パジャマで登校するって本当?海外ドラマで学ぶアメリカ学校事情

アメリカの小中学校、高校といえば、どのようなイメージがあるだろうか。自由な服装、カフェテリアでの食事、楽しそうなイベント三昧に、先生との距離も近い雰囲気。そんなアメリカのスクールドラマの中で、「これって何?」「本当にそんなことが?」と思った人もいるだろう。今回は、アメリカの学校で繰り広げられる文化や用語を、現実と照らし合わせながらドラマと共に解説していこう。

 

学校でカップケーキ!朝ごはんも食べられる?

ランチは、小中高と通じて自宅からお弁当を持ってくるか、カフェテリア提供のランチ購入が一般的だ。カフェテリアでは、毎日何種類かのメインディッシュがあり、アレルギーや宗教事情も考えられたメニューの中から、生徒が食べたいものを購入する。

またアメリカの学校の場合、朝食もカフェテリアで用意されている。朝食のメインメニューは、マフィンやシリアル、トーストのような簡単なものだが主流。だが、(小学校なら)7時台から学校がオープンし、子どもがそこで食べられるシステムは、早朝勤務の保護者にとっては、助かるかもしれない。州や地域によっては、ランチが無料の学校もある。

さらに、クッキーやアイスなどお菓子が売っているのも特徴だ。また、『アボット エレメンタリー』シーズン1第9話「ザ・プリンシパルズ・オフィス」の冒頭で、バーバラ先生が生徒の一人、ライアンの誕生日を教室でお祝いするシーンがある。カップケーキにろうそくを乗せて、皆でハッピー・バースデイの歌を歌うが、実はこのカップケーキでのお祝いはアメリカの学校ではよくあるイベントだ。

これは学校が準備するわけではなく、誕生日の子どもの保護者が人数分のカップケーキを用意して、先生に託しお祝いをしてもらう。事前にクラスにアレルギーの子がいないかなど、調べておく必要もあるが、デイケア・小学校・中学校くらいまででは普通に行われている。もちろん、全くやらない人も多いので、義務というわけではない。最近では、カップケーキではなくクッキーや、全員分のランチとしてピザを持ってくるという保護者もおり、その様式は変化してきている。

服装は、本当に自由?イヤーブックってなに?


『glee/グリー』シーズン1の第12話で、グリークラブの写真はイヤーブックの掲載スペースが少ないだけでなく、メンバーの顔に落書きをされてしまう。このイヤーブックは、文字通り、“その年の本”なので、卒業生だけでなく在校生も全員写真が掲載される。なので、厳密には卒業アルバムではない。小学校から高校まで、毎年のイヤーブックを購入すると、合計12年分のアルバムが貯まることになる。

また、『ヤング・シェルドン』シーズン2第14話「ダビデとゴリアテ」では、シェルドンの双子の妹、ミッシーが、ピクチャーデイで勝手に厚化粧をして学校に行くエピソードがある。このピクチャーデイこそが、イヤーブックの個人写真撮影の日なのだ。この日は学校側からも、「写真撮る日です」とお知らせがあり、いつもより少しおしゃれをした子どもたちが登校する。

小学生くらいだと、可愛いドレスを着た女の子や、シェルドンのように蝶ネクタイをする男の子もいたりする。『ヤング・シェルドン』は1980年代を舞台にしているので、今は子どものメイク事情も変わっているだろうが、さすがに小学生であのミッシーのお化けのような顔にする子はいないだろう。

服装に関しては、自由なアメリカでもドレスコードと言われる校則もある。タバコやアルコール、ドラッグを連想させるような絵や文言が入っている洋服は禁止。また、凶器になり得るようなアクセサリーや、水着、肌を露出しすぎるようなものもダメな場合が多い。地域や学区、また私立か公立かにもよるが、髪の色を変えることなどにも制限をしている学校もある。

『ヤング・シェルドン』シーズン1第1話「9歳の高校生」で、シェルドンが初めて高校に登校するシーンでは、周りの高校生たちの洋服がドレスコードを守っていないことを母メアリーに指摘するシーンがある。同作の時代とは違うが、シェルドンの舞台と同じテキサスに住む筆者の学区の学校では、おへそ周りのお腹が出るクロップド丈トップスはNG。だが、実際にはそのような格好で学校に行く女子も多い。しかしその対策として、学校側は大きめのTシャツやトレーナーを用意しており、指摘された生徒は一日中それを着せられるハメになるそうだ。とは言っても、実際には学校側もかなり緩いので、よほど短いビキニのようなトップスでない限りは、お咎めはなさそうだ。

子どもも大人も悩ましい!長い夏休み

最近では日本でもサマースクールやサマーキャンプという言葉をよく耳にするだろう。アメリカの多くの学校は、3カ月近くと夏休みが長いため、子どもたちはこの期間に色々な勉強やアクティビティをすることが多い。その年度が終了後に夏休みに入るため、日本と違って宿題も一切ないからだ。

『ギルモア・ガールズ』シーズン2第2話「ハーバード危うし!」で、ローリー・ギルモアがクラスメイトとサマースクールについて話す。そしてハーバードに行くためには、良い成績だけでは十分でなく、チャリティーやボランティアなど課外活動で活躍していることが重要視されることを、ライバルのパリスから教えられ焦ってしまう。

このサマースクール(サマーキャンプ、サマープログラム、デイキャンプなど色々な言い方がある)は、文字どおり夏休みの間の学校なのだが、その種類は非常に多岐にわたる。高校などの単位が取れるようなアカデミックなものから、サッカー、乗馬、スイミング、テニスなどスポーツ系のもの、美術にピアノやダンスというアート系のもの、そしてボランティア活動を含んだものなど様々。自宅から毎日通える近くのものもあれば、他州や他国に行き、お泊り形式のものもある。もちろん、遠くに行けば、宿泊代や食費などもかかるので、費用としては高額なものになる。

だが、この長い夏休みを何もせずに過ごすと、秋の新学期になった時に他の子どもたちと差が出てしまうと懸念する保護者も多い。高校生であれば、大学の願書をよく見せるため、この期間にまとめて単位を取ったり、ボランティア活動をしたり、社会経験のためにアルバイトに勤しんだりする。

この長期の夏休みを子どもがいかにして過ごすかは、保護者たちの毎年の課題でもある。特に小学生以下の小さな子どもを持つ共働きの親の場合、ずっと保護者なしで子どもを家に置いておくわけにはいかないからだ。ちなみにアメリカでの高額サマースクールは、お泊まりのもので2週間5000ドル以上。夏休みが仮に2カ月だとしても、8週間通えば…。アメリカの親が頑張って仕事をする理由の1つは、子どもの夏休みにあるとも言われている。

備品が足りない場合は寄付で賄う

特に公立の小学校で多いこのシステム。教室で必要な物が足りない場合、保護者や地域の人に向けて寄付を募って賄うことが多い。『アボット エレメンタリー』シーズン1の第3話「お願いリスト」で、備品がないためウィッシュリスト(お願いリスト)を作り、それをSNSのビデオで配信して他人から寄付を得ようとする教師たちの姿が描かれている。

教師ごとに必要なものは異なるが、セロテープやティッシュ、はさみなど、誰もが寄付できるようなものをリクエストすることが多い。また、新学期はそれぞれの家で子どもの筆記用具などを揃えなくとも、学区指定の“スクールサプライ”というものをネットオーダーすれば、一年間で必要な文房具一式を学校に届けてくれるサービスもある。もちろん、個別に必要なものを購入しても良いのだが、何かと合理的なアメリカ。忙しい保護者には助かるシステムでもある。

先生の格好が一番すごい!?面白いイベント多数

ドラマではプロムやダンスパーティというようなイベントがよく描かれるが、アメリカで一番イベントが多いのは、実は小学校かもしれない。『アボット エレメンタリー』シーズン2第6話では、小学校でのハロウィンパーティの様子が描かれる。子どもたちは朝からコスチュームで登校。校長先生を初め、教員たちも全員仮装している。

これもアメリカでは本当にあることで、先生も気合いを入れて仮装する。開催に関しては、本作のように朝からハロウィンパーティを行う学校もあれば、放課後夕方以降に仮装した生徒を呼び、各教室でのイベントやパレード、トリック・オア・トリートを夜まで楽しませるという小学校もある。もちろん、イベント自体をしていないところもあるだろう。

また、運動会や学芸会のような通常のイベントとは別に、その他にもパジャマで学校に行く「パジャマデイ」、派手な髪型で登校する「クレイジーヘアデイ」、その靴下版の「クレイジーソックスデイ」、「クレイジーハットデイ」、新学期から100日目を100歳のお年寄りの仮装で祝う日や、1950、60年代の格好で行く日などなど様々なイベントデイがある。『サウスパーク』シーズン25第1話「Pajama day(原題)」では、担任の先生に敬意を払わなかった4年生のクラスに対して、校長先生が罰として「パジャマデー」に通常の服装で登校するように命じ、生徒たちが抗議をしにいくシーンが描かれている。

もちろん強制ではないので、やりたい子だけがやるし、やらなくて何か言われたり変なふうに見られることもない。高学年になると、だんだん冷めてきてやらない子も増えていく。だが一番驚くのは、先生のイベントに対する熱意だ。ヘビメタバンドも真っ青の、カチカチのトサカ髪の先生や、面白い柄のパジャマを着てくる先生などイベントのたびに全力を尽くしているような人も。そんな賑やかな日々が毎年のイヤーブックに掲載され、楽しい思い出の1ページを彩っていく。

いかがだっただろうか。アメリカの学園ドラマ・コメディは、現実をそのまま反映しているものがほとんど。「大袈裟じゃなく、本当にこうなんだな」と理解しながら見ると、また違った見方で楽しめるかもしれない。

(文/Erina Austen)

 

Photo:『ヤング・シェルドン』© Warner Bros. Entertainment Inc.