ニューヨーク・タイムズ紙の人気コラムに基づく珠玉のアンソロジー・ドラマ『モダン・ラブ』が、より多様性に満ちた新エピソードとともに帰ってきた! Amazon Prime Videoにて8月13日より独占配信を開始したシーズン2では、ニューヨーク州とアイルランドのダブリンを舞台に、コロナ禍やLGBT、睡眠障害、ダブル不倫など、さまざまな状況に置かれた主人公たちが、それぞれの"愛のカタチ"を模索する。【ドラマ・レビュー】
ジョン・カーニー(『はじまりのうた』)が再び企画/監督/製作総指揮/脚本を務め、キット・ハリントン(『ゲーム・オブ・スローンズ』)やアンナ・パキン(『トゥルーブラッド』)ほか今回も海外ドラマでお馴染みの豪華俳優陣が勢揃い。世界が不安定な状況にある中、「愛にルールはない」というカーニー独特の優しい視点で、外出もままならない視聴者の鬱屈した心をとことん癒してくれる。
前シーズンほどド派手なミュージカル演出やサプライズな仕掛けはないものの、本シリーズでは、"真実の愛"を模索するよりリアルで奥深い物語が次々と登場する。「彼を悩ます夜行性の彼女、昼の喧騒を嫌うのは病気? それとも現実逃避?」「亡き夫の思い出が詰まったポンコツ車、次の一歩を踏み出すために彼女はその車を廃棄すべき?」「幼なじみの男の子に恋心、このまま親友でいいの? 一線を超えたらどうなるの?」―。
まさに「あなたならどうする? どう感じる?」の問いかけオンパレードだが、中でも興味深かったのが、カーニー自らがメガホンを執った第3話『(ダブリンの)見知らぬ乗客』だ。ヒッチコックの名作を比喩したようなタイトルだが、物語は交換殺人の持ちかけではなく、帰省する男女(キット&ルーシー・ボーイントン『ボヘミアン・ラプソディ』)が成り行きで同じ席に着いたことから始まる恋物語。
面白いのは、メアドや電話番号など連絡先を一切交換せず、「28日後、駅で会おう」と約束するところ。何かあった時のための保険をかけない、いわば運命の懸け。ところがそこに立ちはだかるのが、コロナ禍という緊急事態。自らアナログ時代の不便さに身を追いやり、そこにパンデミックが押し寄せるという状況下、彼らは一体どんな行動をとるのか?というサスペンス仕立てが実に面白い。
このほか、不倫された側の男女の恋や、離婚して再び恋に落ちた不思議なカップル、さらには同性愛に目覚めた思春期の恋など、さまざまな愛のカタチが登場するが、どんなに文明が発達しても、どんなに偏見があっても、愛をたぐり寄せるのは本人同士の気持ちの強さ。『モダン・ラブ』の根本には、そんな不変的なテーマが隠されているような気がする。
(文/坂田正樹)
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『モダン・ラブ』シーズン2 ©Amazon Studios