
『HEROES/ヒーローズ』の超能力者、ヒロ・ナカムラ役で「ヤッター」なるキャッチフレーズまで生み出し、一躍アジア系俳優の期待の星となったマシ・オカ。現在は『HAWAII FIVE-0』で検視官マックスを演じ、ヒロとはまた違った魅力を見せている彼に、ドラマのことから、アジア系俳優をめぐるハリウッドの現状まで直撃した!
まずは『HAWAII FIVE-0』で彼が演じるマックスについて聞いてみた。
―― マックスはマシ・オカさんから見てどんなキャラクターですか?
とにかく個性的な人物ですね。一風変わっていてまさに鬼才という感じ。だからコメディタッチが重要だなと思ってるんです。シリアスなシーンでも彼が登場すると思わず笑ってしまう、そんな風になればいいなと思ってます。シーズン1でのマックスが好評だったので、スタッフからはそのままでやってくれと言われているんだけど、僕としては彼の意外性も出していきたいですね。シーズン1でも集中するのにピアノを弾くというマックスのキャラクターに惹かれて、いかにも鬼才な彼らしいし、僕自身小さい頃にピアノを習っていたので、ワクワクしてたんです。でも結局1話だけしかやらなかったんだけど(笑) シーズン2では彼の背景も描かれるので楽しみにして欲しいですね。噂によるとダンスシーンも出てくるとか...。ジョークで『Glee』やろうって言ってただけなんですけど。ミュージカルは無理でもダンスくらいなら出来るかな、と思って。僕も一応昔、ヒップホップを習ってたことがあるんですよ、意外でしょ?(笑)
―― マックスのようにエキセントリックなキャラクターを演じる難しさはありますか?
それはそんなに大変ではないんですけど、マックスのキャラクターよりも医療の専門用語が大変ですね。言葉一つ間違っただけで全く違う意味になってしまうので。だから普通のセリフより難しくて、全部覚えなくちゃならないのが大変です
現在シーズン2を撮影中の『HAWAII FIVE-0』。マシ・オカもハワイでの撮影から直接日本に入り、またハワイに直行してドラマの撮影に戻るという多忙ぶりだ。当然ながらハワイに移住したのかと思いきや、実はロスからハワイに"通勤"しているのだと明かす。
―― シーズン2からレギュラーに昇格したわけですが、最初はどんな気持ちでした?
実は最初はお断りしたんです。ロスではいくつかビジネスをやっているし、ちょうどその頃、母がガンの闘病中だったことも気がかりだったし。俳優はTVシリーズのレギュラーになると最初にだいたい6年間の契約を結ぶことが多いんですよ。だからレギュラーとなるとハワイに移住しなくてはならないけれど、その間はあまり他の仕事はできないし、友達もいないし人生を一から始めるということを考えると躊躇してしまったんですよね。それはそれで冒険と言えば冒険で、楽しいんだけれど、不安だったんです。でもスタッフがすごく好意的で、僕のキャラクターはレギュラーと言っても出番はそんなに多くないし、撮影の調整もするからロスから通うことも出来るよって言ってくれて、それでお引き受けすることになったんです
―― キャストたちとのチームワークはいかがですか?
アレックスとももちろん親しいけど、やっぱりダニエル(・デイ・キム)が一番仲がいいですね。彼とは昔からの知り合いだったし、よく話します。そうそう、彼が『LOST』で僕が『HEROES』、その上グレイス(・パーク)が『ギャラクティカ』で、アジアンSFオールスターだね、ってみんなで笑ってたんですよ。なのに出演しているのがSFとは全く無縁な『HAWAII FIVE-0』なのが笑えますよね。SF全然関係ないじゃん! って(笑)
―― このドラマは全編ハワイロケというのも見どころですが、ハワイロケの楽しみは何でしょう?
ハワイというロケーション自体素晴らしいし、このドラマも美しい風景やハワイの文化も忠実に描いているところがいいですよね。つい先日もパドル・サーフィンとかカヤックに挑戦してみました。それにダニエルはハワイが長いので、僕がハワイに行くとよく美味しいレストランを紹介してくれるんです。でもなぜか毎回日本食なんですよね(笑) 僕自身がお気に入りなのはアラン・ウォン。友人たちがハワイに来たときも必ず連れて行くんです。ハワイはローカルフードも美味しいし、どんな料理にもどこかアジアンなテイストがあるのがいいですよね。なにより感動したのはロスでは見かけない山菜おこわがあったこと!(笑)
―― ハワイロケもエンジョイしているようですが、それにしてもどこに行っても注目されてしまうのでは?
なかなか外に出れませんね。アメリカの観光客と日本の観光客、両方が来るので結構すごいことになってます(笑)最初にハワイに行った時はビーチどころかホテルのプールにも行けなくて、ハワイに行ったのに水に触れたのはシャワーだけでした(苦笑)
―― マシ・オカさんから見た『HAWAII FIVE-0』の魅力とは何でしょう?
ハワイの魅力がよく出てますよね。ただ、1話ごとに毎回殺人事件が起こるので、それをハワイの人が喜んでるのはちょっと不思議だと思いますが(笑) だって治安が良くないって宣伝してるみたいじゃないですか。実際にはあんなにパトカーがウーって走ってないけど(笑) でもハワイの方がそうやって番組を愛してくれるのはすごく嬉しいです。それにアクションもね。このドラマはアクションでエミー賞にもノミネートされたくらい、かなり本格的なので、そこも大きな見どころですね。まさにリゾート・アクションです(笑)
―― オリジナル・シリーズでもやっぱりドラマがきっかけでハワイに憧れる人が増えたみたいですよね。
そうなんですよ。だから日本を舞台にしたドラマを作れば、みんな日本に来たいって思ってくれるんじゃないかな
―― いいですね! ぜひそういう企画を!
作ろうとしてるんですけどねぇ(笑)
俳優活動と平行してCGアーティストやプロデューサーとしても活躍しているマシ・オカ。既にいくつかの企画を抱え、マルチな才能を発揮する彼がハリウッドの現状、そして今後の展望を語る。
―― 俳優のほかにもCGアーティストやプロデューサーとしても活動しているマシさんですが、裏方と俳優、どうやってバランスを取っているんでしょう?
僕は基本的に飽きっぽいのでいろんなことをやってないと落ち着かない性分なんです(笑) CGや作品製作などの開発の仕事は、関わる人間が多いだけに時間がかかるものなので待ち時間も長いし、逆に役者の仕事は撮影している時以外は空き時間があるので、上手くバランスが取れてる気がしますね。それに僕個人としては役者の仕事って寿命が短いと思うんです。特にアメリカだとアジア系の俳優で食べていけるのは本当に一握りで。だから次世代に希望を与えるためにも自分たちで作っていくのが大事だと思うんです。役者として、プロデューサーとして両立していくことが大切だし、両立させることによって世界観も膨らむと思うんですよね。昔からものを作ることが好きだったから、役を作っていくことは楽しいんですけど、長く続けると作るものがだんだんなくなっていく気がする。だから裏方と俳優、そういうバランスがあることによって続けていけるんじゃないかって思ってるんです
―― 以前に比べるとハリウッドでのアジア系俳優を巡る現状にも変化が見られると思うんですが、実際にハリウッドに身をおくマシ・オカさんから見たハリウッドとは?
確かに少しずつ変わってきてはいますよね。でもアジア系の俳優がリードになって作品を引っ張っていくというレベルに達するのはまだまだ難しいです。『47ronin』だって結局キアヌ・リーブスが主演だしね。『HEROES』ではアンサンブルだったから、その中のひとつの顔として注目されたりもしたけど、じゃあ、例えば僕とダニエルの2人がリードになって番組を作ろうとなったら、結構ハードルが高いというのが現状。そういう状態を変えるためにも、誰かがアイデアを考えて始めないといけないと思ってます。僕も今いくつか企画を進めているんですが、自分で作って、自分で出演して、そうやって世間での認知度が上がればまた別の企画も作れる。とにかく全てはアイデアから始まるので、変えたいと思ったら、まずアイデアを出し、動かないといけないんです。そうでなきゃ現状維持でいいってことになってしまう。でも変えたいと思う人間が集まれば、きっと変わっていくと思うんです
―― マシ・オカさんが進めている企画とは?
去年の11月にsyfyに企画が売れたんですけど、ケーブル局は開発に時間がかかるので、これからパイロットの製作に取り掛かかるというところです。時空を飛ぶのはちょっと休憩したいけど(笑)、パラレル・ワールドに行って別の人生を生きるという話で、カンタンに言えば『タイムマシーンにお願い』meets『メン・イン・ブラック』という感じ。もちろん僕が主演するつもりで書いたんですよ
かつてIQ180を超える天才児として雑誌の表紙も飾ったこともあるマシだけに、どんな質問にもよどみなく答えるその頭の回転の速さと、巧みなユーモアを織り交ぜた会話術には脱帽! なNAVIでした。さらに吉本興業ともタッグを組み、日本でもバラエティを手がけることになっているというマシ・オカ。
彼のワールド・ワイドな活躍から今後も目が離せない!(海外ドラマNAVI)
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■プロフィール
マシ・オカ:本名 岡 政偉(おか まさより) 俳優・デジタル視覚効果アーティスト
1974年12月27日東京都生まれ 主な出演作『HEROES/ヒーローズ』映画『ゲット スマート」『燃えよ!ピンポン』など。
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Photo:マシ・オカ (c)FAM020/FAMOUS