『NCIS:ハワイ』スタジオの今は…?元キャストが目撃した悲しき光景と厳しい現実

CBSの人気ドラマシリーズ『NCIS:ハワイ』が、惜しまれながらも3シーズンで幕を閉じてから約1年が経過。しかし、その影響はハワイの映画・テレビ業界に暗い影を落とし続けている。

 

荒れ果てた撮影スタジオが物語る現実

『NCIS:ハワイ』でサイバーインテリジェンスのスペシャリストであるアーニー役を演じたジェイソン・アントゥーンが先日、同シリーズの撮影が行われていたホノルルにあるスタジオの現状をXで公開した。彼の投稿には「ハワイ・フィルム・スタジオ — 空っぽで雑草だらけ」との言葉が添えられていた。

かつては『LOST』(2004-2010)、『HAWAII FIVE-0』(2010-2020)、『私立探偵マグナム』(2018-2024)といった人気番組の撮影地でもあったこのスタジオが、今や閑散とし、雑草に覆われている姿は、ハワイの映像産業が直面する厳しい現実を如実に物語っている。

高額な制作費が招いた番組打ち切り

『NCIS:ハワイ』の打ち切りは、ハワイでの高額な制作費が大きな要因の一つであったとされている。スポーツ番組を除けば視聴率で第12位、平均リニア視聴者数780万人、マルチプラットフォーム(Live+35)では1,000万人という高い数字を記録していたにもかかわらず、コスト面がCBSの決断を左右したのだ。

ジェイソンは昨年4月にドラマの打ち切りが発表された際、Instagramで「この業界は過酷で、まったく理不尽だ。でも本当に楽しかった。みんな大好き、そしてマハロ(ありがとう)」と複雑な胸の内を明かしていた。

ハワイ離れが進むハリウッド作品

ジェイソンの投稿は、先月Foxの新ドラマ『Rescue HI-Surf(原題)』がわずか1シーズンで打ち切られたことをきっかけに行われた。同番組の打ち切りの理由も「ロケ地や予算ではなかった」と語っているが、ハワイでの撮影費用は同局のドラマの中でも特に高額で、1話あたり約400万ドル(約6億2,400万円)に達していた。

さらに、『9-1-1:LA救命最前線』の新スピンオフもハワイが有力候補であるという報道があったものの、代わりにテネシー州ナッシュビルで進められている。主演はクリス・オドネル(『NCIS:LA ~極秘潜入捜査班』)で、今秋ABCで放送開始予定だ。

ハワイ州知事も懸念する税額控除の廃止

このような状況の中、ハワイ州のジョシュ・グリーン知事は、5年後の税額控除を終了させる法案HB796に対し拒否権を行使する意向を表明した。

知事は拒否権行使の理由について、「この法案は、映画・テレビ、研究、再生可能エネルギーなど、さまざまな業界における所得税控除に長期的かつ大きな影響を与えることになります。これらの税控除は、特に成長分野や新興分野における経済発展と多様化を支える上で不可欠です。一律に所得税控除を終了させることは、将来の投資家がハワイでビジネスを行う意欲を削ぐだけでなく、現在これらの税控除に依存している既存の企業の安定性も損なうことになります」と述べ、ハワイの経済全体への悪影響を強く懸念している。

かつてハリウッド作品の主要な撮影地として栄えたハワイ。しかし、高騰する制作費と税制の変化が、その魅力的なロケーションからハリウッドを遠ざけつつあるのが現状だ。人気番組の打ち切りや撮影スタジオの荒廃は、ハワイの映像産業が直面する大きな課題を浮き彫りにしている。

『NCIS:ハワイ』はPrime VideoHuluU-NEXTで配信中。(海外ドラマNAVI)

参考元:Deadline

Photo:『NCIS:ハワイ』シーズン2 ©2023 CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.