怒りも性欲も爆発中のロンドン女性が主人公の『Fleabag フリーバッグ』。幸せな暮らしを手に入れようと足掻くほどに、人間関係はもつれるばかり。前シーズンと同じくロンドンを舞台にしたシーズン2が、3月上旬から英BBC ThreeとBBC Oneで放送がスタートした。
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♦︎ちょっと強めの性欲が招く、けっこうハード目の人生
常識のなさをエネルギーでカバーして生きる女、フリーバッグ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ『クラッシング』)。シーズン1はムダ毛処理とセックスの話から始まる強烈なオープニングの後、開始1分でベッドシーンに突入して視聴者を驚かせた。オバマ前大統領の演説ビデオにも欲情するほど性欲旺盛なフリーバッグは、融資の相談で訪れた銀行でも下着姿になるなど、無意識のうちに問題を引き起こす性分。
そして彼女の代母(オリヴィア・コールマン『ブロードチャーチ ~殺意の町~』)もまた、セックスの尊さを訴える美術展を開くという、インパクト絶大な人物だ。昨シーズンのフィナーレで姉クレア(シアン・クリフォード『Vanity Fair(原題)』)は、フリーバッグが自分の恋人を奪おうとしたと誤解。緊張は美術展の会場でピークに達し、フリーバッグは家族から孤立する惨めな立場となった。
2期目となる今シーズンは、前作から1年後の世界を描く。父(ビル・パターソン『アウトランダー』)と代母の婚約を祝うディナーの席で、良い娘を演じようとするフリーバッグ。しかし家族とはまだ距離があり、会話もぎこちない。一夜限りの恋に興じなくなったなど前進も見えるが、その内面にはまだ傷を隠し持っており...。
♦︎どんどん追い込まれるシーズン2
新シーズンの評判は非常に良く、Telegraph紙とGuardian紙はそれぞれ満点の5つ星を進呈。さらにレビューサイト、ロッテン・トマトの評価も批評家・観客のスコアともに100点満点を記録している。
のっけから興味を惹かれる、とTelegraph紙は新シーズンを賞賛。不幸がフリーバッグを襲うほどに、気の毒とは思いつつもシニカルな笑いが込み上げる。ディナーの席では父親から、あまりにも酷い誕生日プレゼントが。その残酷さは、ストーリーの根底にあるむごさを象徴しているかのようだ。フリーバッグは現代の悲劇のヒロイン、と同紙。
ディナーには、のらりくらりと生きる父、身勝手な代母に加え、前シーズンで一悶着あった姉クレアが同席。クレアはフリーバッグが恋人を奪おうとしたといまだに誤解しており、許す気配を見せない。テーブルの空気は重く、怒りと憎しみ、そして裏切りの気配に満ちている、とGuardian紙。問題山積みのシーズン2が動き出す。
♦︎またとない脚本、またとないキャスト
完璧な脚本の下、すべてのキャストがパーフェクトな演技を見せる作品、とGuardian紙は絶賛。脚本は主演のフィービーが書き下ろしている。エッジ鋭く研ぎ澄まされた会話が次から次と放たれ、ジョークとあまりの厚かましさに笑い転げてしまう、と同紙は述べている。そして次の瞬間には、古傷をえぐるような展開が。フリーバッグとともに人生の厳しさを味わう作品でもある。
フィービーの書く脚本については、Telegraph紙も称賛。巧みなストーリー進行のおかげで、フリーバッグという人物の理解が進む。実の母は失踪、実の父は役立たず、代母はまるでモンスターという境遇の彼女。残酷な脚本がフリーバッグの個性を際立たせている。
恋に落ちやすいロンドン女性を描く『Fleabag フリーバッグ』シーズン2は、英BBC ThreeとBBC Oneで放送中。シーズン1は日本からもAmazon Prime Videoで視聴可能。(海外ドラマNAVI)
Photo:
アンドリュー・スコット、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、フィオナ・ショウ
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