米CWのDCドラマ『レジェンド・オブ・トゥモロー』は、はみ出し者のタイムトラベラー集団"レジェンド"が、時空を飛び越えながら悪と闘う姿を描くSFアクションシリーズだ。CWが放送するアローバース(CWverse)の一環で、特に『レジェンド・オブ・トゥモロー』においては、毎シーズン、趣向を凝らしたスウィング・エピソードが挿入されるのが特色だ。
シーズン5においては、登場人物が『フレンズ』や『ダウントン・アビー』の世界に迷い込んでしまうという視聴者の度肝を抜く展開があるなど、独特の世界観でファンにアピールしている。このほど、ショーランナーのグラウニア・ゴッドフリー、フィル・クレマー、ケト・シミズの3人が、番組の趣向や来歴、内容に影響したポップ・カルチャーについて、米Entertainment Weeklyのインタビューに答えている。
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『レジェンド・オブ・トゥモロー』に最も影響を与えたポップ・カルチャーは?
ケト・シミズ(以下シミズ):(ジェーン・オースティンの)『分別と多感』みたいな時代ものや『エクソシスト』みたいなホラーもあったね。シーズン6は20世紀半ばのB級SF作品が詰まっていて、『エイリアン』、『コクーン』、『E.T.』の美的センスにも言及している。半分冗談だけど『クリッター』もあるよ。
フィル・クレマー(以下クレマー):音楽ではリプレイスメンツだな。「Bastards of Young」は一時テーマソングだったよ。歌詞が頭にこびりついてね。「なんてメチャクチャなんだ/成功という梯子に/一歩踏み出して完全に踏み外す」 ヴォーカルのポール・ウェスターバーグはぶっ飛んでたけど、相反する感情を併せ持っていて才能あったね。『レジェンド』のキャラクターも矛盾した感情を内包しているんだ。外側はハードだけど、内側は自己破壊的で、怒っていて、自分を見失っていてなにか繋がりを求めている。
グラウニア・ゴッドフリー(以下ゴッドフリー):常に参照した映画がいくつかある。『ラスト・オブ・モヒカン』、『カサブランカ』、『ウィロー』...。サラとエヴァの別れは、『ラスト・オブ・モヒカン』でダニエル・デイ=ルイス(ナサニエル役)がマデリーン・ストー(コーラ役)に、「何があっても生きるんだ。ぼくは必ず君を見つける」と告げるのと同じテンションの高さだと思う。『カサブランカ』の(ハンフリー・ボガートが演じる)リックは、実は魔術を使わないジョン・コンスタンティンで、『ウィロー』は色んなジャンルにまたがってて、まるで『レジェンド・オブ・トゥモロー』と一緒。ファンタジー、コメディ、チャンバラまで。ヴァル・キルマーのマッドマーティガンには首ったけになった。
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一人の脚本家としてインスパイアされたものは?
クレマー:正直言って説明できないな。僕が書くものと僕がこれまでに消化してきたものは不可分なんだ。影響を受けたのは一緒に書いている人たちだろうね。
シミズ:キャラクター重視のホラー、世界を構築するファンタジー(J.R.R.トールキンは、子どもの時からハマっている)、コミックブック、世界の神話から多くインスパイアされたかな。
ゴッドフリー:ウィリアム・ゴールドマン、ミカエラ・コール、スコット・フランク、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、それにジョーダン・ピールは全員本物の伝説的存在ね。アクション映画も好き。ジョン・ウーやガイ・リッチーの作品はやめられない。
脚本家になった理由は?
シミズ:8歳の時にバーンズ・アンド・ノーブル(アメリカで最大の書店チェーン店)で時間を潰していた時に、ポール・ディニとブルース・ティムのグラフィックノベル「バットマン:マッド・ラブ」に遭遇したの。TVアニメの『バットマン』シリーズを作った天才ね。今も昔も番組のファンで(首の後ろにバットシグナルのタトゥーがあるの)、座って本を読み始めた。とても感動的で感情をかき乱されて、美しい話だった。本を置いた時、私も彼らと同じように、感動的でエンタテイニングな話の創造に人生を捧げることを決心したの。
クレマー:もう一度言うけど、最初から脚本家を志していたわけではないんだ。他のライターと一緒に仕事するということの方が重要だ。もし自分一人でやらなければならないとしたら、明日にでも辞めているよ。それと無料のランチだ。家で働くことの最悪の問題は、無料のランチがないことだよ。
ゴッドフリー:子どもの頃、父と一緒に昔の映画を見るのが夜ふかししてもいいたった一つの理由だった。父はハンフリー・ボガードとケリー・グラントが大好きで、もちろん彼らは素晴らしいけど、私は彼らの愛情の対象になるだけじゃない女性を見たかった。そしてリュック・ベッソンの『ニキータ』が現れた。主人公はタフであると同時にもろくもあって。映画の最後ではニキータは男を選ばず一人で日没の中を去っていくの。
最も影響を受けたメンターは?
クレマー:最初のボスであるロブ・トーマス。彼は『ヴェロニカ・マーズ』を作って、僕に最も必要としている仕事を与えてくれた。最初、ティーンエイジャーが主人公のノワール刑事ものって話を聞いた時は、今まで聞いた中で最もクレイジーだと思ったね。だけど、僕は仕事を必要としていて、ロブと一緒に仕事をやり始めて、そうクレイジーでもないことに気づいた。舞台設定はそう重要じゃないんだって。どう見せるかがすべてなんだ。彼が僕に与えてくれた最高のアドバイスは、「自分の書くものに全力で奮闘しろ」だ。思うにこれは古い格言の「書くことは書き直すことだ」の別の言い回しだね。
シミズ:私が最初に仕事をさせてもらったショーランナーの一人であるアナ・フリックは、仕事と生活のバランスをどうとるか、素晴らしい例を見せてくれた『ビーイング・ヒューマン』を書いていた時、彼女は3人の子を産んだの。番組のショーランナーであることと家族のために一緒にいることをあれだけ見事にこなすのに、畏敬の念を持った。私も今はワーキングマザーだけど、番組のタフなショーランナーと、子どもが必要としている時にそばにいる母親を両立させる、アナという素晴らしい人に出会えたことに感謝している。
ゴッドフリー:グレッグ・バーランティとフィル・クレマーが『トゥモロー・ピープル』という番組で最初の仕事をくれたの。プロデューサーや脚本家たちが歓迎してチームに迎え入れてくれた。最初の仕事で嫌な経験をしたせいで業界を去ったアシスタントやライターたちのことを考えると、キャリアの初期にそういうチームに迎え入れてもらったことに感謝している。
あなたが見てきた作品の中で、自分が書いていたらというTVや映画はある?
クレマー:『ギャラクシー・クエスト』を自分で書いていたらと思わない奴がいたら、そいつは嘘つきだね。パーフェクトなアイデア(舞台設定は重要じゃないと言ったのは認めるけど、これは文句なしだ)、そしてもちろん、完璧な演出だ。
ゴッドフリー:米Cinemaxの『ウォリアー』は、時代ものとマーシャルアーツの見事な融合だと思う。基本的に西部劇なんだけど、主人公がジョン・ウエインの代わりに大勢のアジア系の俳優がアメリカの歴史を体現しているの(1800年代のサンフランシスコへの中国系移民)。画面上では稀にしか見れないわね。
これまでのキャリアで、やりたくてたまらないんだけどまだやってないことは?
クレマー:人が後ろめたい思いをしないで好きなことを公言できる番組を作りたいね。だいたい人が『レジェンド』について誉めることのほとんどは、「実際のところ、いい番組じゃないか!」ってことなんだけど、当然いい番組なんだよ。頭がよくて才能があるスタッフが一生懸命仕事してんだから。
シミズ:ホラー番組を書いてみたい! 日本人もしくは日系人を主人公にした話も書きたい。コミックやグラフィックノベルを読んで大人になっているから、いつかはコミックブックシリーズも書いてみたいね。
ゴッドフリー:サラ役のケイティ・ロッツとアンドリュー・コージ(『ウォリアー』)主演でアクション映画を書けたら最高ね。銀幕が二人のホットさとヤバさをうまく伝えられるか疑問だけど、ぜひやりたいわ。
『レジェンド・オブ・トゥモロー』はシーズン6がCWにて放送中。
(翻訳/生盛健)
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