『ゲーム・オブ・スローンズ』撮影中の大ケガ、約14億円の和解金で決着

人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の撮影中に重傷を負い、キャリアを絶たれた英スタントウーマン、ケイシー・マイケルズが、製作元HBOから約940万ドル(約14億円)の和解金を受け取っていたことが明らかになった。

彼女はこの経験を公に語ることで、「スタント業界が抱える構造的な問題を明るみに出したい」と訴えている。

 

若きスタントウーマンの悲劇

マイケルズは5歳でスキーや乗馬を始め、14歳でスタントの道へ。将来は業界トップ0.5%に入ると期待されていた。しかし2018年、27歳のとき『ゲーム・オブ・スローンズ』最終シーズンの撮影中に左足首を粉砕骨折。再起不能となり、夢を絶たれた。

事故の原因は、安全面の配慮に欠けた設計にあったと彼女は主張。撮影現場のスタントコーディネーター、ローリー・アーラムが設計した落下スタント中に負傷したのだ。彼女は2021年にワーナー・ブラザース傘下の制作会社を相手取り約530万ドルを求めて提訴し、2023年にHBOは謝罪と共に約930万ドルを支払った。

安全性の軽視と責任の所在

事故当夜、マイケルズはシーズン8・第3話「長き夜」の戦闘シーンで、27人のスタントチームの一員として高さ約3.6メートルから落下するシーンに臨んだ。1回目は無事に終えたが、2回目の撮影では「ゾンビ役として落下時に下を見るな」という指示が出され、着地点が確認できず大怪我を負った。

さらに、1回目と2回目の間に使用されたクッション材(クラッシュマット)が厚手から薄手に変更された疑いがあるという。この変更は出演者に伝えられず、着地の衝撃が大幅に増した可能性がある。

【事故のシーン】

マイケルズは「事故は防げた」とし、9人のベテランスタント専門家も落下マットの設計ミスを指摘。HBO側が事故の責任を認めた一方で、設計者アーラムは一貫して個人的な過失を否定し続けている。

Deadlineは、マイケルズが負傷する以前にも『ゲーム・オブ・スローンズ』ではアーラムの指揮下で少なくとも2件の事故があったことを把握しているという。

アーラムは、HBOのフランチャイズに関わり続け、現在イギリスで撮影中の前日譚シリーズ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン3のスタントを監督している。

いまなお続く痛みと訴え

マイケルズは5回の手術を受け、現在も強い痛みに悩まされている。事故による心的外傷後ストレス障害(PTSD)とも闘いながら、同様の被害者がこれ以上増えないことを願い、「沈黙しない選択」をしたと語る。

(海外ドラマNAVI)

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