『ブリッジ ~国境に潜む闇』マルコ役デミアン・ビチルに突撃インタビュー!
Instagram @aresluoga

北欧の大ヒットドラマが原作の本格ミステリーで、ドラマの舞台を北欧からアメリカとメキシコの国境に移して作られた『ブリッジ ~国境に潜む闇』。現在撮影まっただ中という時期ですが、なんと本作にメキシコの捜査官マルコ役で出演中のデミアン・ビチルがインタビューに応じてくれました。『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』のフェデル・カストロ役で一躍有名となったデミアンが、本作について何を語るのか。どうぞお楽しみください!

――今回出演される『ブリッジ ~国境に潜む闇』の主人公にデミアンさんが決まったときの率直なお気持ちをお聞かせください。

光栄にも私はドラマの方から作品の出演依頼を受けたんだ。私としてはまず脚本を読まなければ何も決められなかったし、その他にも監督や他のキャスト等にどういう人たちが関わっているのも気になるところだった。パイロット版は気に入ったし、ヘラルド・ナランホがディレクターを務めると聞いて期待感は高まった。そして私がかねてから仕事をしてみたいと思っていたダイアン・クルーガーがキャストに加わったと聞いて、プラス要素しかないプロジェクトだと判断したんだ。

――本作は、もともと北欧で放送されていた人気ドラマのリメイクということですが、脚本を担当したのが今や大人気の『HOMELAND』のメレディス・スティームと『HAWAII FIVE-0』のエルウッド・リードと聞きました。実際台本を読んでみてどう思いましたか? 演じる側としての感想をお聞かせください。

パワフルなストーリーで脚本が実に良く書けていると思ったよ。力強く、興味をそそるような登場人物たち。内容もセリフもインテリジェンスを感じさせられた。私が最も関心を持ったのはメキシコの描かれ方。ハリウッドはメキシコに対して独特な解釈をするので、その辺りがとても気になったんだよ。メキシコだけでなくて日本もそうなのか? そうだよね、それは(ハリウッドが抱えるべき)永遠の課題だ。でもこの番組のスタッフはスペイン語、スペイン語でのセリフ、そしてリアルなメキシコ人を演じる上で欠かせないボディランゲージに関する私の意見に耳を傾けてくれる。私は特にメキシコやフアレスの見え方を気にしているので(制作人とは)思ったことの意見交換は常にしている。提案が取り入れられ、よりリアル感を出すことに務めてくれることもあれば、制作側はハリウッド的な『リアル』、つまり現実とは全く異なる『リアル』に拘る場合もあるね。

――オリジナルであるスウェーデンのシリーズはご覧になられましたか?

オリジナル・シリーズが大絶賛されているから逆に見ないことにしたんだ。見たら絶対に惚れ込んでしまうだろうし、惚れ込んでしまったら自分の演技がどうしても影響を受けてしまう。非常に良い作品だからこそ自分をなるべく遠ざける必要があると思ったよ。今現在は全く見ていない。でもこの仕事が終わったらファースト・シーズンを通しで是非見てみたい。それだけの価値があると聞いているからね。

――デミアンさんが演じるマルコってどんな男ですか? マルコという人物の性格や言動について、デミアンさんが共感できるところはどこですか?

ハハハ、マルコと私自身は似ている面もある。二人とも情熱を持って人生と仕事に取り組んでいる。マルコは火の上を歩いてもやけどをしないような男だ。勇気がなければ汚職にまみれた環境で仕事はできない。この番組の良いところは国境の両側(米国とメキシコ)で行われている汚職に焦点を当てている。メキシコの問題だけに目を向けるのではなく、両国で行われている暴力についてクローズアップしている。もちろん違法薬物の取引も取り上げている。アメリカとメキシコはその点で直接繋がっているからね。なんせアメリカは未だに世界で最もドラッグを消費している国だ。メキシコとアメリカは隣りあわせだから両国が抱える問題から目を背けることは出来ない。マルコは天国から地獄の間をうまく渡り歩ける人物だ。善人、そして悪人のどちらともうまく付きあえる。彼はいろんな側面を持っている複雑な人物で感情表現の幅が広い。そこが又彼の魅力だ。私だけではなく、どんな役者でもマルコみたいな役に惹かれるはずだ。深みのない役には興味がないんだよ。演じるなら多面性のある役が望ましい。だから魅力的な役と巡り合えた時は全力で挑む。
マルコに一番共感できるのは最初に言った、彼の仕事に対する情熱じゃないかな。

――コンビを組むことになったソニア役のダイアン・クルーガーはどんな女性ですか? 一緒に仕事をしてみて感じることは?

彼女は世界で最も美しい女性の一人だけでなく、女優として、そしてモデルとしても活躍してきた才能豊かな人だ。このシリーズでは最も難しい役にチャレンジしているが、完璧にこなしているよ。ずる賢い要素をやりすぎずに絶妙なバランスで取り入れている。そういう演技ができる役者は素晴らしい。仕事相手としても最適だ。ユーモアのセンスが抜群なんだ(笑)。

――マルコとソニアの関係は今後どのように発展していくのでしょうか?

二人の関係? アメリカとメキシコのように複雑で深く、時には難しい関係だね。二人はそれぞれの国の象徴のような存在。文化、言葉、そして地理的にも違うけれど同じ問題を抱えている。二人は共通の課題を抱え、解決しなければならない。コンビを組むためには折り合って行かなければならないし、短時間で理解し合わなければならない。お互いに守り合い、気遣いながら共に問題を解決していかなければならないからだ。

――あなたは俳優一家で育ちましたが、子どもたちに演劇に興味を持たせるためにご両親が何かされたりしたのですか?

両親が私たちに演劇に関心を持たせるために特別に何かをしたという覚えはないよ。私たちには確実に役者の血が流れているからそんなことをする必要がなかった。遺伝だ。子どものころから両親について劇場のバックステージを出入りしていた。特別な体験だったからものすごく影響を受けたよ。神秘的でありながら真剣勝負の世界だからね。私たちが必要な知識は両親の持つスタジオに全てあった。両親の本棚が図書室代わりだった。幼年期の頃から私たちは劇場と言う『言語』でコミュニケーションをとった。

だけど私は家族の中の唯一の反抗者だったんだよ。プロのサッカー選手になりたいと思っていたんだ。未だにサッカーは大好きで機会さえあれば今もいつだってプレイするよ。そんな私を見て父は『おまえがサッカー好きなのはわかっているが、それ以上に演劇の世界はおまえを必要としている』とよく言っていた。

――メキシコの映画業界とアメリカの映画業界の違いについて教えてください。

私は幸運にも世界各国で仕事をさせてもらっている。コロンビア、ボリビア、アルゼンチン、過去にはスペンインでも多くの仕事の機会に恵まれ、アイルランドでも映画撮影をした。その経験から言えるのは、どこの国であろうと映画業界は同じだと言うこと。撮影方法は特に何も変わらない。国によって最も明確に違いが出るのは予算かもしれない。例えばアメリカでは大体においてどこの国よりも予算に余裕がある。そうすると他よりは時間をかけて作品作りができる。どの現場でも長時間労働が当たり前だけど、アメリカだったらそれが少しは緩和される。例えばメキシコだったら100万ドルの予算で映画が一本撮れる。アメリカだったら考えられない数字だ。インディ映画なら別だけどね。まあ、全ては予算がものを言う。そういうものだよ。予算が多ければ週末がオフになる(笑)。プラスアルファの要素が加わる。でもその違いは映画制作に直接関係していないところだったりする。例えば現場によって着替えをする楽屋の差があるかもしれない。でも楽屋なんて着替えられればいいんだよ。楽屋はなく、トイレで着替えをしなければならないような映画もやったよ。それもアリさ。良い作品さえ撮れればそんなことなど大したことではない。一番重要なのは質の良い映画を撮ることなんだ。

――撮影現場の雰囲気を教えてください。何かおもしろい出来事はありましたか?

撮影は私たちの仕事ではあるけれど当然現実世界ではない。真剣に仕事に取り組んでいるけれど、やっているのはドキュメンタリーではなくあくまでもフィクションだ。だから楽しんでやっている。というか真剣勝負の世界だからこそ、楽しまないとやっていけない。それにこの作品では素晴らしいキャストに恵まれている。このキャストの一員であることを誇りに思っている。堅実で才能豊かな仲間と楽しんで仕事ができるなんて最高じゃないか。
おもしろい出来事?う~ん、常に何かおもしろいことが起きているから特別なことは思いつかないな。まあ、我々はとにかく無理をせずに楽しんで仕事に取り組むことを重視している。長時間労働だし、寒い天候の中での撮影も少なくない。エネルギーを持続させるには気持ちを常に上げていかないとね。テイクの合間はいつも冗談を言い合って楽しんでいるよ。だけど当たり前だけれどみんなプロ意識が高いから常にふざけている訳にはいかない。仕事には真面目に取り組まないとね。

(海外ドラマNAVI)

Photo:(c)2013 FX Networks, LLC. All rights reserved.