、身が引き締まる思いですね。

――ストレンジの印象について、1作目の『ドクター・ストレンジ』から変化はありましたか?

回を重ねるごとに人間味が出てきたというか…。自分本位な印象の強いストレンジですが、特に『エンドゲーム』あたりから、他人に寄り添うことができるようになったのかなと感じています。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』日本語吹替版声優 三上哲

――ついに“マルチバース”の扉が開く本作ですが、見どころは?

本作では、とにかくさまざまな世界に行きます。何でもアリといえばアリなわけですが、ストーリー自体はとてもよくまとまっていますし、「ええっ!」という驚きもある。異次元と聞くと、小難しいイメージがあるかもしれませんが、気楽に見てもらえる作品に仕上がっていると思います。

ストレンジ以外の登場人物も魅力的。ウォンなどおなじみのキャラクターから、これまであまり接点がなかったワンダまで…。ストレンジがまわりとどう絡んで行動していくのか、注目してもらえれば!

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真

――本作から新キャラクターのアメリカ・チャベスが登場します。ティーンエイジャー×ストレンジというと、ピーター・パーカーとの絡みもファンから人気が高いですが、アメリカ・チャベスとはどんな関係を見せてくれるのでしょうか?

やはり、彼女に対しても最初は子ども扱いする姿も見られますが、ストーリーが進む中で彼女に寄り添う一面も…。『ノー・ウェイ・ホーム』でも、ピーターに対して怒りつつも「あれだけのことを共に乗り越えたせいでつい忘れるが、まだ子どもだったな」という台詞がありましたが、そういう意味では、ピーターとの関係と似ているかもしれませんね。

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真(アメリカ・チャベス)

複数のストレンジが登場!もしも、もう一人の自分と出会ったら…

――予告映像を見る限り、複数のストレンジが登場するようですが、吹替にあたって注意した点などはありますか?

実写作品の吹替では、役者さんのお芝居を目線一つ…台詞のないところまで拾って、いかにシンクロしていくかを大切にしています。本作では、ベネディクトが複数のストレンジをきちんと演じ分けている。どういう過去の結果、今こうなっているのか…それぞれのキャラクターの歴史をこちらでも汲み取って、反映させるよう意識しました。

――ちなみに、三上さんがもう一人の自分と出会ったらどうしますか?

会いたくないですね(笑) 嫌だなあ。

――声優以外なら、どんなお仕事に就いていたと思いますか?

うーん、想像がつかないな…。強いて言えば、早くから声優の仕事に就いていたとか? 僕は声優の仕事を始めたのが遅かったので、もう一人の自分はもう少し早い段階で声優をしていたかもしれません。

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真

ベネディクト・カンバーバッチの魅力は「思わず守ってあげたくなる弱さ」

――三上さんは『SHERLOCK シャーロック』を皮切りに、これまでベネディクトが演じたキャラクターの吹替を多数担当されていますよね。ある種“もう一人の自分”的な存在なのではと思いますが、もしベネディクトと会う機会があったらどんな話がしたいですか?

まずは「僕でいいですか?」って(笑) 吹替させてもらってますってご挨拶しないとですね。僕のほうが年上ですが、緊張しちゃいます。

――10年近く専属声優として吹替を担当されていますが、ベネディクトの演技に対する印象はどうでしょう。

最近だと『パワー・オブ・ザ・ドッグ』での威圧的な西部のカウボーイという、今までにない役が印象的でしたが、必ずどこかに品を感じるんですよ。英国出身だからでしょうか。どんな汚い言葉を使っていても、チャーミングさがベースにあって、そこからの振り幅がいろいろある人だなって。

姿勢の良さも関係あるのかもしれません。僕自身アフレコの際、彼の姿勢がピシッとしているシーンは、自分も背筋を伸ばします。あとは、弱い部分というか、繊細な心の揺れ動きを見せるのがうまい。思わず「守ってあげたい」と感じさせられるような…。強さだけでなく弱さも両方兼ね備えているところが、彼の魅力なのかなって思います。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

上から目線?ちょっと抜けてる?ストレンジの魅力とは

――ストレンジにも弱い一面がありますよね。1作目では、事故で大怪我を負って…。本作でも、ストレンジの弱さが見えるシーンがあるのでしょうか?

本作でもありますね。何に対してかは、まだ言えませんが(笑) 弱さだけじゃなくて、いろいろな面を見せてくれます。強くて格好いいところや、上から目線なところ、ちょっと抜けているところ…。

――抜けているというと、『ノー・ウェイ・ホーム』では雪まみれになったサンクタム・サンクトラムの床で滑ってしまう可愛らしいシーンもありましたね。

フワッと降りてきたかと思ったらツルッて!(笑) ああいう一面によって人間味が増すというか、愛着が湧きますね。

――可愛らしい一面というと、マントとのやり取りもファンに人気ですよね。本作でもその相棒っぷりが楽しみです。

1作目では、マントに「こっちだよ!」って引っ張られて助けてもらう、面白いシーンがありましたよね。本当、いい相棒です。相棒といえば、ウォンも候補かな。アメリカ・チャベスもそうとも言えるし…。本当に、本作には魅力的なキャラクターがたくさん登場するので。

――モルドとの再会も気になるところです。

再会…するんですかね?(笑) 予告にはモルドの姿もありましたが、そのあたりも楽しみにしていただければ!

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真(ウォン)

今後のMCUはどうなる?共演してほしいヒーローは…

――今後のMCUの展開にはどんなことを期待していますか?

期待というか、不安ですよね。キャプテン・アメリカもアイアンマンもいなくなって…。これから誰がまとめるんだ? ストレンジなの!? という(笑) 彼の場合「俺が仕切る!」みたいなタイプでもありませんし。

――確かに、チームリーダーはあまり向いていなさそうですよね(笑)

それに、続々出てきている新キャラクターたちとどう絡んでいくのか…。これまでのアベンジャーズとはまったく異なるチームができるのかもしれないですし。まったく予想がつかないですね。

――今後、どんなヒーローとの共演が見てみたいですか?

スパイダーマンとはどういう再会をするのか、気になりますよね。『ノー・ウェイ・ホーム』のクライマックスであのような出来事がありましたが、二人の再会は、絶対あるはずですよね…? ご近所同士ですし。そんな二人のこれからが、とても見てみたいです。

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真

本作を見る前に予習しておきたいMCU作品はコレ!

――MCUはフェーズ4に突入し、作品数もかなり増えました。本作を見る前に、予習として「これだけは見ておきたい作品」は何でしょうか?

『ワンダヴィジョン』ですね。本作では、ワンダの役どころはかなり重要。『ノー・ウェイ・ホーム』はもちろん『ワンダヴィジョン』も本作とつながりが深いので、この2作を見ておくと、より本作を楽しめると思います。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』や『エターナルズ』は見ていなくても大丈夫かな…。でも、『シャン・チー』にはウォンが登場するんですよ! 余裕があれば全部見てほしいです(笑)

『ドクター・ストレンジMoM』場面写真(ワンダ)

――ほかには、監督がサム・ライミということで、怖いシーンが多いのでは? と、ホラーが苦手なファンから心配の声もあがっていますが、その点はいかがでしょうか。

ホラーが苦手な人でも全然大丈夫です!確かに僕も、続編はホラーになるという噂を耳にしたときは驚きました。でも、本作ではおどろおどろしいというか、血がドバッみたいなシーンはないので安心してください(笑)

日本語吹替版ならではの魅力とは?

――本作の日本語吹替版のポイントを教えてください。

作品に限らず、日本語吹替版の良さは、気楽に見られる点ですよね。ストーリーに没入してもらうことが一番大事なので、映像との違和感がないように気を付けて演じています。見終わった後に「そういえば日本語吹替版だったね」って思ってもらえれば嬉しいです。

また日本語吹替版は、字幕版と比べると、伝えられる情報量が多いという特徴もありますね。最初は日本語吹替版で内容を把握して、2回目は字幕版でベネさんの美声を楽しんでもらえればいいんじゃないかなと!(笑)

――最後に、本作を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします!

ストレンジといえば大迫力の映像美。本作もすごいです! “マルチバース”がテーマではありますが、あまり構えず、気楽に劇場へ足を運んでもらえばと思います。映画館の大きなスクリーンでマルチバースを体感して、存分に楽しんでいただけたら嬉しいです!

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』日本語吹替版声優 三上哲

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は5月4日(水・祝)映画館にて公開。(海外ドラマNAVI)

Photo:『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(c) Marvel Studios 2022