『The Twilight Zone(原題)』は、1959年から放送された『トワイライト・ゾーン』のリブート版。毎週違ったテーマで繰り広げられる不思議なエピソードが、毎日の生活に刺激を与えてくれる。日本の番組に例えるなら『世にも奇妙な物語』をイメージするとわかりやすいだろうか。ストリーミングサービスの米CBS All Accessで、4月上旬から独占配信中。
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第1話「The Comedian」人生を犠牲に笑いを取る男
売れないコメディアンのサミール(クメイル・ナンジアニ『シリコンバレー』)は憧れのウィーラー(トレイシー・モーガン『30 ROCK/サーティー・ロック』)に偶然出会い、「プライベートの生活を芸に活かしなさい」という謎めいたアドバイスを受ける。早速ステージで飼い犬をネタにすると大ウケするが、"はて、犬など飼っていたか"と後で疑問が湧き上がる。私生活をコメディのネタにすれば大爆笑が約束されているが、トークとして切り売りした事実はサミールの人生から消え去ってしまうのだ。
手違いで笑い話に甥を登場させ失ってしまった彼は、恐ろしいアイデアに思い当たる。人生の邪魔になる人間のエピソードをステージで語れば、その存在を故意に消せるのではないか、と。同じお笑いを生業とするライバルの名が脳裏に浮かんだライアンが、早速舞台でその名を口にすると...。そのほかミステリアスなエピソードが毎週配信されるアンソロジー・シリーズ。
『トワイライト・ゾーン』をリブート
今作もメッセージ性に富んだシリーズだ、とNew York Times紙は評価。実は60年前のオリジナル版も単なるSFホラーではない。ミステリアスで興味深いストーリーで人々の興味を引きながら、当時テレビで扱うことがタブーにも近かった、偏見や人間の弱さなどに関するメッセージを巧みに潜ませていたことで知られる。今作でも社会問題を基本テーマに据えている点は共通。一例として第3話「Replay(原題)」では、時を駆ける黒人の母親ニーナ(サナ・レイサン『NIP/TUCK マイアミ整形外科医』)が登場。息子に良い暮らしをさせようと何度も時間を遡って人生をやり直すが、アフリカ系アメリカ人にとって生きづらい米国社会の壁がその度に邪魔をする。
このエピソードはTIME誌もピックアップしている。作中の親子は警官による妨害を受けるが、現実にも警官に射撃されて黒人が死亡する事件が起きており、実在の複数の事件を思い起こさせる。こうした問題提起をする本作を、同誌はオリジナル版の完璧な後継作だと評価。リブートに期待される水準をしっかりと満たすシリーズとなった。
惜しまれる配信形式
難点はその配信媒体だ。CBS All Accessは有料サブスクリプションが必要なネット配信サービスであり、限られた視聴者しかアクセスできない。TIME誌によると、昨年夏時点での同サービスの登録者数は250万人。これはCBSが『ビッグバン☆セオリー ギークなボクらの恋愛法則』で毎週獲得している視聴者数の5分の1程度に留まる。オリジナルはまだ番組の選択肢が少なかった時代に放送され、一世を風靡する流れとなった。60年前のオリジナルよりも圧倒的に不利な状況だが、肩を並べられるかは内容次第といったところだろう。
状況も当時とは違い、元祖『トワイライト・ゾーン』の精神を継承した『X-ファイル』や『ブラック・ミラー』など、超常現象や社会風刺を含むホラー作品はほかにも多く製作されている。求められる品質が上がるなか、やや時代遅れの感もあるとNew York Times紙は指摘。しかし3話以降で格段に面白くなってきているのも事実であり、シーズンを通してどこまで内容を深められるかに期待がかかる。
名作の看板を背負った『The Twilight Zone』は、米CBS All Accessで配信中。(海外ドラマNAVI)
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クメイル・ナンジアニ(C)Kathy Hutchins / Shutterstock.com