メキシコとアメリカの国境の街を舞台に、ジャーナリズムが政治の闇に挑む様を描くNetflixオリジナルシリーズ『ティフアナ』。ティフアナと言えば、マイケル・ダグラス、ベニチオ・デル・トロ出演の映画『トラフィック』を思い出す人もいるだろう。そこで描かれたように殺人や麻薬犯罪が横行する街として不名誉な知名度を得ている。近年は日本企業も進出して雇用を生み出し、その顔を変えてきているというが、ジャーナリストにとって「一番危険な街」とドラマは始まる。物語はフィクションだが、街が置かれた真実の状況が見え隠れするスリリングな展開に手に汗握る。とくに『ナルコス』『エル・チャポ』のファンは必見だ。
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都合の悪いものは消される街 知事候補殺人事件の真相に迫るジャーナリスト
メキシコのティフアナではジャーナリストが殺される事件が多発していた。なかでも、20年前に起きたフレンテ・ティフアナ紙創設者の暗殺事件は、言論の自由と情報の公開を妨げた殺人として扱われていた。
そんななか、労働者階級から州知事へと立候補した男がいた。しかし候補者は、街の有力ビジネスマンとの極秘会議の帰りに射殺される。フレンテ・ティフアナ紙のジャーナリストたちは、この殺人の謎を解くために危険をかえりみず独自調査を始めるのだった。
メキシコのいまを伝える秀作
政治スリラーファンでなくても、このような作品は「正義が勝つ」という流れがすでに予想できる。しかし、そこにメキシコの現状というスパイスをちりばめたのが本作だ。
Decider誌は「現在のメキシコという背景が加わると、過去20年間にわたり、その地でジャーナリストとして生きることがどれだけ危険なものだったのか、架空の人物を通して力強く説明する」としている。そして、「(ジャーナリストたちのチームが)どうやって候補者殺人を解き明かしていくのか見ごたえがあるだろう」とレビューを締めくくる。
同じように、メキシコという舞台背景が魅力的であると評価するのがDaily Dot誌だ。「アメリカ発のジャーナリストを主人公にしたドラマは良いものがない」と書く同サイトは、メキシコの真実の姿を垣間見ることができるという点でも『ティフアナ』を評価している。メキシコというとアメリカとの国境のことばかり問題になるが、このドラマでは、ティフアナ市内の煌びやかなレストランやバーに通う有力ビジネスマンなどを映し出し、政治、社会、そして犯罪が共存するティフアナという街の全貌を見ることができる。
その街で真実を探すのは血気溢れる若いジャーナリストたち。そして彼らを見守る年配の記者たち。年配の記者は、深追いすると愛するものをなくすことになると身を持って知っている。そして、その中間で悩む一人の中年ジャーナリスト。たとえ候補者殺しの黒幕を見つけたところで、それは氷山の一角に過ぎない。歯がゆい思いを白熱の演技で見せる。
Daily Dot誌がハリウッドで名が知られているAリストの俳優がいれば、「放映権をめぐって熾烈な戦いとなるだろう」と予想する通り、一見地味に見える『ティフアナ』は、その実、私たちの心を強く揺すぶる強い作品となっている。
『ティフアナ』シーズン1はNetflixで独占配信中。(海外ドラマNAVI)
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Netflixオリジナルシリーズ『ティフアナ』