米HBOの大河ファンタジードラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン8第5話「鐘」は、シリーズの中でも特に物議を醸したエピソードだ。米Screen Rantが、この回を改善するために出来たかもしれないことを分析しているので紹介したい。
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デナーリスの内面の変化を描く時間が少なかった?
第5話は、デナーリス率いる軍勢がキングズ・ランディングを攻撃し、劣勢となったラニスター家の軍が鐘を鳴らして降伏を示すが、降伏後も彼女は炎の雨を降らせ、街全体を焼き尽くすという衝撃的な決断を下した。ヴァリスは反逆罪で処刑され、捕虜となったジェイミーの解放をティリオンが試みる展開となり、民間人の虐殺にジョンやティリオンは深く失望する。
このデナーリスの“悪役化”は、シリーズを通して築かれてきた彼女の人物像を一変させ、最大の論点となった。確かに、これまでのシーズンにも彼女が冷酷な手段を取る兆候は存在した。仲間や敵対者に対する非情な裁きや、支配のための力の行使など、その片鱗は幾度か描かれた。
しかし、シーズン8は全6話構成であり、そのうちの3話はナイトキングとの戦いに費やされているため、彼女の内面の変化や孤立、精神的な追い詰められ方を描く時間が圧倒的に不足していた。デナーリスの懸念すべき行動が顕著になるのは第4話からで、それまでは一貫して“正義の解放者”として描かれていたため、視聴者にとって彼女の急激な変貌は唐突に映ったのだ。
もし、もっと長い時間をかけて、デナーリスの心情を丁寧に描いていれば、彼女の選択にはより説得力と人間味が増していたはずだ。たとえば、仲間を失う悲しみや民衆からの支持を得られない孤独感、そして権力を守るために手段を選ばなくなっていく過程を数話にわたって積み重ねて描写すれば、最終的な“炎の決断”も支持されたのではないだろうか。
未完成の原作に期待
また、ティリオンやジョンが彼女のもとに留まり続ける理由や、ヴァリスが命を賭して彼女に反旗を翻した意味も、追加のエピソードがあれば深く掘り下げられたに違いない。原作者ジョージ・R・R・マーティンも、この物語の複雑さと登場人物の多さから「最低でも10シーズンは必要」と述べており、11〜12シーズンを提案したこともある。その構想が実現していれば、「鐘」はシリーズの中でも屈指の傑作エピソードとして評価されていたかもしれない。
将来的に出版される原作小説の残りの章では、この論争の的となった展開が、より自然で重厚に描かれることが期待される。マーティンの筆致なら、デナーリスの変貌も長期的な伏線と心理描写の積み重ねにより、視聴者・読者を納得感させることができるのではないだろうか。
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