
先日紹介した『ブリッジ ~国境に潜む闇』のインタビュー、デミアン・ビチルに続き、本作のプロデューサーである、エルウッド・リードにも突撃してきました!リードは、『HAWAII FIVE-0』『コールドケース』などでもプロデューサーを務めている人物。作り手としての話、是非お楽しみください。
―― 制作者という立場から見た、『ブリッジ ~国境に潜む闇』の魅力をお聞かせください。
なんと言っても、オリジナル・シリーズにとても惹かれたんだ。話の切り口が巧みで、見始めてすぐに「これは面白い展開になる!」って直感的にわかったんだ。スウェーデン版のオリジナルドラマ『Broen』を見た瞬間、絶対に(アメリカ版の脚本を)手掛けたいと興奮したよ。
――これまでの警察ものと、『ブリッジ ~国境に潜む闇』が違うところは、どんなところですか?
他の警察ものと違う点がいくつもあるよ。連続殺人犯が登場する作品というのは、最近では珍しくないけれど、このドラマの舞台はメキシコとアメリカの国境なんだ。あまり知られてはいないけれど、アメリカとメキシコの国境はフリートレード問題や、移民問題、そして両国がしかける麻薬戦争など、重大な政治問題が勃発する地点なんだ。そんな緊迫した状態の場所でドラマは展開するわけだから、そこからしてすでに他の警察ものとは違うんじゃないかな? 二人の刑事が連続殺人犯を追うという設定は珍しくないかもしれないけど、このドラマでは二人の主人公が互いに理解し、信頼し合うまでのプロセスが事件の解決に重要な役割を果たしているんだ。話が深まるにつれ、犯人が、自分を追いかけている側であるはずの二人のことを想像以上に知っているのが見えてくる。性格もバックグラウンドも全く違う二人が、力を合わせてこの事件を解決していかなければならない。普通に同じ管轄でコンビを組んでいる刑事ものシリーズとはそこが違うんだ。
――北欧からアメリカとメキシコの国境に舞台を移した本作。ずばり、見どころは?
アメリカ版は原作にある程度沿った作りになってるよ。スウェーデン版のオリジナルでは途中から消えてしまう登場人物が3人ほどいるんだ。金持ちの夫が死んでしまうシャーロットというキャラクター、それからスティーヴン・リンダーという謎の男、そしてマシュー・リラード演じるダニエル・フライというレポーターは、オリジナルではいつのまにかいなくなってしまうのだけど、アメリカ版では主要な登場人物になっていく。原作だと第5話辺りから殺人犯を追う二人の刑事に焦点が絞られてしまうんだ。
――正直なところ、視聴率には期待していますか?
視聴率は読めないね(苦笑)。僕らができることといえば、最高のシリーズを作り上げることのみさ。後はみんなが観てくれることを願うだけ。誇りを持ってこのドラマを作っているし、良い線行くんじゃないかと期待はしているよ。誰もが気になっているのは、ラテン系の反響がどうなのかということだ。そこがどう出るか、誰もわからない。アメリカには多くのラテン系がいるにもかかわらず、ヒスパニック文化を取り入れたテレビ番組は少ないんだ。だから彼らの支持を得られることを期待している。今のところ、現地での評判はもの凄くいいよ。
――キャスティングは大変でしたか?
実はすごく楽だったんだ。というのは、僕はもともとデミアン・ビチルとダイアン・クルーガーが、二人の主人公を演じているイメージで脚本を書いていたんだ。本当なんだ! それで、まずはダイアンにアプローチをした。彼女と2回ほどミーティングをした後、いくつかの質問に答えているうちに、彼女が出演を引き受けてくれることになったんだ。次にデミアンに脚本を送った。脚本を読み終わった彼からも、「出演したい」という返事をもらったんだ。こんなに上手くいくことってほとんどないと思うよ。でも夢のようなことが現実になったんだ。なぜだかわからないけれど、本当にスムーズに話が決まった。僕としては脚本が良かったからだと思いたいけど(笑)、とにかく思い描いた通りになった訳さ。
――今シーズンの撮影はどこまで進んでいますか? セカンド・シーズンについても考えていますか?
月曜日(7月15日)に第10話の撮影を開始する。それを撮り終われば、残りは3話だ。セカンド・シーズンはファースト・シーズンの視聴率次第だろうね。でも多分大丈夫だ。セカンド・シーズンからが本当のチャレンジになるんじゃないかな? セカンド・シーズンの展開で伸び悩む番組は多いからね。パイロット版は素晴らしかったのにシリーズ化したとたん、面白さを失う番組も少なくない。でもこのドラマでは国境絡みのストーリーがいくつも重なっているから、毎週、新しいストーリーが明かされていくんだ。
――一人の犯人が連続して事件を起こしているんですか?
このシーズンでは一人の犯人を追っていくのだけど、実は、一つの事件の中で複数の人が殺人を犯しているんだ。だから、暴力的なシーンは少なくない。だけど主人公の二人が追っているのは、あくまで一人だ。その犯人もドラマが始まって割とすぐに正体が明かされる。『THE KILLING ~闇に眠る美少女』のように、犯人が誰なのかわからないままシーズンが終わるということはないよ。そしてシーズンが終わる前に事件は解決するけれど、そこから新たな展開が始まるんだ。
――最近のテレビでは、なぜこんなに連続殺人犯がこんなにもフィーチャーされているのだと思いますか?
それはわからないな。ただこの種のストーリーは、オペラ的な展開をしていくことが多い。連続殺人犯をフィーチャーすることによって、非凡なキャラクターを描くことができる。非凡といっても、実際に存在する訳だけどね。血が凍るような恐ろしい事件を起こす人たちは実際にいるんだ。駐車スペースを横取りされたから衝動的に殺したという話とは違い、連続殺人犯は何と言えばいいかなぁ...ある種の哲学を持っている。彼等は誘惑的な面を持っていて...ある意味バンパイアに通じるところがある。人を惹きつける力を持っているんだ。彼等に魅了されるのは、彼等の心理状態を理解したいと思うからじゃないか? ジェフリー・ダーマーやテッド・バンディー等の実在する連続殺人犯などの例を見ても、彼等がなぜあんなおぞましいことをするのかは理解しがたい。それを理解しようと必死になるから、惹きつけられてしまうんじゃないかな? 連続殺人犯を追う人たちも、興味をそそるキャラクターばかりだね。
――アメリカ版がオリジナルを超えていると思うところはどこですか?
僕はもともと小説家としてスタートしたんだ。だからいくつものストーリーが絡み合う一つの作品をケーブルテレビでやらせてもらえるのはとても嬉しいんだ。アメリカの場合、ケーブル局と地上波のテレビ局では大きな違いがある。地上波では放映できるものがものすごく制限されてしまう。それに対して、ケーブル局はエモーショナルなストーリーから逃げず、登場人物の私生活にもぐいぐい深く食い込むことができるんだ。ライターとしては何週間もかけて深みのある登場人物を作り上げていくのが面白いよ。だけれど地上波のテレビ局では主人公たちの人物描写にあまり時間をかけられないんだ。
――政治色の強いテーマも扱っていますが、脚本を手掛ける前にリサーチに時間をかけましたか?
実はメキシコとの国境問題についてのニュースを追っていた時期があったんだ。ニューヨークタイムズ紙や雑誌などの記事で、よく取り上げられていたから目にすることが多かった。チャールズ・バウデンが手掛けた、国境付近が抱える問題点について追及した「Murder City」という本も読んでいた。僕にとっては非常に興味深いテーマだったんだ。実は、この作品の話が舞い込んできた当初は、カナダとの国境という設定だったんだ。しかしカナダとアメリカでは似すぎていて、話にならないということになった。そんな時、メキシコとの国境にするべきだと閃いたんだ。メキシコとの関係を描いたドラマは今までにないからね。多くのアメリカ人はメキシコとの国境について無関心だ。僕はリサーチのために、ホアレスまで直接行ってしばらく滞在してみたりもしたよ。息子を亡くした母親の話を聞いたりもした...。ホアレスを熟知しているなんて思ってはいないけど、あのエリアについて多くの書物を読んだ。もちろん、オリジナル・シリーズも参考にしたね。
――撮影現場の雰囲気を教えてください。何かおもしろい出来事はありましたか?
僕は撮影現場には毎日行くよ(苦笑)。我々は「笑顔で安く仕上げる」というモットーで仕事をしている(笑)。予算はあまりないので一日の撮影時間は長い。スタッフには最高に恵まれているね。毎日、100メートル走のように全力で挑んでいるよ。クレイジーで信じられないことが連日起きるているよ。常に時間に追われているし、砂漠での撮影が多いからとにかく暑い。役者は睡眠時間が足りないし、とにかくクレイジーな毎日だ。今まさに、終盤に差し掛かっているところだ。僕が書いた脚本が役者の手に渡ると、彼等はいろいろと質問をした上で役柄を自分のものにして、それから撮影に入る。ところが撮影をしてみると「このシーンは全然だめだ」と気づかされることもある。そんな時は書き直しだ。でもそれが僕の仕事だからね。そうやって、より良い作品作りを目指している。このドラマの出演者は皆、勘がいい。つじつまが合わないと思う箇所があれば「エルウッド、ここは変だと思うんだよ。こうしたら?」と提案をしてくれるんだ。
(海外ドラマNAVI)
Photo:『ブリッジ ~国境に潜む闇』(c)2013 FX Network. All rights reserved.