空前のアメコミ・ブームによって映画・TVでユニバースを形成しているアメリカン・コミックスの世界。その2大巨頭がDCコミックスとマーベルだ。マーベルがまず映画でユニバースを形成したのに対し、DCコミックスはTVの方で着々とユニバースを展開。マーベルが『エージェント・オブ・シールド』でTV界に参入するよりも早く、積極的にドラマ・シリーズを制作していた。その皮切りとなったのが、2001年からTHE CWで放送された『ヤング・スーパーマン』だ。この作品自体は他作品とのユニバースを形成していたわけではないが、劇中にはグリーン・アローやリーグ・オブ・アサシンなども登場。10年続いたこのドラマの成功が、現在のTV界でのDCコミックスの快進撃に繋がったのだ。
『ヤング・スーパーマン』がDCユニバースのきっかけだとしたら、それを躍進させたのが『ARROW/アロー』だ。長らく局の看板番組だった『ヤング・スーパーマン』が終了した翌年、局のイチオシ番組として華々しくスタートした『ARROW/アロー』は、その期待通りの成功を収め、たちまち看板番組へと成長。グリーン・アローことオリバー・クイーンを主人公に、彼のスーパーヒーローとしての成長物語を描き、現在も人気を集めるシリーズになっている。そしてこの『ARROW/アロー』の成功を受け、DCユニバース第二弾として2014年に制作されたのが『THE FLASH/フラッシュ』だ。超高速移動が武器のフラッシュことバリー・アレンを主人公にした本作は、まずシリーズ化される前にバリー役のグラント・ガスティンが『ARROW/アロー』のセカンド・シーズンにゲスト出演。本来これがパイロット版になるはずだったが、急遽正式なパイロット版が別に制作され、スーパーヒーロー、フラッシュの誕生物語が描かれている。悪役で『プリズン・ブレイク』で兄弟を演じたウェントワース・ミラーとドミニク・パーセルが揃って出演していたりと話題にも事欠かず、本国アメリカでの人気も上々。日本でも大いに期待されているドラマだ。
アロー役のスティーブン・アメルもフラッシュ役のグラント・ガスティンも、この作品をきっかけに大ブレイク。それぞれに魅力的なイケメンの活躍ぶりはそれだけでも見どころ満載だが、やはりこの2作の醍醐味はクロスオーバー・エピソード。制作が同じグレッグ・バーランティである上、同じ局で放送されているので毎シーズン、積極的にクロスオーバーが展開される。別々の作品がひとつの世界観を共有するクロスオーバーはアメリカン・ドラマの楽しみのひとつだが、元々世界観が共通する『ARROW/アロー』と『THE FLASH/フラッシュ』のクロスオーバーはユニバースが広がっていく面白さを実感できるのがポイント。元々コミックスでそうした展開をしてきたアメコミはまさにクロスオーバー向きの作品だと言えるだろう。
クロスオーバーが難しい場合でも、様々な遊び心を取り入れられるのもアメコミ作品の魅力。例えば今年の秋から全米でスタートする『SUPERGIRL』は同じくグレッグ・バーランティ制作のドラマだが、THE CWが放送を見送ったために親会社のCBSで放送される事になったといういきさつがある。制作者が同じとはいえ、他局での放送、そしてまずはシリーズ化される事が先決という事もあり、少なくともファースト・シーズンでのクロスオーバーに関しては否定されている。だがそこはDCユニバース。『ARROW/アロー』『THE FLASH/フラッシュ』とのプロモ映像でのコラボが進行中なのだ。これで『SUPERGIRL』が成功すれば本編でのクロスオーバーの可能性も高まるだろう。また昨年NBCで放送されたが残念ながら1シーズンでキャンセルとなってしまった『CONSTANTINE』から、主演のマット・ライアンが同じ役で『ARROW/アロー』に出演する事が決定。番組は終了しても別の形でコラボが実現するのも、ユニバースの面白さだ。そんな中、米FOXで放送中で、同じDC作品の中でも唯一趣を異にしている『GOTHAM/ゴッサム』とはさすがにコラボは難しいと思いきや、『THE FLASH/フラッシュ』には確かにゴッサム・シティとも繋がっているんだ、と思わせてくれるシーンが登場。フラッシュが行方不明になった記事が掲載された新聞。その下にはウェイン産業の系列会社とクイーン産業の合併の記事が...。『ARROW/アロー』にもゴッサム・シティと関係するヴィランが登場したりと、細かい部分でもしっかりとユニバースが形作られ、ファンを楽しませてくれる。
まさに破竹の勢いで広がっていくDCワールドだが、全米では来年、DCユニバースの決定版とも言うべき、『ARROW/アロー』と『THE FLASH/フラッシュ』のキャラクターが一挙集結する『LEGENDS OF TOMORROW』の放送も既に決定している。果たしてDCユニバースがどういった広がりを見せるのか、まだまだ目が離せそうにないが、まずはその要となる『ARROW/アロー』と『THE FLASH/フラッシュ』でしっかりとその世界観をチェックしておくのが最良だ。
Photo:『ARROW/アロー』『THE FLASH/フラッシュ』『GOTHAM/ゴッサム』
(C)2015 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.