
“ミステリーの女王”ことアガサ・クリスティーの小説をもとにした人気の英国ミステリー『名探偵ポワロ』のシリーズフィナーレ、「カーテン~ポワロ最後の事件~」が、BS11にて3月31日(月)18:00から放送される(※日本語字幕版/2話連続放送)。出版当時に大きな反響を呼んだ小説の貴重な映像化についてご紹介しよう。
ポワロとヘイスティングスがもう一度、事件に挑む
母国ベルギーで警察官として、戦争を機に亡命したイギリスでは私立探偵として長らく活躍してきたポワロ。すっかり年老いた彼はある日、思い出の屋敷にかつての相棒ヘイスティングスを呼び寄せる。昔ポワロとヘイスティングスが殺人事件を解決したその屋敷は今ではホテルへと姿を変え、地元の名士キャリントン卿、その知り合いであるフランクリン博士夫婦、博士の助手を務めるヘイスティングスの娘ジュディスなどが滞在していた。
体調を崩して車椅子に乗り「まるで赤ん坊のように身体が動かないが、頭脳は昔のまま」と語るポワロは、もうすぐこのホテルで殺人が起きると予言。それを未然に防ぐため、ヘイスティングスに自分の目となり耳となってほしいと告げる。ポワロの言葉に半信半疑のヘイスティングスだが、屋敷内に不吉な雰囲気が漂っていることを次第に感じ取り…。
クリスティーファンならご存知だろうが、この原作小説は1975年に本国イギリスで出版されたものの、もともとは第二次世界大戦中の1940代前半に執筆され、作者の死後にお披露目されるべく30年ほど金庫に保管されていた(ミス・マープルの最後の事件「スリーピング・マーダー」も同様)。なお、小説が出版された4ヵ月後の1976年1月にクリスティーはこの世を去ったため、本作は当初の想定と違って「死後」でこそなかったが「生前最後に」世に出た作品となった。
執筆された1940年代といえば、クリスティーが代表作「そして誰もいなくなった」(1939年出版)を発表した直後。ポワロものとしては「杉の柩」「愛国殺人」(ともに同1940年)、「白昼の悪魔」(同1941年)、「五匹の子豚」(同1942年)、ミス・マープルものとしては「書斎の死体」「動く指」(ともに同1942年)をこの頃に発表しており、脂が乗った時期と言える。
今回ポワロたちが相対するのは、新しいタイプの殺人犯。イギリスが誇る古典に登場する悪役との共通点はあるとはいえ、今から80年ほど前の1940年代前半当時にこんな犯人像を思いついていたのだと考えると、クリスティーの才能に改めて畏敬の念を抱かずにはいられない。
そんなデビュー作の頃から読者の意表を突く展開を描き続け、当時の推理小説ではNGとされていたことを次々と実行し、時には「アンフェア」と批判されながらも実際にはさりげなくヒントをちゃんと提供してきたクリスティーが最後に贈るポワロの物語。司法に則って生きてきたものの、前シーズンの「オリエント急行の殺人」をきっかけに大きくそれまでの価値観を揺さぶられることになったポワロが、さらに「ビッグ・フォー」「ヘラクレスの難業」といった難事件を経て、一体どんな終わりを迎えるのか、あなたは端々に盛り込まれたヒントに気づいて真相に辿り着くことができるだろうか? ポワロを四半世紀演じ続けてきたデヴィッド・スーシェの鬼気迫る演技とともに、フィナーレを見届けてほしい。
『名探偵ポワロ』はBS11にて毎週月曜日18:00より放送中。最終回「カーテン~ポワロ最後の事件~」は3月31日(月)18:00から放送される(※2話連続放送)。
(海外ドラマNAVI)
Photo:『名探偵ポワロ』シーズン13 ©Company A Chorion