『DOC-わたしを思い出す日まで-』インタビュー【4】「この作品で描きたかったのは人生のやり直し」

日本でも人気を博したイタリア発のメディカルドラマ『DOC(ドック)あすへのカルテ』のアメリカ版リメイク『DOC-わたしを思い出す日まで-』が、WOWOWで2月20日(木)23:00より日本初放送・配信開始!

2025年1月から全米で放送中の同作の主人公は、交通事故に遭って直近8年間の記憶を失ってしまった内科医エイミー。その間に夫と離婚し、最愛の息子を亡くしたことも忘れていた彼女の再生を、スリリングな医療場面とともに描く。オリジナル版では男性だった主人公を女性にし、より繊細にドラマティックにアレンジ。主人公が働く病院も大きくなり、米国流エンターテインメントらしい味付けがたっぷりだ。

同作の日本初放送・配信を記念し、キャスト&スタッフ合計9人の貴重なインタビューが公開となったので、4回に分けて紹介していこう。ラストとなる4回目に登場するのは、ともに製作総指揮を務めるバービー・クリグマン(『プライベート・プラクティス』『私立探偵マグナム』)×ハンク・スタインバーグ(『WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え!』『ザ・ラストシップ』)。

アイデンティティを探求する、誰もが共感できる物語

DOC-わたしを思い出す日まで-

――作品の見どころを教えてください。

クリグマン:この作品の見どころは、たとえ後悔がなかったとしても、誰でもやり直ししたいことがあること。例えば私でいうと、36年間タバコを吸っているのですが、多分最初から吸うべきではなかった、といった風に、やり直したいことには小さいこともあれば大きなこともあるわけですが、この作品で描きたかったのは人生のやり直しが大きな部分です。その大きなテーマ以外には、毎週医療ドラマが展開されます。それを、これまでにない新しい方法で見せています。それから、医療的な謎解きや、対処法に関する倫理的理論も展開します。番組を見た後に、皆さん自身がその倫理的理論を展開することもあるでしょう。そういう状況になったら自分ならどうするだろう、と。もちろんエイミーが人生を再構築する部分も見どころです。それから、家族ドラマもありますし、登場人物の人間関係はいつでも楽しめる部分です。掘り下げるのも楽しいし、見ているだけでも楽しめます。ただ、一番の見どころはやはり毎回、心を揺さぶられるような物語があることです。見ている人たちは自分の人生を投影するようなこともあるでしょう。その時、自分だったらどうするだろうかとか、彼らは何を失敗したんだろうと考えると思います。

スタインバーグ:それからアイデンティティ探求の物語でもあります。自分の中に一体何人分の人間性が存在するのかと。何かが起きた時には自分の人となりが明らかになりますし、自分の人となりのせいで何かが起きたりもします。人生で何かが降りかかってきた時、自分の人となりが定義されたりするものです。彼女(エイミー)は自分のしたことを覚えていなくて、トラウマを再び生きることになるわけです。1回目の彼女は、それに失敗しています。なので、最初は失敗したと分かった後、今回はどう克服するのか? 今回は変わることができるのか? または前回と同じで、結局はそれが彼女の本質なのか? つまり自分は誰なのか? …とアイデンティティを考えさせられる、誰もが共感できる物語なのです。

クリグマン:今ハンクが言っているのを聞いて思ったのですが、もし彼女が覚えてなくても、それは彼女の一部なのか? そうではないのか? 記憶を失ったことで、彼女の真のアイデンティティが明らかになると思います。

DOC-わたしを思い出す日まで-

――医者というのは命を救う職業でありながらも、エイミーは仕事に没頭していて、自分の真の人生がないような役でもあるので、本当の意味で生きることの意味も考えさせられますよね。

クリグマン:第2話でも描かれていますが、正しい行いをしたいというだけではなくて、“正しい”行いをするためにはバランスも大事になります。それに、正しい行動ができたとしても息子の命が救えるわけではないのです。でも、まだエイミーには娘が残されているわけで、彼女自身の人生だって長いわけですから、これからまだ楽しめるわけです。とにかく彼女は同じ間違いを犯したくないと思っています。でもそれは簡単ではありません。自分の過去の過ちを正確には覚えていないわけですから。

DOC-わたしを思い出す日まで-

――キャストにインタビューした際、何人かは第7話が見どころと話していました。この作品にかける思いを教えてください。

クリグマン:どの回でも物語の前進と、新しい人間関係の紹介を目標にしています。なので、毎回違う役柄の組み合わせで、その関係性を紹介しようとしています。第5話には病気の男の子と家族の美しい物語があります。ネタバレをしないように話すのは難しいですね。でも、そこでエイミーが取る行動がとても興味深いです。また、復帰後初めて一緒に仕事して、エイミーがソニアをどう扱うのかも見られます。そのシーンは素晴らしいです。それから第7話は、ソニアとリチャードにとってはすごく意味のある回で、たくさんのことが起きて、人間関係が大きく変わります。とりわけ、エイミーとソニアの…

スタインバーグ:二人が衝突して人間関係が大きく変わります。

クリグマン:なので面白いのは、全体の流れとしては初めは向かうべき方向に進み、中程で一旦安定し、だけど第7話あたりから終わりに向かってまた急速に展開します。すべての回に大好きな部分がありますが、第7話まで来たら瞬きしている間に終わってしまいます。最終回(第10話)まで続く最後の4話では、あまりにもたくさんのことが起きます。

DOC-わたしを思い出す日まで-

――全体としても感動的な番組と言えますよね?

クリグマン:この番組では、エイミーに何が起きたのかと、彼女が人生を取り戻す旅路が描かれています。それが一体どういう体験なのかを見られるわけです。また、その中で様々なことが描かれています。(エイミーが記憶を失った)その8年間に何が起きたのかを知り、彼女は人生を取り戻していくのと同時に、前進するために過去に犯した間違いを修正しなくてはいけません。つまり物語の中心には常に彼女の旅路があり、その周りでもたくさんの物語が起きるのです。

スタインバーグ:私がこの番組の構造で好きなのは、物語の中心に大きなジレンマを抱えた主人公がいること。彼女は8年間の記憶がなくて、その間に子どもを失い、結婚生活も終わっています。彼女は自分が誰なのかを見失っています。でも彼女の周りの役にも、それぞれ複雑で深いエイミーとの関係性があります。なので、それぞれが自分を定義するにあたり、エイミーの記憶喪失に大きな影響を受けるわけです。それが番組の見どころで、一つの役にだけ有効な仕掛けがあるわけではなく、自然な形で彼女の周りの人たち、一緒に仕事している人たち、競い合っている人たちにも大きな影響を与えます。おかげで全出演者に光る機会があります。もし主人公一人にだけ集中して、そのほかの役をしっかりと描けていなかったら、すべてが崩壊すると思います。主人公も、それを支える周りの役もしっかりと描けていてこそ、初めて面白い作品になります。関係性が面白ければ、それが主人公にも投影されるのですから。アンサンブルでドラマをやる、それが醍醐味です。回によっては、主人公を少し軽めに描き、違う役に焦点を当てる、例えば、スコット・ウルフの役(リチャード)やオマー・メトワリーの役(マイケル)に重きを置いたりできます。また、第7話はソニアが中心になります。長く続くドラマシリーズをやる場合、それぞれの回で違う役について深く描けるのが楽しい点です。何話でも続けられると思えますね。

DOC-わたしを思い出す日まで-

――撮影現場の雰囲気はいかがですか? チームワークはいいですか?

スタインバーグ:バービーがお母さんクマで、私がお父さんクマです(笑) (エイミー役の)モリー・パーカーが素晴らしいし、ものすごくプロです。それから私たちはスコットとはすでに一緒に仕事をしているので、彼がいかにドラマ界のベテランで、プロで、素晴らしい俳優かが分かっています。スコットは存在感が素晴らしくて、彼が現場にいるだけで共演者やスタッフがスコットの仕事ぶりを見て、セットの雰囲気ができます。彼は30年間もこの仕事をしてきて、こんな風に対応するのか、というのをみんなが見るわけです。モリーも同様です。それにオマーも素晴らしいし、私たちはすごく恵まれています。みんなプロ意識が高いし、人間的にも素晴らしいのです。

クリグマン:それからトロントの中でも最高のスタッフに恵まれました。仕事をする時、理想を言えば自宅から通いたいものです。でも、ロサンゼルスでこの番組の撮影はできなかったので、代わりにカナダで撮影すると言われ、6時間も飛行機に乗らなくてはならなくなりました。でも、今では彼ら以外とは仕事ができないと思うくらいです。心から大好きになったのです。彼らのプロ意識、才能や誇りに。我々が満足しているのかももちろん気にしてくれましたし、最高でした。

スタインバーグ:礼儀正しいですし、ミスがあればちゃんと謝ってくれる人たちでした。

DOC-わたしを思い出す日まで-

――もしもご自身が演じるならどの役がいいですか?

スタインバーグ:私はジェイクを演じたいですね。でも、ジョン・エッカーみたいな腹筋はありませんから、そこが問題です(笑)

クリグマン:私は本当に演技の才能がないので、エイミーを演じたいけど絶対にできません。彼女の役を書けますが、演じられないのです。深みがあり、様々なことが探究できる役なので、彼女を演じられたら最高ですね。

(通訳/翻訳:中村明美)

DOC-わたしを思い出す日まで-

『DOC-わたしを思い出す日まで-』(全10話)は、WOWOWにて2月20日(木)スタート(第1話無料放送)。

【二ヵ国語版】毎週木曜日 23:00~
【字幕版】毎週月曜日 23:00~
※字幕版第1話のみ23:10より放送

★放送情報:https://www.wowow.co.jp/detail/203390
★配信情報:https://wod.wowow.co.jp/program/203390

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Photo:『DOC-わたしを思い出す日まで-』© Sony Pictures Entertainment. All Rights Reserved.