質の高い海外ドラマの代名詞として世界中のファンを魅了し続けるHBO(HBO Max)作品が、U-NEXTでの配信終了期限を迎えようとしている。長編シリーズを今から全話完走するのは困難だが、数話で美しく完結するミニシリーズなら、休日や週末の1日だけで十分に観切ることが可能だ。今回は、圧倒的なクオリティと没入感を誇り、1日で一気に観られる至高のHBOミニシリーズ7選をご紹介しよう。
極上の演技と現代的アプローチが光るHBOの人間ドラマ
『ある結婚の風景』(全5話)

巨匠イングマール・ベルイマンによる歴史的名作を現代風に再構築したHBOミニシリーズ。オリジナル版は夫婦生活の生々しいリアルさを描いて世界に衝撃を与えたが、HBO版では監督のハガイ・レヴィが1970年代以降の性役割や子育て観の変化を反映させ、見事なアップデートを果たした。
劇中では、オスカー・アイザック(『ムーンナイト』)演じるジョナサンとジェシカ・チャステイン(『ツリー・オブ・ライフ』)演じるミラの夫婦が、研究の面談に応じるシーンから始まる。二人の答え方の微妙なニュアンスの違いから、夫婦間の価値観のズレが浮き彫りになっていく。オスカーとジェシカは映画『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』でも夫婦役を演じており、その二人が魅せる痛々しいほどリアルな化学反応は観る者の心を揺さぶる。「関係性のために戦い続ける価値はあるのか」という普遍的な問いを投げかける至高のドラマだ。
『ミルドレッド・ピアース 幸せの代償』

大恐慌時代のカリフォルニアを舞台に、家族を養うために泥臭く生き抜く女性の半生を描いた重厚なドラマ。『ベルベット・ゴールドマイン』や『キャロル』で知られるトッド・ヘインズが監督・脚本を務めた本作は、主演のケイト・ウィンスレットが圧倒的な存在感を放つ。
突然の離婚によって幼い娘二人を抱え、路頭に迷うことになったケイト演じるミルドレッド。ウェイトレスの仕事からパイの販売、そして自身のビジネスへと這い上がっていく泥臭い努力の過程と、エヴァン・レイチェル・ウッド(『ウエストワールド』)演じる成長した長女との決定的な対立が見どころだ。映画『ザ・ファイター』でオスカーを受賞したメリッサ・レオやガイ・ピアースら実力派キャストが脇を固め、現代の経済的不安にも通じるリアルな恐怖と情熱を極上の映像美で描き切っている。
『レイン・ドッグス フツウじゃない家族』

血の繋がらない「疑似家族」を描いた作品は温かい人間愛で溢れがちだが、本作は一線を画す。ストリッパーをしながら作家を目指すシングルマザーのコステロと、服役を終えたばかりで服従心とサディズムを併せ持つ富裕層のゲイ、シルビー。歪で破壊的な二人の依存関係を中心に描く痛快なブラックコメディである。
共依存関係が子どもに与える危険を描きつつも、どこか憎めない人間の愚かさと家族への切望が物語を引っ張っていく。まるで舞台演劇のような生々しい感情のぶつかり合いは、観る者を惹きつけて離さない。
実話ベースのサスペンスと圧巻の歴史劇
『チェルノブイリ』

1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所爆発事故の真相と、現場で命を懸けた人々の姿を描いた実話ドラマ。エミー賞で作品賞・脚本賞を含む多数の部門を制覇した本作は、大ヒットドラマ『THE LAST OF US』でクリエイター兼共同ショーランナーを務めたクレイグ・メイジンが手掛けた。
ソ連時代の独特な空気を再現した色調と静かな演出、そして圧倒的な脚本力により、技術的なテーマでありながら一瞬たりとも目が離せない緊張感が続く。歴史的事実を知っていても息をのむ展開の連続であり、ミニシリーズの歴史に残る傑作と言っても過言ではない。
『ザ・ステアケース 偽りだらけの真実』

階段の下で血まみれの遺体となって発見された妻と、容疑者となったミステリー作家のマイケル・ピーターソン。全米を震撼させた実在の怪事件をドラマ化した本作は、海外ドラマファンなら絶対に外せない極上のサスペンスだ。
主演を務めるコリン・ファース(『英国王のスピーチ』)が底知れぬ疑惑を抱える夫を怪演し、妻役のトニ・コレット(『ヘレディタリー/継承』)とともに観客を深い疑心暗鬼へと引きずり込む。さらに見逃せないのが、取り巻く家族たちを演じる豪華すぎる若手キャスト陣だ。マイケルの息子役としてデイン・デハーンとパトリック・シュワルツェネッガー、養女役としてソフィー・ターナーとオリヴィア・デヨングが出演。複雑な家庭環境に揺れる若者たちの繊細かつ不穏な演技合戦が、物語の怪しさをより一層引き立てる。
真実は事故なのか、それとも殺意に満ちた事件なのか。視聴者自身が証言の渦に巻き込まれていくような没入感を味わえる。
『ラブ&デス』(全7話)

郊外の町で起きた不倫と衝撃的な斧殺人事件を描いた実話ドラマ。
1980年6月、アメリカのテキサス州で夫と二人の子どもと暮らす主婦キャンディス・モンゴメリが、友人家族の妻を斧で何度も切りつけ惨殺するという衝撃的な事件。何不自由ない生活と家庭に恵まれ、熱心に教会にも通う、“完璧な主婦”による凶悪殺人は当時話題となり、彼女が犯行にいたった経緯や、その後の裁判の行方などを多くのメディアが追い、注目された。
実話クライム好きにはたまらない構成となっており、エリザベス・オルセンが魅せる正気と狂気の狭間の演技が光る。何が真相で何が自己防衛なのか、観客に判断を委ねる巧みなストーリーテリングが秀逸だ。
『I MAY DESTROY YOU / アイ・メイ・ディストロイ・ユー』

性的同意や被害のトラウマという重厚で繊細なテーマに真っ向から挑み、世界中で絶賛された異色にして奇跡的なイギリス発の傑作ドラマ。新進気鋭のクリエイターであるミカエラ・コーエル(『ブラックパンサー』)が自ら主演・脚本・監督・製作総指揮を務め、自身の実体験をもとに物語を織り上げた。
物語は、若き作家アラベラが夜遊びの最中に薬物を盛られ、性的暴行を受けるところから始まる。事件の記憶が曖昧ななか、彼女は崩壊した自己を再構築し、自身の恐怖や怒り、そして現代社会の人間関係と向き合っていく。単なる重苦しい被害者遺族のドラマにとどまらず、ミカエラはシュールなユーモアや現代のロンドンにおける若者文化、SNS時代の友情や曖昧な性的同意の境界線を鋭く切り取ってみせる。被害者の姿をステレオタイプに描くのではなく、誰もが持ち合わせる複雑さや矛盾、身勝手さまでも残酷かつ愛おしく表現している点が画期的だ。
従来のテレビドラマの枠組みや提示される正解を軽々と打ち砕き、観る者自身の価値観や倫理観を深く揺さぶる一作であり、クオリティの高いオリジナルドラマを模索し続けるHBOの冒険心が結実した最高峰の作品と言えるだろう。
これらの最高峰ミニシリーズは、どれも短時間で映画数本分の満足感を得られる名作ばかりだ。U-NEXTでの配信が終了してしまう前に、ぜひこの機会にチェックしてほしい。
(海外ドラマNAVI編集部AKN)






